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PH-071 まだまだやって来る!


 奴らは南のデ・ラブートと連携しようとしているのだろうか?

 ゴレムさん達の持つ銃の射程距離は50m程度だろう。村の柵から200m程の距離を保って動きを止めた。


「やな雰囲気にゃ。これだけ集まって、攻めてこないのは初めてにゃ!」

「俺も聞いたことが無い。何かあるのだろうか?」


 メディさん達はこの光景を異質と考えているようだ。確かにラプトルの頭が良いとはいえ、他の恐竜と連携を取るようなことは無いだろう。たまたま連携を取っているように見えるだけなのか?


ドオォォーン!

 変わった銃声が聞こえてきた。

 50口径の銃なんだろう。トメルグさんの持っていた単発のライフルかも知れないな。


「来るにゃ!」

「エリー、頼んだぞ。リノア、後ろから援護だ。サリーネは後ろの木箱の後ろから顔を出したラブートを撃て!」


 メディさんもサリーネのところに行って、クロスボウに矢をつがえる。

 柵には俺達銃を持った4人が銃を狭間に押し付けるようにして保持した。トラ族のラザミーさんは短い槍を持って箱の近くで待機している。

 たぶんカレンさん達も東の柵に取り付いているんだろう。となれば……。


「エリー、左に移動してくれ。なるべく左方向に弾幕を張ってくれ」

「だよね。柵を越えられたら困るもの!」

 直ぐに左の狭間に移動する。ベルトに数本のマガジンを刺してるぞ。あれだけで150発はありそうだ。


「もうすぐ、射程距離だ。まだ撃たんのか?」

「堀の手前で一斉に撃つ! 外れることはあるまい」


 そんな事を言っている内にラプトルの群れは、掘りに達した。その場で躊躇したところを逃さずに指示を出す。


「いまだ、撃て!」

4つの銃が一斉に火を放つ。

1頭ずつ確実にスラッグ弾を撃ちこんでいくと、エリーは左方向に連射して行く。数秒で銃弾が切れると、その場でしゃがみ込んでマガジンを交換し、再度射撃を繰り返していく。

 ゴレムさん達は1発ごとに、一旦下がって火薬を詰めなおしている。面倒だが、前装式である以上仕方がない。それでも1発ごとに確実にラブートを倒している。

 全弾撃ち尽くしたところで、俺も後ろに下がってショットガンのチューブマガジンに急いで給弾する。

 まったくとんでもない数だ。すでに柵のすぐ下までやってきてるぞ。

 一旦後ろに下がったゴレムさんが爆裂球を柵の直ぐ近くに放り投げた。

 ドォン! と重い爆発音がすると、さっきまで狭間近くまで飛び上がっていたラブート達の姿が見えなくなった。


 数分間の銃撃が突然終わる。銃が過熱してきたのだ。少し冷やさねば再び使用できなくなる。

「しばらくは剣で戦うぞ」

「俺達は予備の銃を使います!」


 俺とエリーがリボルバーを腰から抜いて構えた。

 後ろではメディさんやリノアが、ラブートが狭間から顔を出すのを待ってるに違いない。


 柵の近くにゴレムさんとラザミーさんが立つ。たまに飛び上がって銃眼付近まで頭が上がって来るから、それをゴレムさん達が斬りつけている。

 5mもある柵を越えられないだろうとエリーと話していたら、メディさんが訂正してくれた。

 仲間を足場にして更に高く飛ぶことを知っているらしい。

 銃眼から顔を出すラブートも段々と体まで見えてきている。不思議に思っていたのだがそう言う理由だったのか。


「エリー、そろそろ銃で行くぞ! MP-6で柵の並びに銃撃してくれ」

「了解!」

 

 ラザミーさんが後ろに下がり、メディさんが前に来る。再び4つの銃が火を噴き始めた。

 ラザミーさんが柵に近付くと爆裂球を近くに投げる。こんな戦いでは、爆裂球は銃よりも効果的だな。

 後ろに下がって銃弾を補給していると、見知らぬハンターが桶に入れた爆裂球と弾丸を持ってきてくれた。紙製のカートリッジまで入っているぞ。

 いよいよ佳境って事かな。


「北門のハンターの半数を東の柵に向けたそうだ。南門は門の一部が破壊されたが、ゴラン殿とレイ殿がデ・ラブートを1頭たりとも広場から通りに向かわせねえ。もう少しだ頑張ってくれよ」

「だいじょうぶだ。ここは何とかなる!」


 俺の言葉に頷いた男が急いでハシゴを下りて行った。彼が向かうのはカレンさんのところだろうな。

 マガジン3個を使い切ったエリーが後ろに下がると、リノアが前に出て来る。エリーが拳銃に銃弾を補給する合間をカバーする気なんだろうか?

 たまに銃眼までラブートが上がってくるから、近付かないように手で制して、胸のストラップに付けた手榴弾を柵の向こうに投げた。


「銃眼には近づくな。顔を出したら撃てば良い」

 リノアが俺の言葉に頷くと、エリーと場所を変える。

「後、5本だよ。全弾撃ち尽くして銃を替えるね」

 エリーが柵に沿って銃撃をマガジン毎に繰り返す。5本使ったところで後ろに下がったから、今度はAK60を使うんだろう。


「減ってきたように思えるが……」

 銃にカートリッジを棒で詰め込んでいたゴレムさんが呟いた。

 あまり顔を出さなくなってきたからな。確かにそう感じる。


「東の柵から南に向かってる。南門のデ・ラブートも下がってるよ」

 エリーの言葉に俺達はホッと息を吐いた。

 どうにか凌いだのかな。問題はこの後になるんだろうけど……。


 やがてすべてのラブートが柵から離れていった。メディさん達に見張りを任せて、俺達は一旦櫓を下りる。すでに東の空は明るくなってきた。

 焚き火に焚き木を加えて、お茶を沸かす。柵はどこも破られなかったようだが、南門の一部が破壊されて10頭近くのデ・ラブートが広場に侵入したらしい。

 ゴランさん達が全て葬ったらしいけど、ちょっと危なかったようだな。


 お茶を飲みながら一服していると朝食が運ばれてきた。簡単なサンドイッチだが、朝食だからな。

 エリー達は素早く食べ終えると、メディさんと見張りの交替に櫓を上って行った。


「何とか凌いだが、お前達の持つ銃に助けられたようなものだ」

「柵に沿ってたくさん死んでるにゃ。あのダダダって銃にやられたにゃ」

「威力はあまりないんですが、大量にばら撒けるんで夕べの状況では助かりました。ですが銃弾を使い切ってます。今度はそうも行きません」


「残念にゃ。でも、カートリッジがたくさん届いてるから何とかなるにゃ」

「無くなればこれを使う。100年前はそうだったらしい。昔できたのだから、今も出来ぬことはない」


 やはり最後は剣での戦いになるんだろうな。トメルグさんに貰った刀を振るう事になるんだろうか?

 後ろをエリー達に守って貰えば何とかなるかも知れないな。


「昔は、【呪文】も使ったにゃ。夕べは誰も使わなかったにゃ。でも持ってるなら、使わなきゃ損にゃ!」

「だな。俺達も一応持ってはいる。だが、トラ族やネコ族の【呪文】の使用回数は少ないのだ。数回ならば、こちらを優先することになるな」


 昨夜の差し入れで、カートリッジを数個手に入れたようだ。火薬と弾丸の袋もあったらしいから10発以上は使えるって事だろう。【呪文】を最後の手段として残しておいたのかも知れないな。


誰かが足早にやって来る。

「バンターはいるか? ギルドでゴラン殿が呼んでいる。至急来てほしい」

 そう言い残して、今度は柵に沿って北に向かった。


「行って来い。状況が分かるかも知れん」

「エリー、後を頼んだぞ」

 そう言って、通りに向かって歩き出した。一旦、南門の広場に向かい状況を見ておく。確かに門の片方の蝶番が外れて傾いている。数人のハンターが修理をしているようだ。広場の至る所が黒くなっているのはデ・ラブートの血を吸ったためだろう。荷車が通りを塞ぐ形で数台倒されている。あの前でゴランさん達が働いたという事だろうか?


 通りを歩いてギルドの扉を開けると10人程の男女が椅子やベンチで輪を作って座っていた。


「やって来たな。こっちだ」

 俺を目ざとく見つけたゴランさんが手招きしている。

 椅子に座ったところで、再びギルドの扉が開いてカレンさんが入って来た。俺とカレンさんの場所は、ゴランさんの真向いだ。ゴランさんの隣にはトメルグさんが座っている。


「これで、全部だな。夕べは良くやってくれた。幸い負傷者もいなかったようだ。今朝の状況だが、これを見てくれ」

 レイさんが俺達の輪に入り込んで大きな紙を床に広げる。手元の紙を見ながら、小石をあちこちに置いていった。

 地図だな。小石はラブート達の位置を示しているのだろう。

 手槍を片手に、ゴランさんが状況を話し始めた。


「村を取り巻くダイノスの位置だ。1K(2km)以内に200を超えている。更に後方に300が近づいている。このダイノスの後ろにはもういないらしい。東の砦には優秀な使い魔使いがいるらしいから、この状況は信用できるだろう」


 合計500……。誰も絶句した状況だな。


「南で壊滅した村や町はもっと多かったのかも知れんな。だが、これを凌げばこの村は何とかなるだろう。そこでだ……」


 ゴランさんの作戦が俺達に披露される。

 南門の外側に柵を作り南門に入るダイノスを限定し、俺とトメルグさんの乗って来た高機動車の50口径機関銃でなぎ倒すというものだ。

 確かに有効だが、問題は銃弾の数だよな。120発だから、全て個別に当たったとしても半数に満たないぞ。それにそんなに当たるものじゃない。50頭も倒せれば良いところだ。


「問題はその後だ。我らの銃は連射ができて強力な弾丸を撃てるが、球数は少ない。我らが撃ち尽くしたら、直ぐに門を塞ぐのだ。だが、扉を閉めるのではなく、荷車に乗せた柵を門に移動する。連中は飛び道具は持っていないからな。柵の隙間から銃撃でも、槍で突いても有効だ」


 となると、かなり頑丈に作らねばなるまい。すでに作っているんだろうか?


「北はトネリに任せる。ハンター10人で何とかしてくれ。残りは南門と東西の柵に張り付けるぞ。門の正面は、バンターとトメルグ殿に任せる。俺は、門の直ぐ横で柵を乗せた荷車を指揮する。カレンはバンターの代わりに東の角を守ってくれ。以上だ。何か変化があれば村の少年を知らせに走らせる」


 ここまで来たら、後はゴランさんの指揮に従うほかにないって感じだな。皆、ゴランさんに大きく頷くことで了解を示している。

 カウンターから、ミゼルさんが大きなカゴを持って俺達のところにやって来ると、各パーティの代表にカートリッジを配っている。俺も10発貰ったけど、これはメディさんに渡しておこう。



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