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俺ってそんなにわかりやすいのと彼は思った


つまるるところ。

著述魔術とは神聖魔法に属する魔法らしい。

読者の共通認識によって編まれた器に神よりもたらされた力をそそぎ込む。

それによって共通認識どおりに自律行動を行う使い魔が出来上がるのだという。


裏を返せば――神が力を与えるに値しないと判断すればどれだけ読者に愛されようが意味がない。

そういう意味で著述魔術師の書く小説というのは奉納品としての側面をどうしようもなくもってしまう。


結果としてより豪華により絢爛により鮮やかにより華やかに――そして。

より――もふもふになるのだという。


「神グッジョッブ!!!!!!!」

「いや、そこで褒められても微妙だと思うのですがなあ……」

「きゅ~……」


なんかルーイックさんがぶつぶつ言ってるが最早気にならない。

もふもふは正義である。


「まあこの癒獣――クルガウは我輩の著作全てに登場しておりま――」

「マジすか!!!!!!」

「……ええ、まあ、はあ」


もうルーイックさんがどん引きだがそんなことは気にならない。

もう一度言おう。もふもふは正義なのだ。


「……まあ、出現頻度はまちまちですからな。一文しか出てこないのもあればヒロイン役をつとめた作品もあります。その辺は読んで確かめていただければと」

「そして御影はいい加減落ち着け」


ぽこん。

イヨルさんグーでパンチである。

……うん。前評判通りの弱さだ。


「とりあえずクルガウはもうリリースするしますが……」

「殺生な!?」

「いやとっととリリースしろ。御影がはしゃぎすぎる」

「きゅ~……」

「とっとときえるのだ!! みかげはわたさないのだ!!」


そう言う感じで。

クルガウは光の粒子になって消えてしまった……。


「ふむ、クルガウにそこまで食いつかれるとは……意外ですな」

「なんだかんだで御影人間嫌いだからな」

「きらいなのだ?」

「……イヨル殿――デフォル人が言うからにはそうなのでしょうな」

「いや、嫌いって言うか……向こうが俺のこと嫌いなんだと思いますが」


高卒の住所不定無職。免許一つもっておらず発達障害持ち。

友人恋人いない歴=年齢にして家族いない歴=年齢。

まともな神経してれば眉をひそめる存在だろう。

国家ですら「死ねばいい」と思うレベルだといっても過言ではない。


「……な?」

「……ですなあ」

「いや、なにがですか!?」


こんなわかりやすい自明の定理存在しないのに。

けれどもルーイックさんは眉をしかめて俺を見るのだった。


「少なくとも『皿』は洗えているのでしょう? それを軽んじるは『皿』を下賜した神をも軽んじる行為と見る勇者もありましょうなあ。時にははったりで胸を張るのも必要な処世術ですぞ」

「う、そういうもんですか」


そう言われてしまえば御影とて納得せざるをえない。

別に勇者に喧嘩売りたい訳ではないのだ。


「しかし、お前そういう処世術確実に苦手だよな……」

「明らかに不器用ですな……」

「会って一日で判断された!?」

「いや、一目でわかりますな」

「りんにもわかるのだ!! みかげぶきようなのだ!!」

「リンにまで!?」


え? 俺ってそんなにわかりやすいの?

いやでも思い起こせば毎回転校初日にはスクールカーストの最底辺にたたき落とされてきたな。

そうか……俺わかりやすいのか。

長年の疑問が氷解である。


「まあ、『皿』が洗えたといえどガラン世界の『皿』はかなり洗いやすい部類だからな。むしろ本番はこれからだろう」

「ほう、そうなのですか? 我輩その手の神具は持っておりませんからよくわからないのですが」

「材質が木だし何か魔法的な副次効果があるわけでも無いからな。『絶対溶けない氷の皿』とか『燃え続ける鉄皿』とかに比べれば簡単な方だ」

「なんすかそれ……」


御影驚愕の『皿』の存在が明らかになってしまった……。

いやまあ、神様より下賜された神器だもんなあ……。

それぐらいは普通なのかもしれない。


「つーか、ルーイックさんは皿ないんですか。もしかしてルーイックさんも食べ物が作れる人なんですか?」

「一言で言えば人間には無理ですな。カルルット氏は例外中の例外でしょう……。人の身であれほど神に愛された存在を我輩知りません」

「ルレット世界自体が神や宗教に対してネガティブだから学者という扱いになってるが……あれは本来『法王』とか『神の子』とかそう言う風に言われていてもおかしくはない存在だぞ」

「強力な加護を与えられている勇者の中でも与えられている加護の桁が違いますからなあ……」


そんなスゴい人だったのかカルルット氏……。

そういや聖書にも少ないご飯でお腹いっぱいになった奇跡とかでてたよなあ……そういうもんなのかもしれない。

ああでも学者っぽくないってのはあってたな。

しかし、宗教に対してネガティブな世界の神の子ね……。

余所の世界の邪心退治に出向いてるところといい、安泰な地位では無いのかもなあ……。


そんな御影の思考は――イヨルの一言で断ち切られることになる。


「おい、そこに邪神がいるぞ」


かくして。

門上御影、皿洗い生活二日目にして邪神エンカウントであった。

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