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………………いや、どういうことだよ!?と彼は思った

唐突に笑った御影を不審そうにみんなが見ていたがそれも一瞬の事。

すぐに視線はリューイに戻される。


「門上御影を模倣する。言うのは容易いがやるのは簡単じゃない。何しろ――弱いから」


弱者が強者を真似る方が強者が弱者を真似るより簡単だからね。

リューイはそういってため息をつく。


「ましてや、邪神の分体クラスの存在が門上御影になりきろうというのは――ほぼ自殺行為だ」

「そこまでしたということは――つまり狙いは豊葦原世界か」

「そうだね。門上御影単体にはそこまでの魅力はないけど――豊葦原世界はごちそう中のごちそうだ」


門上御影は邪神の分体と縁で結ばれている。この状態で御影が邪神に寝返ればそれを足掛かりにして豊葦原に侵攻が可能になる。

で、あるならば。

そこまでのリスクをとる意味はあるということか。


「とにかく、邪神の分体は門上御影の模倣に成功した。しかし――そこで誤算があったんだ」

「誤算……ああ、なるほど」

「んー? ルーイック君わかるの?」

「もちろん。御影殿の希死念慮でしょう?」

「……正解」


死んだ方が幸せだ。その思いは20年しか生きてない御影の人生の大部分を支配する感情だ。

死にたくなくなってしまう、そのことに――恐怖すら覚えるほどの門上御影の根幹。


門上御影を模倣するなら――真似ざるを得ない一点であり、死の概念のない邪神の分体にとっては最難関だ。


「ただ、分体はそれに成功した。存在を維持したまま門上御影を模倣しきった。――が、当然の事なんだけど」

「なんだ?」

「死にたいやつと死にたいやつが仲良くなったらまあ……死ぬんだよね」

「「「はあ!?」」」

「まあ……そうでしょうなあ」


しみじみとルーイック・トゥータは思い出す。

レーバイエ・ガーターと呼ばれていた日々の事を。

死にたいやつと死にたいやつが出会ったというただそれだけで死んでいった仲間たちを。

一人では死ねないけど――二人でなら死ねてしまう。

そのギリギリのがけっぷちで持ち堪えてるだけのやつらが意外と多い。レーバイエ・ガーターはそれを何人も見てきた。

……ちなみにレーバイエはガチで友達のいない男だったので、出会うことなく生き延びた。

友達が多いのが良いとは言い切れない好例である。


「お前ら、頭おかしいだろ……」


呆然とつぶやいたジャイニーブの言葉がほとんどの勇者の代弁だった。

死の安楽に惑わされない克己心など勇者と呼ばれるうえでは常識にすぎない。



「まあ、ジャイニーブ君の反応は当然だけど……とにかく、分体はそこで計画を離反計画ではなく心中計画に切り替えた」

「それは……うまみはだいぶ無くなるな」

「確かに豊葦原世界への侵攻は難しくなるね。でもエルードにとってはそこそこ痛手だし、分体はそれでもいいだろうと考えた」

「しかし、本体はそれでは不十分と考えたわけじゃな? それで分体は殺されたと」

「そうだね」


流石に御影は嘆息した。

要は御影が死にたいとさえ思わなければゴンは死ななかったという話。

流石に、それは。何かを思わざるを得ない。


「そして状況を整理するならこういうことだ」


リューイは指を一本立てた。


「一つ、分体は門上御影をコピーした」


二本目を立てる。


「二つ、本体はそれを知らなかった」


三本目。


「三つ、本体は分体を処分した」


すっと、立てた指を下してリューイは言う。さながら名探偵のように。


「つまりは、そういうことだ」


………………いや、どういうことだよ!?

そう思ったのは御影だけだったという。

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