聞いてないぞ俺はと彼は思った
「護身術? 良いんじゃないかい? 死ににくくなるのは良いことだ」
話しを聞いたリューイはあっさりと言った。
ちなみに今日はラモ乳持ってきてくれなかった。ケチである。
「でもまあ正式スタートは三日後からの方が良いね」
「そのこころは?」
「豊蘆原の方で御影君に新たに加護を付与することが決まったからね。もしかしたら三日後にはスゴいパワーアップしてる可能性がなきにしもあらず?」
「へ~……」
っておい。
なんだ加護って。
聞いてないぞ俺は。
「……俺、目からビームでたりすんの?」
「君の加護イメージはどんなだい!?」
いや、日本に住んでて加護とか聞いたことないし。
「まあ、目からビームがでるかどうかは今会議中だってさ」
「おお、さすが高天原神会議好きだぜ」
「いや、出るんですか。目からビーム」
「豊蘆原世界は世界内世界だからな。他の神々との根回しとかいろいろあるんだろう」
「…………………ああ、そうでしたなあ」
ふむ。
つまりは他の宗教の神様に今根回し中ってことか。
……つまりは他の宗教の神様の意向次第で目からビームが!?
「あと、イヨル君に伝達。マセル君が体調不良なので今日スポットで交代入ってもらうよ」
「ああ、マセルか……死んだかな」
「いや、まだ生きてるからね!?」
「デフォル人の治癒能力の低さをなめてはいけないぞ?」
「いや、カルルット君が今頑張ってるから!!」
……なんだろう。
もしかして護身術が必要なのは俺ではなくイヨルさんなのではないだろうか。
「ふむ、ということは今日はイヨル殿を送ってからジャイニーブ殿と交代すればよろしいので?」
「いや、イヨル君とジャイニーブ君はセットじゃないと意味ないからジャイニーブ君も御影君も今日はお休み。護衛は他の人に代わってもらう感じだね」
「……ふむ」
む、なんかルーイックさんが考え込んでいる。
このイケメンが考え込んでるときの絵のなり方は卑怯だと思うんだ俺。
「……御影殿がよろしければなのですが、我輩の担当領域に連れていきたいのですが」
「いや、君の担当領域めっちゃ最前線じゃん!! 無理無理無理!! 御影君だって良いって言わないって!!」
「あ、いいっすよ」
「ほら、やっぱダメだってってええええええええ!!!」
リューイ、大絶叫。
まあ、そうだろう。
なにせ、死者ゼロレコード続行がかかってる。
「ちなみに、俺を最前線に連れて行って何をするんで?」
「取材ですな」
きっぱりとルーイックさん――いやルーイック先生は言う。
「我輩だってその危険性について理解していない訳ではないですが――著述魔術師として芽生えたインスピレーションに背くことは出来ませんな」
そういうルーイック先生はもう完全に「作家」の顔になっていた。
「……つまり、御影君にインスピレーションを感じたからちょっとお喋りしたいと」
「そうですな。――戦力アップという意味では損はさせないと誓いましょう」
「……どれくらいかかる?」
「一月あれば実践投入は可能でしょうな」
「……………相変わらずとんでもない速筆だよね君」
リューイは頭を抱えてしまった。
それだけの価値がルーイック・トゥータの著述魔術にはあるのだろう。
日数さえあれば撃墜王だとジャイニーブさんは言った。
勇者クラスの戦力を複数体展開可能とイヨルさんは言った。
そんな彼の力の源が――門上御影だとは皮肉な話ではある。
だが、当たり前の話だ。
英雄だけで成り立つ話などないのだから。
「……良いだろう。ただしそれなら『契約』をしてもらう」
「構いませんな」
そう言うわけで。
二月三日。節分。
門上御影、前線デビューである。




