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ただのツンツンじゃねえかと彼は思った

大怪我すると痛みよりも熱さの方が先に来る。

そんな通説を聞いて御影はこう思った。

神経仕事しろよ、と。


さて、そんな与太話はともかく。

門上御影、手に激痛が走る。


激痛。

さてはあの通説は嘘だったのか。

やはり怪我をしたら熱いより痛いのか。

なんてことを考えるまでもなく。


ぶっちゃけ軽傷だった。

右の手のひらがざっくりいっただけである。


「ああああああああああああああああ!!!」


でも痛い。

そりゃ痛い。

絶叫するぐらい痛い。

熱さなんて感じないほど――純粋に痛い。

門上御影そこまで怪我に耐性のある方ではない。


というか。

軽傷と言っても皮一枚ではない。確実に肉が切れている。

骨が切れてるほどではないが。

脆弱なる門上御影の肉体にとっては結構なダメージである。


「……………マジか」


呆然と呟いた声は襲撃者のものだったのか。


「グルー!! 索敵を!!」


そう叫んだのはルーイックさんだろう。


「もうやってる!! 検出できない!!」


ローグウェンさんがそう叫び返した声は焦りを多分に含んでいて。


「召喚:銀鎖!!」


ルーイックさんが放った鎖は空しく虚空を撫でた。

いや。

からりと何かを弾き飛ばしたか……?


涙でぼやける視界を移せば。

落ちているのは――果物ナイフだった。


 * * * 


つまるるところ。

どうやら門上御影。

突き出された果物ナイフの刃の部分を素手で掴んだらしかった。


らしいというか。

ディーさんの取り替えっこ(チェンジリング)でカルルット氏のいるシェルターに戻ってきた御影に下された診断がそれだった。


そのままチクチクと手のひらを縫い合わされて今ここである。

麻酔が効いたのか痛みは若干ましである。


「……マジで何の神秘の痕跡もなさげじゃん?」

「まあ、俺殺すのに神秘とかいらねえっすからねえ……」


百均のナイフで殺せる男、門上御影である。

この男の命を奪うのに何の神秘が必要だろうか。いや不要である。


「いや、直前までデフォル人が気がつかない隠形を使ってまでやってることがナイフアタックって……効率悪くね?」

「……神秘が介在しないからこそ、発見が難しくなっている可能性は?」

「……その発想はなかったじゃん」


攻撃方法をナイフアタックに限定したと言うよりは。

すべての神秘を隠形に振り向けたと言うことではなかろうか。


「ぶっちゃけ、ルーイックさんだってナイフで刺されればダメージ行くでしょ。そういうことなんじゃないですかね?」


人を殺すのに――大がかりな兵器や大規模な魔法が必要なのか、と言う話。

ナイフで刺せば十分なんじゃないの? という一つの真実の話である。


「狙いは御影じゃなくルーイックだったってこと的な? ……ありそうな話じゃん」

「自分本体はあんまり強くない、みたいな話をめっちゃしてましたよ。だったら本体狙いワンチャンありでしょう」

「実際強くないっぽいじゃん」


そういってカルルット氏はその辺のメスを取り上げて自らの手のひらに突き立てた――いや。


刺さってない。

金属板にでも突き立てたごとく弾かれた。


「この程度の加護も持ってなさげじゃん? ルーイック」

「この程度ってもんなんすか……?」


いやでも。

勇者だしそれぐらいはありなのか?


「トゥールリアの神様はツンデレじゃね? あれほどの働きに対してこの程度の加護も与えないとか冷たいじゃん」

「それツンデレって言うんですかね……?」


ただのツンツンじゃねえか。

むしろブラック勇者である。


「…………いよう」


なんてことを話していたら。

なんかげっそりしたリューイがやってきた。


「おーリューイじゃん」

「お疲れ~」

「君たちは気楽でいいね……」

「死な安死な安」

「リアルでそれ言わないでくれないかな!?」


とは言ったものの。

この手では最早皿が洗えないのは明白で。

つまりはここで門上御影の召喚譚は終わりなのだった。


トータル収入、二万円。

決して安くはないが――それでも。

もう少し稼ぎたかったのが本音である。


「まあ、とにかくあれだよ」


しかし。

現実は門上御影の想定の遙か上をいく。


「君に労災が降りる事になったから」


門上御影の異世界召喚譚。

まさかまさかの労災談義である。

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