シンプルにイヤだと彼は思った
「……さて、歩くか」
「地味だよな~」
まあ、イヨルさんが出てこようが出てきまいが御影に出来ることなど歩くだけなのだ。
ただただテクテクテクテクと。
それが門上御影である。
「んー……でもまあ、真理ではあったかなあ……」
「ふうん?」
「国やぶれて山河ありつってな。大陸の方の有名な言葉だよ」
結局、人類が滅んだとしてだから何だと言う話である。
人類が滅び、惑星が壊れ、太陽系が崩れたところで。
きっと世界はなにも変わらないのだ。
神すらも――きっと地球を見捨てて次の星を目指すだけだろう。
「だからまあ……これはきっと、『嫌悪』なのかね」
「嫌悪?」
「シンプルにいやだなあって感じ? それが一番近いかな」
なにかすれば良かったのに、なにもしなかった。
それがもうシンプルにイヤだ。
ただ、それは。
個人や世代に対してというよりも。
最初から正解が分からないように出来ている世界そのものに対してなのかもしれなかった。
こうすれば、正しいのだと最初から分かっていれば――
「……いや、そうでもないのか」
「ねーよなあ……」
きっと最初から、どれだけ正しい答えが分かったところで。
結局人は――それ以上を望むことをやめられない。
それもまた――イヤな話だ。
「救いがねえなあ……」
「救われたいのか?」
「どうなんだろうなあ……」
豊葦原には救いがない。
終わって終わって終わり続けるだけの世界の残骸。
そしてそれを変える力など豊葦原人にはない。
群となり動くとしかできない獣が豊葦原人だ。
「そりゃまた辛辣な」
「いやあ、そういうモンらしいぜ。そもそもの造りとしてそう言う風に出来てるんだとか」
「……お前も?」
「多分ね」
群れているときだけ元気がいい。
そん豊葦原人のなかであっさりとつまはじきにされたのが門上御影だ。
だが、まあ。なんというか。
自分が逆の立場だったらそりゃ排斥するよなあと思うのも門上御影なのだった。
これを仲間に入れたところで意味がない。
「そりゃまたなんで?」
「群で生きる以上均質であることは譲れねえって話」
結局、群の中でしか生きられないのが豊葦原人だ。
ならば、群の強度を上げることこそが生存戦略。
調和を乱す異分子は危険分子に他ならない。
より、均質に。
より、同質に。
豊葦原から来たのは最弱の皿洗い門上御影だが――正直。
豊葦原の誰であっても変わらなかっただろう。
豊葦原人の能力・思想なぞ――誰であっても変わりはない。
「……なるほどな」
そう答えた声はゴンの物ではなかった。
ガラン世界最強の人間。
ジャイニーブ・アルデニガ・アルデニギ。
狼の獣人がそこに立っていた。




