もう風前の灯火だと彼は思った
そこ、薫製が嫌いなだけとか言ってはいけない。
「……」
「……」
ジャイニーブさんは無言で切ってない方の薫製をゴンに投げ、キャッチしたゴンはシュタッと距離をとった。
ハイエナと言うより野良猫みたいである。
再びするすると元に戻る御影
「……じゃ、俺もういくわ」
「お気をつけて」
若干げんなりしたようなジャイニーブさんを見送って――ゴンと御影は再び対峙する。
その手には薫製。どちらともなく手を合わせて――宣言。
「「いただきます!!」」
* * *
「「ウマー!!」」
門上御影及びゴン絶叫である。
今まで御影が薫製だと思っていたものは何だったのだろうか……。
パサパサしてないし煙くないしジューシーで美味い。
まさに革命的であった。
「うめえ……。なんだこれ……。お前殺されるんじゃないか?」
「かもしれねえ……」
さてはこれが最後の昼餐かとガタブルする一人と一柱。
いや、確かにその可能性は高いのだが。
このピクニック大作戦には門上御影の今後がかかっているのである。
正直。
もう風前の灯火だと思うのだが。
「……まあなあ」
「……仕方ねえよなあ」
だってこんなに弱い。
だってこんなに使えない。
きっと門上御影は――死んでしまった方が幸せだ。
「……じゃあさ」
ゴンはそう言ってナイフを引き抜いた。
「もう、一緒に死なねえか?」
とすっと軽い音がして御影の目の前にナイフが刺さる。
ゴンを見ればその手にはうり二つのナイフが光る。
ああ、この日この時。
5メートル離れ続けた二人は初めて向き合った。
その手には同じナイフが握られていたという。




