ペットのフォローは飼い主の義務と彼は思った
邪神がいる。
その一言で真っ先に動いたのは意外なことにリンであった。
「そこなのだ!!」
灰色の弾丸と化したリンが虚空に向かって飛びかかる。
その小さな前足はなにもない虚空をしっかりと掴んでいた――のとほぼ同時に。
「召喚:銀鎖!!」
ルーイック氏が虚空にかざした手から光り輝く銀色の鎖が勢いよく飛び出す。
それが虚空の存在に巻き付いたことでようやく御影にもその姿が見える。
人間大の大きさ。人間大の太さ。人間大の高さ。
御影とそう変わらないサイズの――何か。
「……隠形のレベルが高いな。悪いが正体がはっきり掴めない」
「……高位の眷属というこ――!!」
その時。
白銀の鎖がじゃらりと地に落ちる。
捕らえていた物が跡形もなく消え去ったように――いや。
「消えた……いや」
「跳んだな……。次元跳躍、だろう」
「………………今の鎖は我輩の持つ最も強力な縛りなんですがな」
「なんだかへんなのだったのだ……しっぽがぞわぞわするのだ」
「……リューイ殿を呼んできましょう」
「……ええっと?」
魔法とかさっぱり分からない門上御影。
完全に置いてけぼりであった。
* * *
「……うええ。ルーイック君の銀鎖でも縛れなくってイヨル君が見抜けないって……もう邪神の分体確定じゃないか」
待つこと五分。
やってきて事情を聞いたリューイの第一声がそれであった。
「やはりそうなりますか……」
「そうなるだろうな」
「そうなるんですか?」
「「「そうなる」」」
そうなるらしかった。
「邪神本体とか分体とか特定の魔法を無条件で無効化するからね」
「厳密には霊的な格を参照するような魔法に対して無効化が働くんですな」
「邪神の格は意外に高い。それこそ神霊に次ぐくらいにな」
「……はあ」
なんのこっちゃさっぱりである。
門上御影魔法とかには強くない。
「んー、なんというかさ。神聖魔法とか神様が人に与えてる魔法ってあるじゃない? そう言うのって『神様本体には使えない』ようにロックがかかってる訳ですよ」
「うわけっこ腹黒」
「で、そこで『神か神じゃないか』を識別してるのが『霊格』な訳だけど邪神の格は神に似てるから誤作動が起きちゃって効かなくなっちゃうことがあるわけ」
「……なるほど」
ていうか似てんのか邪神。
なんなんだろうな邪神の正体って。
まあ、関係ないっちゃ関係ない。
「……一回かかってから抜けたんですよなあ」
「単純に様子見でかかったふりをしていた線もあるが……その場合何を見ていたのか」
悩める魔法使いたち。
しかし、それを後目に御影はリンの背中を撫でるのだった。
「しっぽぞわぞわなのだ……。へんなかんじがしたのだ」
「おーよしよし。怖かったな~」
だって魔法のこととか全然わかんないし。
考えるだけ無駄だし。
だったらもふもふを撫でるよ。当たり前だろう?
「まあ、最悪は御影君狙いだよね……」
「だな」
「ですなあ……」
とか思ってたらなんか背後でめっちゃ不吉な声が聞こえるのだけど。
まあ、そんな声はひとまず置いといて。
ペットのフォローは飼い主の義務なのであった。
「みかげ~……」
「よしよし」




