ロリ声だったと彼は思った
「薬草茶お好きですかな?」
「あーいただきます」
そんな感じで。
前線にきた門上御影。
優雅にティータイムだった。
…………いやまあ。
場所はテントの中なのだけど。
イスも机も折りたたみだし。
しかして前線らしさと言えばほぼそれだけだった。
ついてすぐ召喚されたローグウェンさんもだらけまくりだし。
遠くで聞こえる戦闘音がよけいに距離を感じさせる。
「我輩そのものは決して強くありませんからなあ……こうして安全圏に陣を張り兵を召喚するのが常ですな」
「ああ、なるほど」
だからこそリューイは御影がついて行くことを認めたのだろう。
最前線とはいえ――ここはまだ安全な方なのだ。
「さて――そろそろですなあ」
そう言ってルーイックさんが広げたのは地図だった。
おそらくこの辺り一帯の物だろうそれにルーイックさんは次々に駒を並べていく。
「邪龍が20体、邪鬼が20隊、吸血鬼が20体……」
「はー大所帯だねえ」
くるくるとラウンドシールドをもてあそびながらローグウェンさんが言う。
見れば軽い口調とは裏腹に瞳は剣呑な光を帯びている――いや。
比喩でなく。
ローグウェンさんの茶色の瞳が青く発光している。
呼応するように小さなラウンドシールドも青く光る。
「山陰に邪龍の分隊がいるぜ。指揮官に邪神の分体つき」
「吸血鬼の横合いに魔力反応があるのう……転移の魔法陣じゃな」
「典型的な拡翼陣ですなあ……それに転移をプラスしてかき回す算段でしょうな」
のじゃ口調で喋ったのはローグウェンさんが持つラウンドシールドだった。
……なるほど。
驚いたは驚いたが、そういうマジックアイテムなのだろう。
喋る武具防具っていや物語の定番である。
ちなみにロリ声であった。
「まあ、定番ですが邪鬼の隊には『騎士団』を当てましょう。吸血鬼には『魔術王』、邪龍には『暴君』ですかな」
「正面突破でいくわけじゃな」
「我々に求められているのは集団火力でしょう。ここで奇策に頼ってどうするのかというところですな」
「で、戦況確認に『空歩き』、各部隊のフォローに『傭兵団』ってところか」
「我輩の回復に『聖女姫』も召喚せねばなりませんなあ……」
結構な召喚数である。
なるほどこれら全てが勇者級の戦力なら確かにエース級だろう。
「では、行くとしますか」
ルーイック・トゥータの右手が掲げられる。
数多の英雄を生みだし――召喚してきたその右手が。
「召喚:騎士団」
それは、第18文明期最強の騎士団。
騎士道華やかなりし18文明期最強最大の華。
「召喚:魔術王」
それは、魔術を極めた第22文明期の頂点。
人の領域を踏み越えたと言われる彼を越えるもの未だになし。
「召喚:暴君」
それは、トゥールリア世界唯一の龍殺し。
不遜にして絢爛。全ての暴虐をその栄華にて押し流す武王。
「召喚:空歩き」
それは、トゥールリア世界の至高にして最高位。
453年続いた最長文明の謎に包まれた基幹技術。
「召喚:傭兵団」
それは戦乱続きの第5文明期の風雲。
縛られぬ雲にして荒れ狂う風たる彼らの動きを読むことは不可能。
「召喚:聖女姫」
それは第18文明期の中核。
騎士たちの唯一無二なる忠誠の対象にして最高の癒し手。
「召喚――完了」
掲げた右手が下ろされる。
これがーールーイック・トゥータ。
第39文明期末期最大の功労者。
「……いや、『不朽の盾』殿」
「なんじゃ?」
「こっぱずかしいのでそのナレーションやめてもらえますかな!?」
「いや、余所者がいるからこういうの大事じゃろ?」
「我輩のセンスが疑われますから!!」
「なんじゃと!?」
……ナレーション担当「不朽の盾」。
なんかちょっとお茶目さんだった。




