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これだから日本人は止められないと彼は思った

天王寺久宇(てんのうじくう)という女性がいた。

平凡な学校を優秀な成績で卒業し、そこそこ優秀な大学に進み国家公務員試験に合格。地方都市のハローワーク職員になった女性。

享年27歳。死因交通事故。


天照大神配下のヤタガラス、くうの生前の姿である。


 * * * 


「というのが五年前のお話です」

「割と最近!?」


ビックリである。

なんだ? リューイといい神様やその眷属ってのは人間からなるのがスタンダードなのか?


「まあ、非正規職員みたいなものですよねえ……欲しいスキルを持つ人間の魂を捕まえて眷属にして、必要なくなったらまた人間の魂に戻して輪廻の輪に、みたいな」

「輪廻とか仏教じゃないか?」

「神仏習合です」


それでいいのかよ。

というか、合理化の波は神々にまで及んでいるというのか……!?


「まあ、鶏が先か卵が先かの問題ではあるんですが結構神々の動きと人間世界の動きは連動しますよ」

「マジか……」


死して非正規とかイヤすぎるだろう……!

やべえな。雇用対策はマジ必須だぜ。


「それはさておき――御影さん」

「はいなんでしょう」

「リンさんのことどうするんですか?」

「……どうしよう?」


時刻は正午。コーヒーショップでお昼であった。


 * * * 


住所不定無職というのは基本的に人の気配に敏感である、かどうかは知らないが門上御影は結構敏感な男である。

他人の気配を感じるとかなり眠りが浅くなる。

それがにゃんこでも同じである。


「とはいえメリューの皇太子を野外に放り出しておくことは出来ないですよ。向こうがいいっていっても不可です」

「だよなあ……」


そうなのである。

リューイ曰くリンは御影と一緒に暮らすのをえらく楽しみにしてるらしいのだ。

一緒にーー寝るときも一緒だと疑ってないらしいのだ。


「とりあえず絶対必要といわれたフリースのパジャマは買いましたし、ペットショップにでも行ってみますか? 店員さんならなにか良い案があるかもしれませんよ?」

「それしかないかなあ……」

「まあ、護衛という役目からしたら一緒の方がいいんでしょうが……護衛の役目が果たせるかどうか怪しいですからねえ……」


リューイ情報によると、試しに魔法を使わせたところリンは邪神の眷属ごとそこらじゅうを焼き払ったらしい。

言うまでもなく、そんなものが直撃したら御影一巻の終わりである。

魔法防御が高いと言っても服に着火したら火だるまなのだ。

対邪神戦力としてはともかく護衛として役に立つかどうかはなはだ疑問である。


「とりあえずまあ、行くだけ行ってみるか」

「それしかないですよねえ……」


そういうわけで。

ペットショップへGOである。



 * * * 


「御影さん、これどうですか?」

「ペット用のベッドか……」


手近なペットショップ――正確にはホームセンターのペットコーナー――にたどり着いた二人が見つけたのはペット用のベッドだった。

ふかふかでなかなか良い感じ。なによりこの上にリンがいたら絶対可愛いのが良いところだ。

ふかふか ON もふもふ。至高であろう。


「とりあえず、これを写真に撮ってリンさんに見てもらいましょう」

「本人の意志が一番大事だからな」


パシャパシャパシャ。


「お客様、撮影はご遠慮できますか」

「あ、すみません」


そんなハプニングはあったものの、おおむね買い物は順調に進んだ。

そして――


「お、重い……」

「五キロですからね~」


本日のメイン「米」を担いでの帰宅であった。

安めの無洗米である。


そう、ついに。

ついについについに!

念願の米が御影の住居にやってきたのだ!!


「あ、通知カード届いてますね」

「そんなものはどうでも良い!! 米だ!! 米だ!!」


わっしょい!! わっしょい!!

わっしょい!! わっしょい!!


最早、御影の脳内がお祭り騒ぎである。


「くっ! 日本人としてこの展開は否定できない!!」

「とりあえず炊くぞ!!」


わっしょい!! わっしょい!!

わっしょい!! わっしょい!!


日本人のDNAにこの祭りは刻まれていると言っても過言ではない。


「……はふう」


単純な塩むすびがここまで美味いとは……。

これだから日本人は止められない。


本日の教訓。

米には勝てない。通知カードでも勝てない。

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