地味なことこの上ないと彼は思った
しかして現実は非情である。
門上御影最後の戦いが始まろうが始まるまいが、やるべき事は右に向かって歩くことだけなのだった。
地味なことこの上ない。
まあ、無論。
それが御影にふさわしい戦いなのだが。
ゴンと二人、テクテクと歩きながら話す。
五メートルの距離を保ったまま並んで。
「終わった世界、ねえ……」
「終わり続けてると言った方がいいかもなー」
「具体的には?」
「子供が産まれない」
どんな生物であったところで、次代を担う子供たちが生まれなければもうどうしようもなく詰みだ。
特に有性生殖であれば二人は生まれないといけない。
まったく、そんなことすら出来なくなってもうどれくらい経つんだろう?
「どっかで手を打っておけば良かったんだろうけどなあ……」
「打たなかったのか?」
「なんかもう、温度差がひどくて……」
「温度差ねえ……温度差でほっとける問題じゃねえと思うが」
「まさしく」
どれだけの繁栄があったところで。
どれだけの武力を持ったところで。
どれだけの領土を持ったところで。
次代が生まれなければなんの意味もないというのに。
人はいつか死ぬ。
絶対に。確実に。
そんなことすら分からなくなった――世界のなれの果て。
ああ、それが――世界の終わりでなくてなんだろう?
「……まあ、どっかで揺り戻しが来そうでもあるけどな」
「どっか?」
「百年後ぐらい?」
多分もう、その時にはいわゆる「豊葦原世界」なんて滅んでるだろうが。
だからまあ――もうここが。
豊葦原世界の終わりなのだった。
「――そんなことはないだろうよ」
唐突に響く声。
現れる白い影。
ぞろりとした装束。
きらめく宝玉。
イヨル・キウダがそこにいた。




