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PH-055 ゴランさんへの報告と確認


 だいぶ緑が多くなったな。そんな事でにんまりする俺はプラントハンターとして一人前になったのだろうか?

 隣のレミ姉さんが微笑んでいるのは、そんな緑の光景ではなく、前に座るサリネアの表情が目まぐるしく変わるからに違いない。

 この世界の乗り物ではないから、初めて見る物だし初めて乗るものだ。地面の起伏でバウンドするたびにキャーキャー言って騒いでるから、エリーもそんな場所を選んで走ってるように思える。

 村の東の堀は補強した丸太橋を渡って村の北門に着くと、見知った門番に車を置かせてくれと頼み込んだ。


「前にお前達が住んでた場所なら誰も文句は言わんだろう。だいぶハンターが来ているぞ。お前らも薬草採取に励むんだな」

「そうですね。村の東にも何組か見かけました。ゴランさんは狩りですか?」


「カレン達は北に行ったがゴラン殿はギルドにいるはずだ。そろそろ、王都から商人達もやって来るし、それにハンターも増えるはずだ。ハンターの顔ぶれを見てから出掛けるんじゃないか?」

 

 門番は門を出るハンターの顔は覚えているようだ。礼を言って車を柵の近くに停めると、ギルドに歩いて行く。

 エリーの姿を見て子供達が寄って来る。


「後でギルドに行くから、先に行ってて!」

「ああ、昼食は一緒に取るからな。それまではギルドで待ってるよ」


 俺の言葉を聞くと嬉しそうに、サリネアの手を引いて北門の北門の広場に戻って行った。

「しょうがないわね」

「でも、エリーのお蔭で俺達を怪しむ者もいないのは確かです。貴重な存在ですよ」

 子供達と騒いでいる者を見て悪く思う者はいない。門番が俺達に親切なのもそんな姿を毎日見ていたからに違いない。


 ギルドに向かうと、カウンターにいたレイドナさんに片手を上げてご挨拶。ついでに俺達のレベルを確認して貰う。

 ギルドカードを渡して、レイドナさんが取り出した水晶球を両手で持つと、軽い電撃を前と同じように受けた。

 カウンターの下から取り出した俺のカードには小さな穴が増えている。8個から12個になったけど、その上の穴の数は前と同じだな。


「レベル16になってます。1年も経たずにこれだけのレベルは初めてですよ。暖炉でゴランさんが呼んでます」

 俺のカードを返しながら教えてくれた。

「先に行ってます」とレミ姉さんに告げて、ゴランサンのところに歩いて行った。


 いつものようにゴランさんの向かい側のベンチが空けてある。そこに座ると、リズナさんがお茶のカップを渡してくれた。小さく頭を下げて礼を言う。


「いよいよ狩りの季節でもあるのだが、バンター達は昨年同様薬草を採るのか?」

「それが本業ですから、そうしたいと思っています。仲間も増えましたし、砂漠の都市で新たな仲間も出来ました。稼がないと大変です」


 そんな俺の話をレイさんが鼻で笑っている。だが、ゴランさんは俺の言葉に顔つきが変わったぞ。


「待て、砂漠の都市と言ったな。そこまであの乗り物は行けるのか?」

「結構時間が掛かりましたよ。2つの都市を見てきました。今では誰も住んでいません。西の都市は地震の被害を受けたようです。倒れた家屋が多数ありましたが亡き骸が1つもありません。それで、もう1つの都市にも向かったのですが……」


 見てきたことを包み隠さずゴランさんに話した。

 4人がジッと俺の話を聞いている。話を終えてもしばらくは誰も口を開かなかった。

 ゴランさんがパイプを取り出してタバコを詰めると、暖炉の焚き木で火を点ける。

 

「アルドス……。こちらには向かっていないんだな?」

「最後に見た時には、群れを解いて砂漠に広がって行きました」


「ゴラン。厄介な相手なのか?」

「厄介どころの話ではない。バンターの話した通りだ。アルドスに2つの町が消されてしまった。東の連中は砂漠を越えて行ったのだろうが、果たしてどれぐらいの住民がたどり着けるか……」

「どんな奴なんだ?」 

 レイさんは色々とゴランさんに問いかけている。姿を見たことはないんだろうな。


「大きなアリだ。ラブートよりも大きい。それが何万も集まって群れを作る。その行軍の先にあるものは全て食われるのだ」

「必死で戦ったようです。これが落ちていました。20個ほど集めました」


 魔法の袋から、拾った銃を取り出すと、ゴランさんが興味深げにその銃を手に取った。


「お前に貰った銃に似ているな。2連装だが、銃口から火薬を入れる形だ。お前達の作ったカートリッジも使えそうだな」

「仲間も増えたので、出来ればこの銃を売りに出したいのですが……」


「銃は銀貨5枚が相場だ。だが、2連装とう事で、倍近い値を付けられるだろう。だが、これだけの銃をお前達が売りに出したら、武器屋から恨まれそうだな」

「武器屋に銀貨7枚で卸して、銀貨8枚で販売して貰おうと考えています。それなら武器屋にも少しは実入りがあるでしょう」


「銀貨1枚の儲けか……。一応、俺達に相談したと言っておけ。銃の付属品位は付けて売れるだろう。それと、俺に3丁売ってくれないか。カレンとトネリには世話になっている。彼らにも渡しておきたい」

「元々拾った物です。それに相談料と言うことで……」


銃を3丁ゴランさんの前に置いた。これ位の役得があっても良いだろう。俺達の立ち位置については色々と便宜を図って貰わねばならないからな。


「良いのか? お前の考えは見え見えだが、俺達もお前達に協力して貰いたいのは確かだ。ありがたく頂いておくぞ」

 ギブアンドテイクと言う奴だな。一方だけに利があるわけではない。これからは互いに協力していくことになるのだ。


「最大の課題は、春の嵐と呼ばれるダイノス達の移動だ。それに砂漠の都市を全滅させたアルドスの動向も気になるところだ。もし、これらの情報が分かれば知らせてほしいのだが。それと、砂漠の都市が2つとも全滅したことは王都にも知らせねばなるまい。あの都市からこの村に隊商が来ることはないが、南の山岳地帯の町とは交流があると聞いている」

「その辺りの、判断はお任せします。出来ればこの村に俺達の小屋を作ってもよろしいでしょうか? 前に荷馬車を停めていた辺りに小さな小屋を作っておけば、一々この村まで来なくとも仕事の依頼を伝え合えるのですが」


 俺の話は、あっさりとOKが出た。ヤグートⅡを停めておいた北門の西の一角は俺達の住居と、ギルドと村長の承認があったようだ。

 小さなログハウスと納屋があれば、砦との通信を無線で行うことが出来るだろう。依頼はスキャンして送信も出来る。

 出来ればこの間の大工さんに作って貰っても良いだろう。それはこの銃を売ってからになるな。


「話は終ったの? ギルドにカートリジを100個卸したわ。銀貨25枚になったわよ」

「一応、終わりです。銃の販売にも目処がつきました。それと、俺達が車を止めている場所に小屋を作っても良いそうです」

 その話を聞いて、レミ姉さんが改めてゴランさん達に頭を下げている。

「昼食後に北の広場にいるがいい。大工には俺から話してやろう」

「昼食後ですね。ありがとうございます」


 ギルドを出て、北門に向かう。エリー達はまだ遊んでいるのかな?

「先に武器屋に向かって。交渉はバンター君に任せるわ」

「帰りに寄ってください。俺の方が先に終れば北門に行きます」

 俺は通りの半ばにある武器屋に足を向けた。レミ姉さんが俺に軽く手を上げて北に向かって歩いて行く。


「こんにちは!」

「はい、何でしょう?」


 武器屋の店員はイノシシ顔の女性だった。若いんだろうが、生憎と強面こわもてだから、ちょっと引いてしまうな。それでも、勇気を出してカウンターに向かった。


「実は、これを買って欲しいんだけど……」

 俺が魔法の袋から取出した銃を見て、目を丸くしている。

「ちょっと待ってください。父を呼んで来ます!」


 直ぐに、頭を上げてそれだけ言うと、奥にどたどたと走って行った。どうなることかと奥を見ていると、レイさんの親戚のような男が現れた。

 

「珍しい銃を売りたいと言っているのは、お前だな? これがその銃か」

 カウンターの銃を手に取って、色々と調べているぞ。一応、武器の目利きということになるんだろうか?

 

「若い頃に、一度見たことがある。砂漠の東の連中が使う銃だな。どこで手に入れたかは知らんが、いくつ手に入れたんだ?」

「17丁です。ゴランさんに相談しました。750Cなら買ってくれるだろうと……」

「売値は銀貨8枚か……、少しはまけてやろう。 良いぞ、ただし5丁だ。村の武器屋だからな、そんなに金はねえ。だが、注文は取っておく」


 一旦奥に戻ると、38枚の銀貨をカウンターに並べて俺の方に押しやる。

「手に入れた方法は聞かん。だが、一か月したらまたやってこい。残りの銃何丁かは買えるはずだ」

 俺もカウンターに5丁の2連銃を並べる。銀貨を受け取ると、武器屋の親父さんに礼を言って店を出た。

 

 銀貨50枚以上になったから、【呪文】を刻める仲間が増えるな。

 通りの北を見ると、3人が歩いて来る。後は、昼食を食べて、大工さんと打ち合わせれば今日の予定は終了だ。


 大工さんとの打ち合わせで、小屋は納屋付きの1部屋でロフトを作って貰う事にした。俺達とアルビンさん達とで交代しながら滞在すれば、ゴランさん達がいない時でも、少しは村を守れるだろう。

 出来れば、もう1組のパーティが来てくれれば良いのだけれど、プラントハンターギルドもここばかりを構ってはいられないんだろうな。


 夕暮れが始まる前に、砦に向かって4輪駆動車を走らせる。だいぶサリネアの表情も明るくなってきた。

 親戚や友人達と離れ離れになってしまったようだけど、町を去った人達だってこれからの苦難は続くのだろう。無事に砂漠を渡って欲しいものだ。

 帰れば、サリネアに姉さんの手術が終わっていることだろう。手術光景を見せないために、俺達にサリネアを託したに違いない。

 形状記憶合金と、ナノマシンの組み合わせというような事を言ってたけど、俺達はちゃんと歩ければそれで良い。

 姉妹だって、そんな難しいことを聞いても理解できないだろうからな。



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