予想はしていたと彼は思った
「……よう」
まあ、予想はしていた。
対策していた分体と不意打ちだった本体。
交じり合った中で生き残るのはどっちかと言われたら――ゴンの方だろう。
そして、本体となったゴンには結界は効かない。
だからこうして――近くにあれる。
「しかし、ここに来るとは思わなかったぞ」
流石に立ち上がりながら御影は言う。視線はゴンから逸らさない。
腕とか脚とか組まなきゃよかったと密かに思う。
「ここが一番安全なんだよ。いかなる力を持つ勇者だろうが、リューイがどんな力を与えようが――お前が死なないようにしないといけないのには違いがないからな」
「……なるほど」
邪神がここまで弱体化したこの状況。その要石は間違いなく御影だ。
御影が死んでしまえばその状況はするりとほどけて、邪神は力を取り戻す。その可能性は高い。
勇者がどれだけ強かろうが、リューイがどれだけの祝福を与えようが。
御影が死なないように配慮しなければならないのだけは変わらない。
無論。
御影とてリューイとの契約で大きく力を上げている。
具体的にいうと――ゴンの殺し方がわかる。
どうすれば――殺せると確信出来るし、それができると――分かる。
いや、そんなチートいらねえって。
思わず苦笑してしまう。
「さて、殺しあおうぜ」
「そうだな」
そして――御影はゴンが伸ばした手をつかんだ。
パチン!
――お互いの右頬が裂けた。
「……座るか」
「おう」
シェイクハンドの格好のまま両者その場に胡坐をかく。
……分かっていたことだ。
死にたいやつと死にたいやつが出会えば死ぬしかない。
そこにリューイ契約が重なれば――御影は触れるだけでゴンを消し飛ばす力を持つ。
けれどどこまで行ってもゴンは御影の写し鏡だ。
御影がゴンを消し飛ばせるなら――ゴンは御影を消し飛ばせるのだ。
そして、なにより。
御影はゴンに殺されたいし。
ゴンは御影に殺されたい。
それらの当然の帰結として――こうなる。
増え続けるこの傷跡が先にその存在をえぐり取った方の負け。
パチン!
ゴンの右肩が裂けた。
御影の右わきが裂けた。
「……お前そんな顔してたんだな」
「ひっでえなあ」
くつくつと笑うゴンを見て御影も笑う。
まあ、もう、なんというか。
死のうが生きようがもう一緒だ。
それだけの事だった。




