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幕間:神の失態


「…………あー、マジ俺戦闘センスねえわ」


リューイ、ぐったりである。

もう消えてなくなりたい。

いや、それは言いすぎた。


とにかく失態であった。


邪神本体が御影の元まで到達されてしまった。

最悪である。


正直、盤面としてはもう詰みで邪神側にひっくり返す手段などないはずだった。

――この手段をのぞいて。


邪神と御影は強固な縁でつながっている。

名前の認識もそうだし、なにより――邪神は御影に殺されたいし、御影は邪神に殺されたい。

この絆があまりにも強固だ。それは御影が邪神を認識してしまえば「崩壊の転写」が起こってしまうほど。


つまり邪神は御影を認識しただけで崩壊してしまうが、御影だって邪神を認識してしまえば崩壊してしまう。

一つの救いは御影の認識能力は別段高くないことだが、ここまで接近されてはもう意味がない。

もう一つの救いは御影が抵抗さえすれば「崩壊の転写」ぐらいでは人は死なないことだが、現状を見るに抵抗することなど頭をよぎりもしていないだろう。


いや、ほんとなんなんだあいつ……。


「御影にひっかきまわされてるじゃん?」

「ですよ。ただ、弱いというだけでここまで計算が狂わされるかって感じ」

「ううむ……。ここまでくるとそれだけではない気もしてくるが」

「いや、あれは弱いだけだ。間違いない」

「……まあ、弱いということは何もできないということを意味しないってだけだよねえ」


ぐったりしながらリューイは嘆息した。

弱いがゆえの視点、弱いが故の思考。時にそれは突破口となりうる。

ましてや周りが強者だけならば。

ナンバーワンよりオンリーワン。聞きなれたそのフレーズはここではより強い意味を持つ。


「……そもそもあの青年は何をそんなに絶望しておるんじゃ?」

「あー、住む家が見つからなかったみたいだね」

「「「は?」」」


うん、まあ、何人の勇者に聞いてもそう答えるだろう。

……いや、ルーイックだけは違うのかもしれないが。

底辺を知るあの勇者だけは――違うのかもしれないが。


それでも。

衣食住とは言うけれども。

住む家が見つからなかったから、で邪神を巻き込んで死のうとは普通思わない。

……まあ、勇者と名の付くものなら家ぐらい自力で作れるものが大半なんだけど。


「回復なり洗脳なり、何か干渉すべきではなかろうか?」

「副作用が予測できない。両者が繋がっている以上どういうふうに作用するか全く読めない。イヨル君でもわからないんだよねえ……」

「…………つーか、例え御影が死んじまって邪神が弱体の呪いから解き放たれたところで受けたダメージがそのまま残る可能性が高い以上、ここでただ見てるだけが一番いいってことじゃん?」


カルルットがらしくもない皮肉気な笑い方をした。

しかし、実際その通りだった。

悪趣味でも何でもリューイは最も邪神が討伐されやすい道を選ぶしかない。


とにかく、ダメージが入っているのは間違いないのだ。

加えて、このまま邪神が滅ぶ可能性だって低くはない。

ならば、黙ってみている方が良いに決まっている。


決まって――いるのだが。


「悪趣味、だよねえ……」

「まったく」


悪趣味な、悪趣味なロシアンルーレットは続いていく。

止められるものは――きっといないのだった。

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