金は多いに越したことないと彼は思った
みなさま覚えているだろうか。
天照様がゆるキャラ化をねらったマスコットのことを。
御影の包帯や作業服にくっついてるあれである。
そして天照様は戦国乱世のゆるキャラ界を制すべくこのキャラをプリントしたタオルを作り関係者に配ろうとした。
なにはなくとも関係者には粗品。
天照様も認める日本の心である。
が、しかし。
悲しいかな結構な数の社にやんわりとお断りされてしまったらしいのだ。
曰く。
協力はもちろんこれまで通りさせてもらう。
しかし、こちらにも付き合いというものがある。
物が残ってしまうのはできれば避けたい。
だそうな。
結構なコウモリ体質である。
まあ、それも日本らしい。
で、まあ、結論として。
――タオル、めっちゃ余った。
とはいえ天照様プロデュースのゆるキャラがプリントされたタオルをおいそれとは捨てられず、どうしようと頭を抱えていたところにある疑惑が持ち上がったのだ。
その名も「門上御影手先器用疑惑」。
……いや、別にそんなことはないと御影は主張したいのだが。
皿を洗うのが精一杯と思われていた御影が様々な雑用をこなすのを見てそんな疑惑がポップアップしたらしい。
いや別に雑用ができても手先が器用とは限らんだろう……。
そんな御影の内心を余所に話はとんとん拍子に進み。
門上御影に余ったタオルを雑巾にするように命が下ったのである。
そもそも天照様が人間に加護を与える自体もう何百年もなかったことであり、この際だから御影にちなむ何かが欲しいという要望もちらほらあったらしく、ならばとなったらしい。
そういうわけで。
門上御影、雑巾を作る。
* * *
天照様が用意したタオルは片一方の端が平織りになっておりそこにゆるキャラのイラストがプリントされた物である。
パイル織りにプリントするのは料金が高いのだそうだ。
作業手順としては。
まず、そのイラストの周りを赤いこぎん刺し糸で丸く縫う。
そして、イラストが上になるように四つ折りにして両端を木綿糸でなみ縫い。このとき多少のゆとりを持たせなければならない。
最後にホツレがないか確認して完成である。
これで、一枚五円である。
無論材料費は向こう持ち。
かなりボロい儲けと言っても良い。
家探しに行き詰まった御影は新たなる収入源を探しておりやらない手はなかった。
「……いや、どうしてそこで一緒に本を読もうという発想になるんですか」
「ルーイックさんに邪神を倒してもらおうと思って……」
家探しに行き詰まった系皿洗い門上御影。
割とマジで邪神討伐ボーナスを狙っている。
ここまできたら住所不定無職に逆戻りする事も考えなければならない。
金は多いに超したことはないのだ。
そして御影が雑用以外で邪神討伐に貢献できることとなると、ルーイック・トゥータの小説を読むぐらいしか無い。
ならば読むしか無かろう!!
いや別にクルガウが見たいんじゃなくて!!
「……まあ、本音は透けて見えてますが良いと思いますよ。前の負傷事件の件もあります。もしかしたら恩義を感じてくれるかもしれません」
「別に恩を着せたいわけじゃないんだけどね」
「もちろんです」
だから、もしかしたらですよとくうは言った。
「ワンチャン恩義に感じてくれれば儲け物ってところでしょう。向こうは勇者でこっちはスタッフなのですからお手伝いするのは当たり前のことですし」
「まあ、あと単純にルーイックさんの本おもしろいしね。こっちも嫌々読んでるつもりはないし」
「――それはさておきですよ、御影さん」
来た。
御影はバレないようにため息をついた。
……つもりだったが、「あ、これバレバレだわ」とついてから気がついた。
「今日――どうしましょう?」
「どうしようかねえ……」
――門上御影、唐突にオフである。




