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PH-067 ヤグートⅢの改修?


「ここに砦ができて助かった。昔ならば覚悟を決めたところだ」

 バクトさんの言葉に2人が頷いている。狩りのつもりが相手に狩られるのは良くある話のようだ。


「だが、いったいいくつの銃があるのだ? 一斉射撃も凄いが、かなり大型の銃もあるようだな?」

「気が付きましたか。砦の全員が銃を持っています。更に通常より大きな弾丸を撃ちだす銃も揃っています。ドルティアを3発で倒しました」


 そんな話に相槌を打っている。ゴランさんから話を聞いていたようだ。

 一緒に話をしているところに、レミ姉さんがやってきた。


「カレンさん、数日この砦で暮らしてください。今の状況では危険ですから。ダイノスの群れが離れたところで村に送ります」

「すまん。しばらく厄介になる。宿と食事もお願いしたい。代金は……」

「お代は頂きません。困ったときはお互い様です」


 確かに保護はしようと決めていたが、代金を取ろうとは考えていなかったからな。

 少し、食事が変わっているけど、そこは諦めて貰おう。

 

「その代り、砦内での立ち入り場所を制限させていただきます。宿舎となる小屋と、この集会場の1階ホール、後は車庫までにしてください。建屋は大きいですが、皆さんのような姿を初めて見る者も多いのです」

「仕方あるまい。お前達の種族だけで暮らせばそうなるのも仕方ないのだろう。ネコ族の姉妹が暮らしている事の方が驚きだが、少しずつ慣らしていくことになりそうだな」


 やはり、種族間の諍いは少しはあるようだ。だが、表面には浮かばなければそれで十分じゃないか? 人の好き好きまでは改めようがないからな。表面上は皆平等として付き合えるならそれで十分だろう。


「申し訳ありません。俺も始めて村に入った時は驚いた人間の1人です」

 そんな俺の弁明にカレンさんが笑っている。無表情な人だと最初は思っていたけど、微妙な表情をこのごろは見分けられるようになってきた。それだけこの世界になじんできたという事になるんだろうな。


「食事は1日、3回になります。バンター君、時間になったら、誘ってあげてね」

「分かりました。宿舎はあの小屋で良いんですよね」

「焚き木は箱に入ってると思うけど、案内ついでに見てくれない。井戸の場所もね」


カレンさん達が人心地着いたところで、宿舎となる小屋に案内する。柵には、まだ警備員達が張り付いているみたいだ。倒した恐竜に群がる小型恐竜がこっちに来ないか確認しているみたいだな。

 広場を横切って西に2つ並んだ小屋に着くと、扉を開けて中に案内する。

 真ん中が土間になっていて、炉が切ってある。ちょっと見た目は囲炉裏みたいだな。板の間の端に腰を掛けると丁度良い感じだ。


入口脇にある箱には焚き木が入れてあるし、その傍には真鍮製のポットと鍋が置いてあった。

 エリーに頼んで井戸で水を汲んできてもらう。その間に、炉に火を焚いておく。


「中々良い小屋だな。ここで暮らしたくなりそうだ」

「その時は、色々と仕事をして貰いますけど、獣やダイノスの狩りの依頼はありませんよ」

 俺の返事に3人が笑っている。やはり冗談だったんだな。

 

「だが、予想以上の宿舎で驚いたのは事実だ。北の砦は、見張っているハンターの宿舎でさえ土間だからな」

「短時間で組み上げましたからね。この砦は雪の期間をほとんど費やしています。それにハンター仲間が多かったのも幸いでした」


 そんな話をしていると、エリーが炉の上に天井から鎖で釣ってある鉤を使ってポットを火に掛けた。これでいつでもお茶が飲めそうだな。

 パイプを取り出して、タバコを詰める。そんな俺を見てバクトさんもパイプをとりだした。

 世間話をしながら時を過ごす。

 話題は、南からやってきた恐竜達だ。何時もの年よりも群れが濃いらしい。


「村に帰ったらゴラン殿に忠告するつもりだ。南東は危険だとな」

 どうやら、砦の南の森の事らしい。何時もはラプトル程の恐竜らしいが、今年は中型が来ているとのことだ。もっと大きいやつもこの砦まで来たんだから、やはり南での狩りは控えるべきだろうな。

 

 夕食の時間まで一緒に時を過ごし、夕食は一緒のテーブルに着く。

 エリーが連れてきたネコ族の姉妹を見て、バクトさんが驚いたような風だったが、何も言わなかった。

 夕食のシチューは俺達の世界の材料だが、村でも似た食材があるから、問題なさそうだ。パンもわざわざ村で手に入れた小麦粉を使ったようだ。

 食後のワインは、村でタルごと購入した安物だったが、特に気にせずに飲んでいたな。


「明日の朝食は届けるよ。パンに野菜とハムを挟んだだけだけどな」

「携帯食料よりも遥かにマシだ。ありがたく頂くよ」


食事が終わったところでカレンさん達と別れ、自分達の宿舎であるヤグートⅢに帰る事にした。

 戻ってみると、レミ姉さんがエリーに手伝ってもらいながら荷造りをしている。


「良いところに来てくれたわ。私の宿舎ができたみたいなの。レブナン博士達の住居と並ぶことになるけど、荷物を運んでくれると助かるわ」

「それはかまいませんけど、急ですね?」

「パーティは何時も一緒でないとね。姉妹があなた達に合流するから、私はこの砦の維持に努めるわ」


 栄転って事なんだろうな。やはり祝ってあげるべきじゃないかな? 後でエリーと相談しよう。


「バンター君達のヤグートⅢは、この場でそっくり入れ替えるらしいわ。エリーが一度元の世界に戻ることになりそうだけど、ちゃんと戻ってこれると博士が言ってたからだいじょうぶよ」

 そうなると、いろいろ買い込んできそうだぞ。それにまったくどんな形態になるか教えてくれないのも問題なんだよな。

 

 レミ姉さんのトランクとバッグを持って新らしい住居に運んであげる。何時の間にか荷物が増えてるな。エリーも大きく膨らんだナップザックを背負っているし、姉さんだって小さなトランクを引いている。

レミ姉さんが暮らす家はトレーラーハウスのような形だ。ヤグートⅢよりはよっぽど家らしく感じる。ここでレブナン博士と暮らすなら、ゆったりと過ごせるだろう。

 となると、ヤグートⅢの改修が気になるな。


「ありがとう。ヤグートⅢの改修までは2人になるけど、何かあれば何時でもいらっしゃい」

 そんな言葉をレミ姉さんが俺達に掛けてくれた。

 また、2人になったけど、直ぐにネコ族の姉妹が一緒になる。賑やかになりそうだな。


・・・ ◇ ・・・


 カレンさん達は3日程砦に滞在して村に帰って行った。

 あちこちエリー達が案内していたようだが、一番驚いたのは東の居住区の屋根に設けた25mm機関砲らしい。

「これなら、大型のダイノスも退けられるだろう」

 そんな感想を言っていたらしい。確かに退けたけど、1発ではダメだったんだよな。

 集会場でレミ姉さんにお礼を言って帰ったけど、村のギルドやゴランさん達への報告で、南の森で狩りをするハンターが減れば良いんだけどね。かなり獲物が多いらしく、毎年のように南の森を狩場にするハンターは集まってくるらしい。


「明日に出掛けるよ。お兄ちゃんは欲しいものがある?」

「そうだな……。靴がだいぶ傷んでるから、新らしいのが欲しいな。ジャングルブーツと普段履けるスニーカーの両方だ」

「分かった。ちゃんと持ってくるからね」


 次の朝。戦闘装備で俺だけがヤグートⅢを降りる。

 エリーはレブナン博士とレミ姉さんが移動手続きを完了するまで調査機でお留守番だ。

 俺は集会場に向かう。ここでのんびりとエリーが帰ってくるのを待てば良い。コーヒーは飲めるし、タバコも気兼ねなく楽しめる。

 暇つぶしに仮想スクリーンを開いて調査機の概念図を眺めながら、再度検討を始める。

 小さな機体だからな。4人乗りで3日程度の調査工程なのだが、やはり必要な物が沢山ある。狙いは沼沢地帯と荒地にすればアルビンさん達と行き先が重なることもないだろう。アルビンさん達もそれぞれ専用機を考えているようだ。


「あら、こんな所にいたの?」

 そう言いながら、レブナン博士が俺が座っていたベンチの横に腰を下ろす。

 俺が見ていた仮想スクリーンを横から覗き込んでいるので、少し画面を広げると博士の意見を聞いてみることにした。


「そうね……。バンター君らしいアイデアだわ。プラントハンターが向かうのを躊躇う場所を探すってことでしょうけど、こんな移動装置を見るのは初めてよ」

「製作できないということでしょうか?」

「それは無いわ。超硬度を誇る材料で作れるわよ。移動手檀と浮体を両立させるのはアイデアよね。特許を取れるわよ」

 中々好印象だな。特許申請は博士に頼んでみると、快く引き受けてくれた。


「ほとんどできてるじゃない。向こうにこの概要を送れば冬前にはプロトタイプが送られてくるわ。それを使ってダメ出しをしなさい」

 俺の意見も聞かずに、俺のバングルからデータを転送しているぞ。まあ、俺としては安全に採取ができればそれでOKなんだけど……。


「村のギルドが、南の森を狩場にするハンターにかなり条件を付けたらしいわ。パーティの人員は10人以上。半数以上が銃を持つこと、それに全員が星1つ以上であること。これだと、3つ以上のパーティが1つになって狩りをすることになるでしょうね」


 銃が5丁は少ない気もするが、竜人族なら銃も使わずに狩りをするんだろうな。その補助に銃が5丁ということなんだろう。

 カレンさんの報告を聞いて、ゴランさんが出した条件なんだろうな。


「そうなると、小屋1つでは収容しきれませんよ!」

「もう1つ建てることになるわ。森から木を切り出すのはバンター君達に頼むことになるでしょうね」

 

 そうなると、100本近い丸太を切り出さねばならないな。

 板材は向こうの世界から持ち込んだとしても、外部の丸太はこの世界のものにする必要はあるだろう。

 エリーがどんな機体を運んでくるか分からないけど、俺達の当座の仕事は決まったな。

 あの姉妹の姉さんの方はしばらくは補助具の厄介になるんだろうけど、機体の乗降はだいじょうぶなんだろうか?

 意外とエリーは細かなところに気を配らないところがあるから、ちょっと心配になってきたぞ。



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