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もはや理解不能と彼は思った

カルルット・デルルット。

融合世界ルレットの勇者にして今回召還された中でもっとも加護厚き勇者。

食物製造の奇跡を許されたただ一人。


なのだが。

当人曰く「自分で作ったモンばっか食えとか拷問じゃん……」であるらしく、ちょくちょく農園につまみ食いにやってくるのだ。

まあ、仕事手伝ってくれるので御影としては助かっている。


「やあ、カルルット君。久しぶり」

「そんなお久でないじゃん。からかうのはやめるじゃん」


余裕でからかうリュートさん。

ぷくっとふくれるカルルットさん。

最近知ったがカルルットさんとリュートさん同い年の52歳らしい。

……そうは見えない。


まあ、他の勇者に聞いたところカルルットさんレベルの加護持ちだと寿命という概念自体克服していてもおかしくないので生後三ヶ月でも250歳でも特段不自然じゃないそうだ。

もはや理解不能である。


まあ、逆に言えばリュートさんは見た目通りの年齢なわけである。

エルード人の寿命は豊蘆原よりちょい短い程度だそうで。

つまりはリューイの加護なんてそんなもんらしい。


「もらうじゃん?」

「構わないよ」


ひょいっとカルルットさんの手がシェルガをつかむ。

同時に腰の試験管から伸びた銀色の流体が痛んだ部分を切り落とす。


これがカルルット・デルルットの武器にして加護。

未来神ウェイバーの加護を受けし聖なる水。


――ウェイバー型不定流体である。


 * * * 


未来神ウェイバー。

融合世界ルレットで現在唯一活動状態にある神である。


その権能は未来そのものというより「未来の不確定性」であるのだそうだ。

すなわち「未来は決まってなくてなんだって起こり得る」ことを司る神がウェイバー神だ。


故に。

その象徴たるウェイバー型不定流体はなんにでもなる。

白亜の城でも必殺の武器でも鉄壁の防具でも万能の薬でも万死の毒でもそれこそなんでも。

これを入れた試験管一本だけをつるしたそのラフな格好がカルルット・デルルットの臨戦態勢である。


まあ無論。

デメリットというのはあるわけで。


この不定流体、なんにでもなれるが故に全く安定しないのだとか。

「神の子」ではない一学者としてのカルルット・デルルットの功績の一つがこれを安定的に運搬できるようにしたことなのだ。


「相変わらずすっぺえじゃん?」

「味は期待しないでくれたまえ。これが一番栄養価と保存性を兼ね備えているんでね」

「なら仕方ないじゃん?」


ぶつくさいいつつ完食するカルルットさん。

まあ、確かにシェルガっておいしくはない。てか酸っぱい。

レモン味のリンゴを想像すればわかりやすいかもしれない。


「御影はあの分体とは仲良くしてるじゃん?」


唐突にカルルットさんは話を振ってきた。

というか多分これを聞きに来たんだろうなあ……。

とはいえそういわれても。


「……仲良くってなんなんですかね?」

「……俺っちに聞くなじゃん。俺っちも友達いない的な?」

「マジすか!?」


と、驚いてみたものの。

加護持ちだらけの勇者屈指の加護持ちカルルット・デルルットと対等な存在などそうそういないわけで。

誰からも相手にされてない御影とは逆ベクトルで友達が居なくても別におかしくはなかった。

強者故の孤独と言う奴である。


「ていうか、ルレットは『友達』とかそういう概念に縁遠いじゃん?」

「そうなんですか……」

「特に俺っちみたいな第一世代は厳密に管理される的な?」


カルルットさんが目に見えて落ち込んだ。

黒歴史らしい。


融合世界ルレット。

科学と魔法を融合させ神を超えた人――長老衆が治める世界。

その七人いる長老の一角サレッカ・デルルットの第6973子がカルルット・デルルットであるそうな。多い。


死という概念すらも凌駕した超越者の直系子孫。

そりゃあ厳密に管理され友達も居なかろうというものだ。


「……リュートはいっぱいいそうじゃん?」


ふてくされたカルルットさんはリュートさんに話をぶん投げる。

いやまあ、確かにリュートさんは多そうだ。

リア充っぽいもんなあこの人。


「ああ、確かにいっぱいいるよ」


案の定、リュートさんはあっさりそう返した。

カルルットさんは拗ねて二個目のシェルガに手を伸ばすていたらくである。


「――あらかた死んでしまったけどね」


カルルットさんの手が、止まった。

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