いらねえよなあと彼は思った
5月9日。
善は急げとピクニック当日である。
いや、早えよ。
リューイ曰く。
「いやいや、正直そこまでのリソースつっこむメリットがないんだよね。ぱーっとやって分体だけ消えてくれればよし、みたいな?」
だそうな。
最早この局面までくれば――御影の命、いや勇者の命であっても切る価値はあるということなのだろう。
痩せても枯れても最高神代行。その辺は甘くない。
もっとも、その局面までたどり着いた功労者の一人としてその名があがっている事には全く気がついていない御影であった。
ゴンを介した邪神分析がもたらした物はそれほどまでに大きかったのだが、ゴンとキャッキャウフフしてただけの御影はそんなことなにも知らないのであった。
故に今日このときも。
軽く右手を掲げた御影はこう言うだけである。
「よう」
そして、邪神の分体はこう返した。
「よう」
その右手は――軽く掲げられていたという。
* * *
ピクニックのコースは決まっている。
御影たちの家から出発して居住エリア外周をぐるっと右に一回り。
スタート地点に戻ってきたらお昼を食べて、午後は逆方向にぐるっと一回り。
再度スタート地点に戻ってきたら終了である。
……なんの面白味もねえ。
特に午後の逆回転に一回りっているか? ……いらねえよなあ?
まあ、コースがつまらない以上トークで盛り上げるしかないのだが……しかないのだが。
盛り上げ役は門上御影であった。
もう、詰んでるといっても過言ではない。
「んー、いや、なんだ」
そんな御影に若干気まずそうなゴンが言う。
「なら、俺、お前に聞きたいことあったわ」
視線を斜め下にそらしながら、ゴンは言う。
「……お前の世界ってさ、どんなの?」
それは開戦の角笛。
邪神の瞳が豊葦原世界に向いた証。
世界を守るもう一つの戦い。
それに対し門上御影は――
「……終わった世界だな」
真っ向から受けて立つ。
そんな自覚はないけれども、そんな理由はないけれども。
それでも。
それが門上御影なのだった。
それが豊葦原代表門上御影なのだった。
さあ、この勇者召還譚もいよいよ大詰め。
なにもできない最弱の皿洗い。
門上御影最後の戦いが――今始まった。




