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PH-093 親父の残った世界?


 この世界で見つけた時空間ゲートから、南東1km程の場所でアルゴが停止した。

 望遠レンズに捕えられたゲートの鏡面は小波が立っているように見える。それは、俺達の潜るゲートと同じなんだが、その鏡面にやはり色が付いているように思えるな。蒼く色付いて見えるのだ。ちょっといた高さの砂丘の上から見下ろす形でゲートを見ているのだから、鏡面には砂地の色になるはずだ。やはり俺達の科学力で作り上げた時空間ゲートとは少し性質が異なるのかも知れないな。


 補給の済んだ無人機が周囲を監視しているし、多機能センサーで周囲300mに中型生物がいないことも分かっている。

 そろそろ初めても良さそうだ。


「リネア、周辺監視をサリーに任せて、無人機をゲートに向かわせてくれ。速度は秒速10mで良いだろう。ゲート突入時は秒速2mまでに減速。5秒後に帰還のプログラムはだいじょうぶだな?」

「だいじょうぶにゃ。それじゃ、初めるにゃ!」


 3人とも無人機の撮影画像を開いている。

 無人機が地上2m程の高さを、アルゴ程の速度で時空間ゲートに近付いて行く。

 向こうの世界には、何があるんだろう? 緊張した時間が過ぎていく。


 やがて、減速した無人機がゆっくりとゲートの鏡面に吸い込まれていくと、俺達は、瞬きも忘れて仮想スクリーンを眺めた。


「見えないにゃ!」

「やはり、一旦電波が届かなくなってしまうようだな……」

 俺の言葉は途中で止まった。ゲートの鏡面からゆっくりと無人機が姿を現したのだ。


「リネア、急いで回収だ。格納庫に収容したらロックをしといてくれ。そして、情報をアルゴの電脳に転送しておくんだ」

「了解にゃ。データ転送はすでに終わってるにゃ」


 俺達は、電脳のライブラリにアクセスして無人機の撮った映像を眺めることにした。

 時間は5秒。スローで再生してその映像をじっくりと眺める。

 苔むした石柱が数本、崩れた石壁に石畳の床は壁や柱の残材が転がっている。空は抜けるような青空だ。


「神殿?」

「正確には神殿の廃墟ってところだろうな。周囲300mに中型生物はいないようだ」


 さて、残り1機も使ってみるか。

 リネアに自動帰還プログラムを組んでもらう。

 今度は、時空間ゲートを通り抜けて、高度2千mまで上昇。半径50kmを旋回して、再度戻って来る事になる。

 

「撮影は通常画像と赤外線画像の2つで映す。それが終了したところで、川に向かうぞ。お土産が無ければレブナン博士に怒られそうだ」


 直ぐに、2機目がゲートを潜る。自動採取の機能を持たないから、俺達にできるのはここまでだろう。

 周囲を気にしながら1時間程待っていると、無人機がゲートから出現してアルゴの屋根にある格納庫に戻ってきた。

 ロックして、いよいよ俺達の帰還準備に取り掛かる。

 

 すでに昼時を過ぎている。

 エリーの運転するアルゴは1時間も掛からずに川べりに出た。

 水辺の草と岸辺の草をアナライザーで確認しながらシリンダーに入れる。一致率葉30%以下だから、新種があるかも知れないな。

 シリンダーすべてに標本を入れたところで、エリーが砦への時空間ゲートを開いた。

 周囲の生物を確認しながら、ゆっくりとゲートを潜り抜ける。


 砦に戻ってきた俺達は何時ものように樹脂製のグリーンハウスの中だ。

 直ぐに、シャワーでアルゴの洗浄が始まる。20分程機体が洗われ、ハッチに樹脂製のトンネルが接続され、タラップが機体に接続された。


「ハッチからトンネルを抜けるように連絡があったにゃ!」

「機体から外に出てないから、直ぐに出られるな。荷物を持って外に出るぞ!」


 ハッチを出ると、樹脂製の壁を通してレブナン博士とレミ姉さんの姿が見える。俺達がハッチから出たのを見て、トンネルの出口に歩いて行く。


「とんでもない発見ね。早速、見せて貰いたいわ」

 レブナン博士が俺の腕を取って、ゲート区域に付属する会議室に足早に向かう。ともすれば腕を引っ張られる感じだ。

 まあ、別の文明で作られた時空間ゲートは誰でも興味があるに違いないけどね。


 会議室のテーブル越しに俺達が座ると、オペレーターがコーヒーセットを持ってきてくれた。3つジュースのグラスがあるのはエリー達の分だろうな。

 レミ姉さんがオペレーターに小さく頷くと、オペレーターが会議室を出る。素早く、レブナン博士が席を立つと、会議室をロックした。

 そんな光景を目を丸くしてリネア達が見ているぞ。


「さて、話して頂戴。包み隠さずお願いするわ」

「行った先でゲートを見付けたのは、連絡しましたよね。そのゲートに2度、無人機を自動で突入させました……」


 タバコを楽しみながら、ゲート発見からの経緯を2人に話した。

 2機の無人機の画像を壁に大きく仮想スクリーンを展開して皆で眺める。最初の画像は向こうで見たけど、2回目はまだ見ていないからな。


「神殿の廃墟と言う感じに見えるわね。周囲に足跡も無いから誰も訪ねる者がいないのかしら?」

「周囲50kmに集落もありません。かつて栄えた文明の遺物と言うところでしょうか?」


 確かに、2回目の無人機が撮影した画像には、そんな光景が映し出されている。

 かつてはかなり大きな神殿だったようだ。少なくとも1km四方はありそうだ。それが、現在では森に埋もれようとしている。

 神殿の後ろには巨大な岩山があり、小さな小川も確認できた。たぶん神殿の中を流れていたに違いないな。


「それにしても、神殿を中心として30km以内に小さな獣すらいないのは不自然です。それも円形に囲まれているのは、いまだに結界が生きているということでしょうか?」

「そうね。その周辺にはかなりの数が分布しているわ。その原因も調べて見たくなるわね」

「一応、私達で神殿の地図を作ってみるわ。バンター君には5年後の同じ世界に行って貰いたいけど……」

「ならば、無人機でサンプルを持ち帰るプログラムを組んでくれませんか? それに大気成分も必要でしょう。5年後に時空間ゲートが存在するなら、俺とエリーで潜ってみます」


 直径2m程の時空間ゲートだ。オートバイのような乗り物なら2人で容易に潜れるんじゃないか? それに乗り物を使えば2人で運べる品物も増やせるに違いない。


「検討する価値はあるわね。なら、5年後のゲートの確認と、向こうの世界の情報収集はアルビン達にお願いするわ。バンター君は向こうの世界の調査を計画してくれない?」


 俺より先にエリーが頷いてるぞ。

 まあ、言い出した以上はやるしかないが、ネリア達も連れていくことになりそうだな。

少し乗り物を考えないといけなくなってしまった。

これで、会議は終了だ。

 レミ姉さん達に頭を下げると、会議室のロックを外してヤグートⅢに向かう。

 

 テーブル席に着いたところで、エリー達がどこからかお菓子のカゴを持ってきた。サリーがお茶のカップを4つ持ってくる。

 これから、未知の世界に出掛ける準備を話合わなけりゃならないから、その準備だろうけど、夕食も近いんだよな。


「どんな乗り物で行くの? あの大きさじゃ車庫の4輪駆動車がぎりぎりだよ」

「あれの小型版がある筈だ。先ずはそれを探してくれ。4人乗れて、後ろに小さな荷台があれば十分だ」


 エリー達が選んだのは、4輪駆動車の小型版だ。横幅は1.5m、長さは4m。高さは1.8mだが、タイヤは4輪駆動車と同じサイズだぞ。4人乗りだと、あまり荷物は積めないが、小さな牽引車を引っ張るらしい。200kgは乗せられるみたいだな。


「これに何を乗せるの?」

「俺達4人は車で良いだろうけど、予備の食料や宿泊用具、それに無人機を1機ってところだろうな。食料や水は5日分だ。魔法の袋にも予備の食料と水筒を入れるんだぞ」


 銃弾は言わなくてもたっぷり用意してくれるに違いない。

 後は出発するだけだな。向こうで植物を採取して運ぶための小型シリンダーはナップザックで持っていこう。

 

 数日過ぎたところで、夜間の集まりの後で俺とアルビンさん、それに姉貴とレブナン博士が残った。

 4人が顔を見合わせて席を立つ。向かう先は会議室だ。

 部屋に入ると、姉さんがしっかりと扉をロックする。

 テーブルに着くと、直ぐにアルビンさんの状況報告が始まった。


「確かに、時空間ゲートと思われます。向こうに飛び立った無人機の電波信号が、時空変調されたことを確認しました。標本はすでにラボに渡っています」

「確認したわ。ライブラリーとの一致率99%。この数字をどう思う?」


 そんなバカな! と言う感じでアルビンさんがレブナン博士を睨んでるぞ。

 だが、それだと俺達が暮らしていた世界って事になってしまう。あれだけの遺跡だ。もしそんな遺跡が俺達の世界にあったら観光客で賑わってるんじゃないか?


「でも、その標本を私達にもたらしたのはシスター達なのよ。ティーゲルが欠けた状態でね」

「シスターの旦那様が命がけで3人を逃がした世界って事ですか?」

「同じ世界なのか、似た世界なのかは分からないけど……」


「このことはシスター達に?」

「まだ秘密よ。でないと直ぐにでも飛び込みかねないわ。ある程度分かってからでも十分だと思うわ。それにいつの時代化がまるで分からないしね」


 続いて、神殿の地図が映し出された。どうやら雛壇式の神殿らしい。時空間ゲートがご神体かと思ったが、ゲートの奥に更に神殿が続いている。どうやら岸壁にくりぬかれた奥にも何かあるようだな。


「小型車両で、ゲート前の広場に飛び出すことになるわ。あまり速度を上げるとこの石段の下の広場まで落ちてしまうわよ」

 エリーにしっかりと教えておこう。それにはこの地図をダウンロードしなければならないな。


「ダウンロードできますか?」

 俺の言葉に、レブナン博士がクリスタルを渡してくれた。その他にも色々と情報がありそうだな。これは一度皆で見ておかねばなるまい。

 

「出発は、明後日の10時にしましょう。向こうの気温湿度ともに初夏の状態よ。標高がありそうだから夜は冷えそうね。その辺りも注意した方が良さそうだわ」

「了解です。明後日の10時ですね」


 シスターの旦那さんは俺の親父にあたるんだよな。

 上手く時代が合えば良いんだけどね。



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