いつだってそんな感じだったと彼は思った
門上御影は弱い。
精神が、肉体が、知性が、魂が、存在が、弱い。
最もか弱き皿洗い。それが門上御影である。
しかしだからこそ――門上御影は知っている。
「弱い」という事を、知っている。
か細い精神が理解している。
儚い肉体が体現している。
脆弱な知性が叫んでいる。
魂に刻まれ、存在が体現するその有り様。
つまり。
弱い者は――希望なくして生きられない。
弱きものとしての本能が囁くのだ。
ゴンとてきっと同じはずだと。
* * *
――とはいえ、それをガラン世界人類最強たるジャイニーブさんに言って理解できることではないだろう。
そう判断した御影は口を閉ざす。
そう思ってしまうことそのものが――すでに弱さであることを御影は知らない。
希望なくして生きられない。
それは生きとし生けるものすべての真理だと――御影は知らない。
あるいは――そこに気がつかないことそれ自体が御影の強さなのかもしれなかった。
強いは弱い。
弱いは強い。
御影は知らないけれどもそれらはいつだってそうなのだ。
その程度、ジャイニーブとて知っている。
が、しかし。
「何をしているようにも見えねえけどなあ……。イヨルの旦那もなんにも言ってなかったんだろ?」
現実問題として何も感知できなかったジャイニーブは首を傾げつつ煙抜きの穴を調節した。
「まあ、俺の勘に根拠がある訳ないっすからねえ……。外れの目も十分あるんですが。……ただまあ」
「ただまあ?」
「俺の弱さ考えれば油断しないに越したことないじゃないですか」
「確かに」
ジャイニーブさんはくくっと低く笑う。
獰猛さすら、感じるような笑い。
……どうやら、この人は「弱さを知る弱者」が好きらしい。
遅まきながら御影は気がついた。
「……あの分体と友達になれたか?」
「無理でした」
即答する。
迷いさえなく無理だった。
「距離は近づいたと思うんですがね……」
「ふうん?」
「対等な感じがしないんですよ」
「……なるほど」
ジャイニーブさんにとって御影を殺すなど呼吸に等しい。
それは御影にとっては友達になりようがないと言う意味だ。
思い起こせば。
いつだってそんな感じだった。
門上御影とて高校まで通った身、つるんでいた連中の一人や二人はいないことはない。
けれどなんかこう……常にお荷物だった。
上手く話せない。
空気が読めない。
ノリに乗れない。
三拍子そろった落第生の御影はカースト下位勢にとってすら枯れ木も山のにぎわいだったが、まあなんというか。
学校にいるときはつるむんだけど。
ノートの貸し借りはよくするんだけど。
バイトと称して家業の手伝いはさせられるんだけど。
純粋に遊びに行こうってなると確実にハブられる。
それが門上御影のポジションだった。
弱いから、いつもお荷物。
弱いから、いらない子。
ゴンに対してさえ――そう思われている気がしてならない。
あれほど弱くなったゴンに対してさえ。
ここまで近くなったゴンに対してさえ。
対等に思ってもらえてると信じられない。
それが門上御影だった。




