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なんかヤバいらしいと彼は思った

さて、話は飛んでいきなりの五月。

ゴールデンウィークまっただ中の五月四日木曜日、五連休に浮かれる豊蘆原を後目に今日も今日とて皿洗い中の御影である。


「熱い……」


本日の皿は龍滅世界ギアの勇者ガンソン・デルルの「燃え続ける鉄皿」。

この皿に乗せた肉はおなかがいっぱいになるまでなくならないとか。


昔話に出てきそうな便利グッズだが、逆に言えば指の皮一枚でも落としてしまえばそれをおなかいっぱいになるまで食べ切らなくてはならない皿洗い泣かせの皿だ。

しかも手袋をしても燃えてしまうから素手で洗うしかないという鬼畜仕様。

ひたすらに水を流しながらこびりついた汚れをはがしていくしかないのである。


「頑張れー!! あおいでやるから負けるなー!!」


そう。

この5m先から大きめのうちわでひたすらに扇ぐこの存在。

それこそがこの三ヶ月の一番の変化といえよう。


奴の名はゴン。

今なお巷を騒がせるステルス邪神である。


 * * * 


話は戻って二月六日。

ゴンが初めて名乗りを上げて逃げ出したあの直後にまでさかのぼる。


もう速攻でリューイが来た。

そして速やかに事情聴取。


「……………………うん? これはしてやられたかな?」


そして話を聞き終わると同時に冷や汗だらっだらであった。

なんかヤバいらしい。


「……? なんか仕込まれた感じはしねえけど?」


首を傾げるヴァルさん。

御影に魔法のことは分からないが、元素魔法の専門家たるヴァルさんが言うならそうなのだろう。

しかし、リューイの冷や汗は引かない。


「いや、ここエルードなんだよ。名前を重んじる世界エルード。そこで邪神の分体が名を名乗ったということ自体魔法的に意味がある行為なんだよね……」

「『名前を知っていることを起点とする魔術』って奴ですかい?」

「ふむ、確かに高位の神霊がそういう魔法を使ったという話は聞いたことがあるが……」


完全に部外者と化した御影を置いてヴァルさんはさらに首を傾げる。


「……『記憶切除』で名前の所だけ消しときゃ良くね?」

「……言われてみればそうでやすな」

「……まあ、名前ぐらいなら私でも消せるな」


そこでリューイは大きくため息をついた。


「そうなんだよね……実にそうなんだ」


その表情は「してやられた」と言っていた。


「ワンワード程度の情報であれば元素魔法で簡単に記憶から消せる。つまり――逆に言えば」


その瞬間。

四対の瞳が御影を見た。


「彼の記憶は――消せないんだよ」


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