人魚王子田村
人魚姫は、
溺れた王子さまを助けたが、
その時に一目惚れなどをし、
長老に
そのへん、
なんとかうまいことなんねーかな?
と、相談に行った。
長老は薬を出して言った。
「これ飲んだらヒレが足になってさー、
あたかも人間のごとしだよ。
ただねー、一歩歩くごとに
すっごい激痛はしるから。
あとね、これ飲んだら
もう人魚には戻れないから。」
人魚姫は薬を受け取った。
王子さまは、
溺れた際に人魚姫に助けられたのだが、
その時に一目惚れなどをし、
城の神官などに
そのへん、
なんとかうまいことなんねーかな?
と、相談に行った。
神官長は薬を出して言った。
「これ飲んだら魚になるんですけどねー、
半分飲んだら人魚的なものになるんではないかな。
ただねー、試したことないから
どのくらい飲んだらどうなるかは
わっかんないんですよ、これが。
あとね、魚になったら
元には戻れませんから。。」
王子さまは薬を受け取った。
田村くんは、
恋人募集中だったが、
まったく出会いがなく、
先輩に
そのへん、
なんとかうまいことなんねーすか?
と、相談に行った。
先輩は酒をすすめ、こう言った。
すでに出来上がっていらした。
「とりあえず酒飲んだらいい気分になってさー、
あたかも楽園のごとしだよ。
ただねー、さめて冷静になったら
すっごい虚しくなるときあるから。
まあね、田宮自身が変わることが
恋人づくりの近道だと思うよ。」
田村くんは酒の入ったグラスを受け取って
それを一息に飲み干すと
つぶやいた。
「俺、田宮じゃねえっす、
田村っす。」
田村くんはさておき、
人魚姫も王子さまも薬を飲むことにした。
人魚姫は
薬を口に含んだとき、
その味の爽やかさに驚いた。
一気に飲み干す人魚姫。
見る間にヒレは足となり、
ウロコは消え、
すっかり人間の姿になった。
確かに足に激痛ははしるものの、
これくらい王子さまに会えることを思えば
どうってことはない、
と思った。
人魚姫は駆け出した。
愛しの王子さまのもとへ。
王子さまは
薬を口に含んだとき、
その味のあまりの苦さに悶絶した。
しかも、勢いあまって全部飲んでしまった王子さま。
見る間に手足はヒレとなり、
体はウロコで覆われ、
perfect fish styleになった。
100%魚。
地上だからエラが乾いて息苦しい。
でも、これくらい人魚姫に会えることを思えば
どうってことはない、
と無理矢理思いこんだ。
王子さまはぴちぴちと跳ねながら進んだ。
人魚姫のところに行く前に、
まずは庭の池を目指して。
その頃、田村くんは
酔い潰れて寝ていた。
月明かりに照らされた
城の庭、池のほとりで
人魚姫と王子さまは再会をはたす。
姿は変わっていたけれど、
二人は一目でお互いを認識しあい、
その変化から
相手がいかに自分のことを思ってくれていたのかを悟った。
言葉はいらなかった。
二人は手とヒレを取り合い、
熱い口付けをかわした。
生臭かった。
時が流れ、
二人は二人の子宝に恵まれていた。
お姉ちゃんの方は
上半身はお母さん似、
下半身はお父さん似だった。
弟は
上半身は昔のお父さん似、
下半身は昔のお母さん似だった。
早く言えば
二人とも人魚だった。
「交ざり方がよかったっすね。
上半身が魚、下半身が人間、
じゃなくてよかったっす。
そういう子は魚人と呼ばれて、
水の外では息苦しいのに
泳ぎが苦手なんすよ。
なかなか不憫なもんす。」
掛り付け医師の田村先生(独身)は
そう話す。
人間になった人魚姫も
魚になった王子さまも、
このまま時が止まればいいのに、
と思うくらい
一家四人で毎日幸せだった。
対して、田村先生は、
俺に恋人ができる時まで、
時間が早く流れちゃくんねーかな、
と毎日毎日、
思っている。