間違ってなかったのだと彼は思った
つまりは、味噌って結構余るよねって話だった。
いや味噌焼きとか美味しいんだけれども。
しかして御影は週二日しか東京にいない身、毎食味噌汁を作ったとしても限度があるのだった。
ていうか御影醤油派である。
かくして、召還前に豚汁を作った残りの味噌の処分に御影は大弱りであった。
まあ、それはどうでもよく。
問題は動くのか、動かないのかという話だった。
「まーそれだったら答えは決まってるんだけどね」
「どっちですか?」
「動く」
内定取り消されたあの日、御影は死を覚悟したし、死ぬことは出来た。
それでも二年もの間見知らぬ土地をさまよい続けたのは。
――やれるだけのことはやって死にたかっただけだ。
その結果死んだとしても、恨むものかときっと思える。
自分も他人も社会も親もなにもかもを――恨むものかと。
「いや、なんでそんなに後ろ向きなんですか……」
「俺、今全力で前向いたけど!?」
いや、そんな哀れみの視線を向けられても!?
門上御影全力の全力ですよ!?
「……そうでしたね。御影さんはそういう人でしたね」
「なにを今更」
無論、もっと他に出来ることはあったのだろう。
それでも、最も長く「生きられる」選択肢を選ぶなら。
――あれで間違ってなかったのだと、自信を持って言える。
「……問題はなにをするかなんだよなあ」
「考えてないんですか!?」
当たり前である。
門上御影は勇者でも賢者でもない極々普通の皿洗いだ。
神様に殺されそうになったらどうしたらいいかなぞ知る訳ないだろう。
「生け贄とか捧げてもなあ……」
「あ、あれは基本効果ないです。神々にとって重要なのは信仰を供給出来るかどうかなので動物を渡されても困るんですよ。無論神によって違いますが」
「なるほど……」
というか、御影に殺せる動物なぞカラスが精一杯なのだけど、そんなもろ眷属ですみたいなものを殺されたら天照様だっていい気はしないだろう。
キーズ神だってアメショーが殺されたら怒ると思うんだ。
「邪神の分体がどうにかなるのが一番良いわけだから……どうすれば良いんだ?」
「本当になにも考えてないんですね……」
うん。考えてない。
日常生活で考えることでもないし。
まー、でも理想はゴンの寝返りか?
ならとりあえず、飯でも食えばいいのか?
「いや、どこで食べるんですか……。向こうは戦場ですよ?」
「あー、いやー、だから……ピクニック的な?」
「……まあ、それで気が済むなら別にいいですけど」
なんかめっちゃかわいそうなものを見る目で見られてるけどまあ良いとしよう。
門上御影がやれるだけのことをやるというのはそういうことだ。
かくして。
門上御影のピクニック大作戦が始まったのだった。




