ならば仕方ないと彼は思った
「御影君」
5月14日。邪神討伐から5日後。
神妙な面持ちでリューイは言った。
「――君には宝くじに当たってもらう」
門上御影。ついにホームレス脱出の一歩を踏み出した。
* * *
まあ、結局。
それが一番「大金を渡す手段」としては丸いのだそうだ。
そりゃそうだ。贈与税とか所得税とかめんどくさい。
最悪国税局や警視庁まで動きかねない。
その点、宝くじなら誰が当たっていようとも不思議ではないので面倒が少ない。
運さえよければ誰だって当たるからな。アレ。
問題は御影にそんな運がないことだが――
「確率操作は神々の十八番だからね。そこは気にしなくていい」
「神の見えざる手ってやつか」
「そゆことそゆこと」
まあ、至高の太陽神天照大神がついているんだ。そこはどうとでもなるというものである。
「あと、仕事と住処も用意してくれてるって。新宿の1DKを5年分用意したってさ」
「……なにその大豪邸」
「君の大豪邸基準どうなってんの!?」
いや、だって新宿だぞ? 東京だぞ? 月10万は下らないんじゃないか? むしろ20万もありうる……。
「……部屋二つってどこまでケチじゃん。100部屋ぐらいあってもいいじゃん」
「いや、掃除出来ねえから!」
参戦したカルルットさんに秒速で突っ込む。
この人もこの人で感覚がおかしい。
「まあ、カルルット君のいうことももっともだけどこれには理由があってね」
「もっともなのかよ……」
あれ、おかしいのは俺の感覚?
いや、でも新宿だぞ?
混乱を極める御影をほっといてリューイは続ける。
「地脈を利用して御影君と邪神の縁を浄化するんだってさ」
「うーん、それなら仕方ないじゃん……」
「いや、説明を。説明をくださいマジで」
門上御影。大混乱であった。
* * *
つまりは。
御影が今お世話になっている建物、その持ち主であるNPOに就職することになったということらしい。
で、その社員寮の一室がくだんの1DKとのことだった。
「なんかそもそもは夫婦用の部屋らしいんだけど地脈の関係でそこが良いらしいね」
「いや、でも正社員にしなくとも……」
「確実に5年いてもらうためには仕方ないってさ。下手に期限を切って更新を渋られても困るんじゃない?」
「さすがに太陽神じゃん? いい地脈を押さえてるじゃん?」
うーん。地脈、地脈ね。よくわからん。
が、まあ手軽にほいと動かせるようなものでもないのだろう。
天照様は明らかに空の神様だし。
うーん。ならば仕方ないのか。正直、下手に逆らってヤバいことが起こるのは困る。
正直、分不相応な気もしないではないし、贅沢は嫌いなのだが、こと神秘の領域にには門外漢な御影である。
反論しようにもとっかかりすらなかった。
かくして。
門上御影、5年限定でホームレス脱出である。
「あ、あと家具家電は一通り設置してあるってさ」
「怖えよ!! 最早恐怖でしかねえよ!!」
……小市民、門上御影。
前途は多難である。




