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うわあああああああああ!!と彼は思った

ガッキーン!!


甲高い金属音。

御影を狙った曲刀は重厚なる盾で受け止められた。


「……なんのつもりだ。ガンソン・デルル」

「いやはや、これだから若い連中は先走りすぎじゃわい……」


引いた、と言うよりは次撃の為に距離をとったというような義弟さん。

みなぎる殺気は隠しようがない。


「……少しは頭を冷やして考えい。ラギルーシャ・デボリルラ・デボリルロ・ハギシルド。お母上が泣いておるぞ」

「人間の分際で――我が母を語るな!!」


ガガガガガガガガガガガ!!

連撃、連撃、連撃!

目にも留まらぬ連撃の嵐!


「だから、頭を冷やせと行っておろうに! こやつとて狭小世界豊蘆原の神々がその名の下に送り出した存在じゃぞ!? いわば豊蘆原世界の代表! 弱いからと言って殺して良いものではあるまい!!」


ガンソン翁は一歩俺の方に下がった。

押し負けた――のだろう。

ここからでもわかる。義弟さん――ラギルーシャ君は強い。

しかし――しかし。

御影の頭を占めているのは別のことだった。


「どうだか。この程度の人材に代表を任せる神々などいるものか。足下を見られているなら――ここの厳しさを教えてやるのも一興だろう?」


ラギルーシャ君――しっぽもふもふじゃない!! もふもふじゃない!!

大事なことなので二回言った。正直五回ぐらい言いたい!!


「どうじゃろうな? 見てみよこやつの具足ーー随分良い布鎧を着ておるとは思わんか?」

「布鎧、だと……?」


もふもふじゃなければなんなのかというとまさかの――蛇である。

頭付き蛇である。鱗である。もふ度0である。

畜生! 言われて見ればリューイしっぽについてはなにも言及してなかったよ!!

うわあああああああああ!! 狐もふしっぽすげえ楽しみにしてたのに!!


「神秘のない世界の――非戦闘員。それを考えれば随分良いものを着ておるとは思わんか? ましてや彼の世界の主神は日輪というぞ?」

「…………カルルット・デルルット!!」

「ほいほい、鑑定するじゃん」


だって狐だぜ? 童話とかでもしっぽもふもふ勢の代表みたいなものじゃん!? 

しっぽでつりとかしちゃうキャラだろ!?


無論門上御影とて東京で住所不定無職する前は地方を転々としていた男。

リアルフォックスぐらいは見たことがある。

しかしそのときは遠目の上にすぐに逃げられてしまったので、いまいちもふ感を堪能することができなかったという痛恨のミス。

それだけに今回の狐もふしっぽにかける思いは普段の1.5倍である。


それが――まさかの蛇エンド。

あまりのショックに義弟さんが切りかかってきたことなど完全に頭から消えている。


「……おー結構良いものじゃん? 物理的強度、耐火性能、耐水性能、どれも下に着てるものとは比較にならなさげ?」

「ちなみにこれ用意したの豊蘆原側だからねー?」

「つまりは彼の世界の神はこの程度には評価しておるということじゃろう?」

「……これほどの弱者をか?」

「皿洗いに戦闘力は必要あるまい。他の世界の者を自らの世界の基準で測るは悪癖じゃぞ?」

「しかし――!!」


「――デボリルロ・ハギシルド様」


その瞬間――ラギルーシャは硬直した。

デボリルロ(狐神の血を引く者)ハギシルド(蛇神の血を引く者)

この世界でラギルーシャをそう呼ぶ男は一人しかいない。

義兄にして保護者――ジャイニーブ・アルデニガ・アルデニギ。


アルデニギ(誇り高き狼)様……!」

「これ以上何かあるのなら――私が相手をいたしますが?」

「――!! 申し訳ございません!!」


即座に刀を納め膝をつくラギルーシャ。

ガラン世界ではありえないことなのだが――この少年が義兄に抱く畏敬の念を知らない者など一人をのぞいてこの場にはいない。


故に。

そのたった一人こと――門上御影の脳裏に「ガラン世界しっぽもふもふの方が偉い疑惑」が鮮明に浮かび上がったのは仕方のないことである。


「いや、全然仕方なくないからね!?」


リューイのそんな叫びがむなしく響いたとか響かなかったとか。



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