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PH-069 ラプトルの群れ


 丸太運びをしばらく続ける事になるのかと思っていたが、4日目に別命を受けてしまった。大量のヒラデルをトメルグさんが受注したらしい。

 この世界の傷薬として使用される薬草だが、球根を100個単位で採取してくれとのことだ。

 ヒラデルの球根は通常価格が1Cなのだが、100個で120Cならば少しやる気が出るな。


「南の地方が恐竜に襲われたらしいわ。村の南にある町も厳戒態勢ってことらしいから、薬草採取ができる村が限られているらしいの。村も万が一を考えてレベルの高いハンターを用意したいらしいけど、薬草採取をするハンターの多くが低レベルだから、村の周囲に限ってるらしいの」


 そんな話をレミ姉さんがしてくれたけど、確かに俺達なら適任だな。丸太運びを1パーティにして2つのパーティでヒラデルを探せば1日で200個以上確保できるんじゃないか?

 

 俺達とアルビンさんが任を受けて、小川の西側の草原で薬草を探し始める。

 アナライザーとバングルのライブラリーを使えば、次々と薬草が見つかる。エリーを車に残して、俺と猫族の姉妹の3人で球根を掘り出してカゴに入れる。


 2時間程作業したところで、一休み。砦から持ってきたポットからお茶をカップに注いでタバコに火を点ける。

 村の柵の近くで薬草を採取しているハンターが何組か見える。

 果たして、どれぐらい採取できるのだろう。村の近くは春先に、村人が一度採取しているからそれ程多くは採れないんじゃないかな。

 

「30km程南東にラプトルの群れがいるみたい。ゆっくり北に移動してると言ってるけど……」

「まだ、避難する必要はないだろうな。5km以内になったら、砦か村に避難しよう」


 エリーが砦からの通信を教えてくれたけど、もう一仕事はできそうだ。問題はラプトルの数なんだが、数十を超える群れらしい。いったい何を追いかけて来たんだろうな。

「ハドロサウルスの群れを狙ってるみたい。500m程先を数頭が北に向かってる」

「ハドロサウルスなら草食性か……。それ程大きくはないな。群れから離されたって感じかな?」


 エリーが展開した仮想スクリーンの画像を覗き込んで呟いた。

 砦の方でも無人機で群れを監視しているようだ。とはいえ、ラプトルの足早いからな。午後は俺とサリーネで採取しよう。


 エリーとリネアが周辺監視をしている中、俺がアナライザーでヒラデルを探すと次々とサリーネが球根を掘り出している。

 雑に採取しているわけではなく、手際が良いのだ。俺が掘るよりも格段に早いぞ。

 ほとんど、見つけたヒラデルの傍にピンを刺すことも無く作業が進んでいる。

 

 1時間程経過したところで、お弁当のサンドイッチを頂く。

 恐竜と俺達の距離は10kmを切っているらしいが、今のところラプトルの注意はハドロサウルスに向けられているらしい。


「1時間に5km程の割合で砦の方向に近付いてるみたい。このままだと、2時間もすれば砦に到達するよ」

 どうやら、ラプトルの群れに気がつたみたいだな。林の方に移動方向を変えている。


「アルビンさんがやって来たにゃ!」

 仮想スクリーンを眺めながら考え込んでいると、サリーネが腕を伸ばして教えてくれた。俺達がその方向に顔を向ける間もなく、俺達の車の傍に6輪駆動車が停車した。


「バンター! 俺達の採取した球根も持って行ってくれ。村はトメルグ爺さん達だけだろう。砦は俺達が向かう」

 そう言って、布袋を俺達の4輪駆動車の荷台に積みかえはじめた。


「やはり、やって来るみたいですね」

「このコースなら間違いないな。ラプトルの数が多いから柵を越えられると厄介だ」

「分かりました。俺達は村に向かいます」


 直ぐに、エリーが車を村へと走らせ始めた。時間的には1時間以上余裕があるが、ラプトルの全力疾走なら20分も掛からないだろう。

 リネアが砦の警備本部と村のトメルグさんに連絡を入れる。

 村の防衛準備はトメルグさんに任せておけば良い。

 途中で薬草を採取している人間族の男女を拾って荷台に乗せる。村から3kmも離れていては、ラプトルの良い獲物になってしまいそうだ。


 4輪駆動車の速度に驚いてはいるが、しっかりと後部座席を掴んでいるから落ちることは無いだろうな。エリーも少し速度を落としているようだ。

 北門に飛び込むように車を乗り入れると、門番にラブートの接近を知らせておく。まだ距離はありそうだが、準備が肝心だからな。


 エリーはシスター達に会おうと、小屋をノックしたが返事は無いようだ。すでにギルドに向かったのかも知れないな。

 車の荷台から球根を入れた袋を皆で持って、ギルドに向かう。途中で拾ってきたハンター達はとっくにギルドへ向かったようだ。


大きな袋を肩に背負った俺と、カゴに入れた袋をエリー達が持ってギルドに入って来ると、ホールに集まった連中が一斉に俺達に顔を向ける。

カウンターに袋をどさりと下ろすと、3人が運んできたカゴもカウンターの上に持ち上げた。


「依頼のヒラデルです。確認してください」

「凄い数にゃ! 急いでやるにゃ」


 ミゼルさんがカウンターにカゴを乗せると、袋から球根を取り出して数えはじめた。ここはエリー達に任せておこう。俺は、ホールのテーブル席で手招きしている、トメルグさんのところに向かった。


「まあ、座るが良い。……で、どうなんだ?」

「砦はラブートが囲むのではと思っています。頭が良いですからね。3日程はその状態が続くのではと」

「となると、東の草原は危険だな。西の畑は……」

「遠くは無理だ。近くなら可能だろうが、数日は見合わせるべきだな」


 トメルグさん達とテーブルを挟んでいるのはゴランさん達だ。トメルグさんの知らせで、ここにいるのだろう。

「バンター達にも手伝って欲しいのだが?」

「今戻るのは危険ですから、3日はこの村に厄介になるつもりです。その期間という事であれば」

「ああ、それで良い。ならば、北はトメルグ殿とトネリ達で良いか? 俺達とバンターで南を守る。カレン、ハンターを3つに分けて、北と南に振り分けろ。残ったハンターとお前達で村を巡回するのだ。柵を越えるラブートがおるやもしれん」


 ゴランさんの言葉に、奥の方からカレンさんが立ち上がって、ハンターのパーティを区分けし始めた。

 ゴランさんは、この村にやって来ると考えて対処しているようだな。

 本当に来るかは、微妙なところだろうけど、あらかじめ対処しておくなら慌てずに済むだろう。

 

「確認したラブートの群れは数十です。村も危険なのですか?」

「南の町から、タニアの群れの知らせも受けている。南方で何があったかは分からないが、かなりの数のダイノスが北に向かっているらしい」

 俺の言葉に、ゴランさんが答えてくれた。たぶんギルドか、商人達の情報なんだろうけど、少し気になる話だな。


「砦にその話は伝えてあります。南の町までの2倍の距離までは何とか調べられると言ってましたよ」

「使い魔で、その距離は驚きだが、うわさを確認するには十分だ。それまでは、村の外に出るわけにはいかぬな」


「ハンターの区分けを終えました。ゴラン殿」

「よし。トメルグ殿、北を頼むぞ。トネリもハンター達のまとめをよろしくな。カレン達は、ギルドで待機だ。俺達は南に行く。バンター、お前達も一緒だ」


 いつの間にか、エリー達が俺の後ろに立っていた。ゴランさん達が席を立ったところで俺達も他のハンター達と一緒にゴランさんの後ろを付いて行く。


「バンターよ。南を頼むぞ」

「分かってます。トメルグさんも無理はしないでください」


 俺の言葉ににやりとトメルグさんが笑うと、俺の背中を思いっきりバシ!っと叩かれた。

「おほほ……。トメルグはね、年寄り扱いされるのを嫌うのよ」

 そんな事をシスターが呟いて俺を通り過ぎて行った。そんな事なら早く教えて欲しかったな。


「お兄ちゃん、早く!」

 ギルドの扉から顔だけ出してエリーが手を振っている。背中をさすりながらギルドを出るとエリー達を追って南門に向かった。


 南門の扉は丸太2本を横に渡して縛り付けてある。その丸太につっかえ棒をするように3本の丸太で抑えている。あれなら早々破られはしないだろう。

 広場の真ん中に焚き火を作って大きなポットを三脚で吊るしてあるから好きな時にお茶位は飲めそうだ。


「門の左右と東西の角に櫓が組んである。俺達は門の左右を守る。バンターは東の角だ。レクザム達は銃が5丁だな? 西の角を頼むぞ。メディ達はバンターと一緒だ。カルタスはレグザムと合流しろ。残りのハンターは俺達と一緒に門を守るぞ」


 門を背にゴランさんが俺達の配置を指示する。

 その指示に従って、俺達は東の角に向かってあるいて行く。東の柵は工兵隊が広げたんだったな。確かに真新しい丸太が半分以上使われている。

 村を取り巻く柵の角部分は櫓に合わせて、長尺の丸太が2本おきに使われている。これが銃眼代わりになるようだ。櫓は5m四方の平らな屋根を持つ家のような構造だ。もちろん四方に壁は無く、屋根部分に上れるようにハシゴが付いている。

 直ぐ後ろに2本の高い木があり、見張り台としても使えそうな感じだな。


「あんたがバンターにゃ?」

「ああそうだが、メディさん?」

「そうにゃ。私とケイナムにトラ族のゴレムとラザミーにゃ」

 

 ネコ族の男女とトラ族の男女の組み合わせもおもしろいな。

「俺がバンターで、上に上ってるのがエリーだ。ネコ族の姉妹は姉さんがリネアで妹の方がサリーネと言う。全員銃を持っている」

「ケイナムとゴレムが銃を持ってるにゃ。私とラザミーはクロスボウを使うにゃ」


 飛び道具を8人が持ってるなら心強い限りだ。

 櫓の真ん中に炉が付いており、5束の焚き木が横に置いてある。小さな焚き火を作ってポットを置くと、魔法の袋からシートを取り出し、横になる場所と腰を下ろす場所を確保した。

 櫓から下りてきたエリーが俺の横に座ると、サングラスを使って周囲の状況を確認し始めた。


「東の砦から来たと聞いているが、そっちはだいじょうぶなのか?」

「頑丈に作りましたし、ハンター仲間が大勢います。破られない限りだいじょうぶでしょう」


 俺の前に座ったのはトラ族のゴレムさんだ。やはり屈強な体格だな。銃を使わずにじゅうぶんラプトルを狩れそうだぞ。

 


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