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うわ、キャラ濃いなと彼は思った


「あー、リューイ。俺早速だけど護衛外れるわ」


もしゃもしゃと豪快にハンバーグもどきを平らげつつジャイニーブさんが言った。

すげえなあ……。見てる方がおなかいっぱいになってくるよ。


「ほう? そんなに御影を守りたくないと?」


そう意地悪く言うイヨルさんの食事は驚くべきことに缶コーヒーサイズの水筒に入ったスープだけだった。

……こっちは見てる方がおなか空いてくるな。


「ちげーよ。ちょっとまあ、デボリルロ・ハギシルド様が片づけ方わかってないみたいだからご教授させていただきにいくんだよ」

「……多分、ラギルーシャ君お前にかまって欲しくて散らかしてるぞこれ」

「まあ、それならそれで? ちょっとばかり手合わせさせていただくだけだし?」


うわあ……。

ジャイニーブさん目が笑ってねえ……。

義弟さんの蛮行にブチギレ状態である。


「んー、別にかまわないよ。ちょうどルーイック君が戻ってくる頃だし」

「ああ、あの人か。なら安心だな」

「新人入ったら会わせろってって言ってたから丁度いいしね」

「……どんな人なので?」


安心ということは強いのだろうが……なにを考えて俺に会いたいと言ったのか?

生け贄とかにされるのはごめんだぜ?


「ルーイック・トゥータ。信仰世界トゥールリアの勇者だね。スタイルとしては超強い使い魔を大量に召喚するタイプのサモナーかな。攻防回復攪乱何でもいけるオールラウンダーだよ」

「正直強いぞ。もし、長期滞在が可能なら撃墜王は奴の称号だ」

「トゥールリアでは彼はスターでカリスマでエースだからねえ……。今回もサイン会と握手会とトークショーと地方営業と戦争があるからって10日も帰られちゃった」

「ちょっと待て。今なんかおかしかったぞ!!」


まあ、勇者なんだから戦争するのも普通なんだろうが、それとサイン会握手会が同列なのかよ!!

とんでもないスターだな!!


「ああ、戦争するように握手会をして握手会するように戦争するのがトゥールリアだからね」

「両方とも世界を安定させるための魔術儀式なんだろ?」

「そうともいうね」

「言うんだ……」


なんかすげえな異世界。


「とりあえず今夜はイヨル君たちと一緒にいてもらえるようにしておくよ」

「……おう、一晩で『ご教授』させていただくぜ」


義弟さん逃げて!!

ジャイニーブさんブッチギレですよ!?


「安心しろ。アレはガラン世界ではご褒美だ」

「マジで!?」


まあ、そんなこんなで。

門上御影、ルーイック・トゥータ氏に護衛されることになった。


 * * * 


まあ、それはさておき。

皿洗いレベル1の門上御影、なにはなくとも皿を洗うのであった。


作業手順をざっくり言ってしまえば、


1.「汚れ浮かし剤」を「浄化水」に溶かす

2.「汚れ浮かし剤」を皿に塗布。

3.「汚れ吸着剤」を「浄化水」に溶かす。

4.「汚れ吸着剤」を吸着布に染み込ませて皿に隙間がないようにかぶせる。

5.砂時計(大)をひっくり返して待機。

6.砂が落ちきったら吸着布を剥がし、「乾燥液」をまんべんなく塗布。

7.砂時計(大)をひっくり返して待機。

8.磨き布につや出し剤を出して磨く。


みたいな感じである。めんどくせえ。

これにさらにどこを間違えたらどこまで戻って的なことが書かれた皿洗いマニュアルは軽く本である。


まあ、やせても枯れても住所不定無職門上御影。

仕事がめんどくさい程度で投げ出すほど柔でないが、問題は時間であった。

今日中――日が落ちきるまでに終わらせねばならないのだ。


門上御影、締め切り的なものに滅茶苦茶弱い。

もうトラウマ的に弱い。ボールペンに匹敵するぐらい弱い。

「この作業にどれくらい時間がかかるか?」がたいていの場合全くわからないので締め切りがあるってだけでもう軽くパニックである。


「よいしょ、と」


そこで門上御影の考えた必殺技が「とりあえず砂時計(小)をひっくり返そう大作戦」であった。


今回の作業で使わない砂時計(小)。それで時間を計りまくる作戦である。

とにかく時間時間を短いスパンで区切りまくって目の前の作業に集中する……のが狙いだ。

上手く行ってるかどうかはわからないが。


というか。

昼食後に気がついたのだが――俺監視されてない?

窓の外の黒い鳥さんがずっとこっちを見てるんだが。


カラスとカモメを足して二で割ったような黒い鳥さんである。

飛ぶでもなく、ほぼ不動の状態でずっとこっちを見ている。


あれだろうか。

いわゆる使い魔的な物だろうか。

そうだよなあ……みんな魔法使いなんだもんなあ。

使い魔ぐらい使うよなあ……。


そんなこんなで。

監視されっぱなしの門上御影なんとか日没までに皿を洗うことに成功したのであった。


 * * * 


「上出来だな」

「ありがとうございます……」


主に気疲れでぐったりな門上御影が食堂に戻るとジャイニーブさんはもういなかった。

そのかわりにいたのは二十代後半?のイケメン二人。


一人は見たことがある。

挨拶に行ったときにいた黒いタートルネック着たフツーぽい人である。

今はタートルネックとブラックジーンズの上からプロテクターらしき物をつけているが、まあ豊葦原的に普通ぽい格好だ。

もう一人も似たような格好……ややデザインが古いか? あと右手で小さな古びた木のラウンドシールドを持っているのが特徴と言えば特徴か。

まあ、二人ともイケメンだけどな!!


ハーフっぽい……というかアジア系とヨーロッパ系の中間みたいなイケメンである。

見覚えのある方が黒の長髪に黒い目。ない方が茶の短髪に茶の目。

ない方が若干若くて軽そうである。


はて、ルーイック・トゥータ氏とはルーイック氏とトゥータ氏だったのか……?

困惑する御影に対して芝居がかった仕草で礼をしたのは黒髪の人だった。


「ふむ。なかなかどうして物語を感じさせる面構えですなあ……。ああ、申し遅れました。我輩がルーイック・トゥータ。筆名ですがどうかよろしくお願いいたしますぞ?」

「……よ、よろしくお願いいたします」


うわ、キャラ濃いな黒髪の人……。

まあ、イケメンだから許されるんだろうが……。

つーか筆名なのか……。作家、なのか。


「こやつはローグウェン・グルー。ま、我輩の使い魔ですが……ふむ」


茶髪の人ーーローグウェン氏を軽く小突いたルーイック氏はそこでぐるりと当たりを見渡した。


「地味ですな」

「はい?」

「我輩としたことがこれはぬかりましたなあ……こんな野郎だらけのむさ苦しい空間に花を添えることこそ我々召喚師の役目のはず。ここは一つ綺麗どころを召喚するとしましょうか」

「はい!?」


え、そんな理由で良いの!?

というか別に綺麗どころとかどうでもいいんだけど。

ああ、でも召喚するところとか見てみたいかも……。


ルーイック氏は文庫サイズの小さな本を取りだしパラパラとめくる。


「ふむ……まあ、ここは順当に姫騎士アリアイラ・ギーグでしょうな。イヨル殿、なにか異論は?」

「特にない。久しぶりにグルーと話せて楽しかったぐらいか」

「キャラかぶりの宿命だよな~」


カラカラとローグウェン氏は笑った。

その様子は人間にしか見えない。

というか、さして強そうにも見えない。

遊び人レベル10ぐらいの感じだ。

コスプレイヤーとして秋葉原にいても違和感ない感じである。


「ふむ。では――召喚:姫騎士」


ルーイック氏は中空に手をかざす。

その手元に光の粒子が現れて――寄り集まった光の粒子が人型を作る。

それは見る間に存在感を増していき――。


「アリアイラ・ギーグ、参上つかまつりました」


甲冑姿の女性になった。

きりりとしたポニテのお姉さんである。

使い込まれた感じのプレートメイルがいかにも強そうだ。


「おーリアちゃんおつー」

「ローグウェン・グルー……!」


そして。

アリアイラ嬢は――手にしていた大盾で。

迷うことなく――ローグウェン・グルーを殴り飛ばした。


「では皆の衆――また会おう!!」


とは。

吹っ飛ばされたローグウェン氏の台詞であるが。

というか、吹っ飛ばされたローグウェン氏、そのまま光の粒子になって消えてしまったのだが。


「では行くか」

「左様ですなあ」


かくして。

困惑する御影をよそに二人はさらりと立ち上がり――御影はその後を慌てて追いかけるのであった。

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