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特売と割引は必須!と彼は思った


実際のところ門上御影と言う男は生まれてこの方投票にいったことののない男である。

御影が18歳の時にはまだ二十歳以上にしか選挙権がなかったし、そっから先は住所不定なので投票所入場券が届かない。


よって。

門上御影人生初投票は東京でということになりそうだった。


「……いや、それこそどうでもいいんじゃないかな?」

「なにを言ってるんですか!! 選挙権は重要な権利ですよ!!」

「いや、国政選挙とかならともかく俺東京一年しか住まないし」


そうなのである。

いかに二年もの間東京で住所不定していたとはいえ門上御影に東京に対する思い入れなどこれぱっかりもない。

ましてや異世界で荒稼ぎ?して引っ越そうというこの段階。

東京都政に期待するものなど皆無であった。


「いや、そこはどうでもいいのです。ぶっちゃけ御影さんが一票入れようが入れまいがそこまで都政に影響があるとも思えないし」

「ぶっちゃけすぎじゃないか!?」


選挙権は重要な権利じゃないのかよ!?

しかし現実は冷酷でありくうさんはクールであった。


「重要なのは『御影さん以外が投票にいかない』ことと『御影さんの思想を意図的に操作しない』ことなんですよ」

「???」

「つまりですねーー」


くういわく。

日本の選挙では投票所入場券なるものが各家庭に期日前に配られる。

これを投票所で見せて投票用紙をもらうのである、が。


「これをですね、御影さんが選挙に興味がないのを良いことにパクって適当なヤタガラスに御影さんのふりをさせて投票に行かせたんじゃないかとかいわれると面倒なんですよ」

「…………マジでそんなこと言う奴いるの?」

「天神様とか八幡様とか……いわゆる生前は国政に携わってました系の神様はけっこう言いますね」

「は~……」


なんというか。

元が人の神様とそうじゃない神様って結構温度差が激しいな。

天照様は住民票移さないのが阿漕なこととかいってるのに。

…………あれ、そうでもない?


「そうでなくともこちらが御影さんに情報規制をかけて投票先をコントロールしたと思われるのは困るんですよね。安心安全のアマテラスブランドとしては」

「まあ、天照様と政治の組み合わせって地雷しかないからな」

「今まではスマホで適宜情報収集してもらうつもりでしたけど……それがないとするとなにか情報源をこちらで用意しないといけないんですよね」


むむむと考え込むくうさん。

しかし、異世界に行こうというのに投票にはいかねばならないとは……世の中は世知辛い。

しかし、まあ世知辛いことにかけてはこの住所不定無職も負けてないのだぜ?


「ならば俺は新聞を所望するぜ!! ていうか絶対新聞!! 新聞新聞!! 主要全国紙!!」

「まさかの新聞推し!? この主要メディアに対するヘイト吹き荒れる中主要全国紙を推すその心は!?」

「チラシが入ってくるじゃん!! 特売と割引は必須!」

「そこですか!!」


くうは呆れてるけどそこは重要だろう!?

むしろそれ以外何があるというのか。……ああ、契約するときになんか貰えるんだっけ?


「まあ、新聞にするなら政党機関紙とかはありえないんで確実に主要全国紙ですが……」

「あと寒いときにくしゃくしゃにして服の下に入れるとあったかいし」

「……………御影さん」


なぜくうは哀れむような目で俺を見ているのだろうか?

新聞をくしゃくしゃにすると暖かいとか住所不定的には基本スキルなんだが。


「いや、でも選挙放送してる時間帯に俺がこっちいるとは限らない以上TVとか買ったら録画機器も必須なんだぜ?」

「そこなんですよねえ……。ただ、新聞も新聞で各社ごとに政治的カラーがありまして……」


むむむな二人である。

しかし、ここで悩んでいても仕方ない。


「……まあ、これに関しては持ち帰りましょう。最悪天照権限で決めてもらいます」

「便利だな天照権限」

「いや、もうごねまくりですよ……」


どんよりなくうである。

すさまじきものは宮仕えということか。


「とにかく明日は買い物なんでそのつもりで」

「ラジャりまー」


まあ、なんというか。

そういうことになった。

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