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PH-046 博士達がやってきた!


 丸1日ほど続いた吹雪で俺達のヤグートⅡは前部がほとんど埋まってしまった。

 林の中だから少しは吹雪が手加減してくれるかと思っていたが、やはり自然相手では厳しくはあるな。


 急きょ、レブナン博士に雪かき道具を送って貰い、今日は朝から3人で雪かきに励む。

 小型でも良いから自走式の雪かき車が欲しかったな。送って来たのが大きなシャベルみたいな物だった時は、レミ姉さんが抗議してたけどね。

 それでも結構、掘れてきたんじゃないかな? 枯草が顔を出している部分がだいぶ広がって来たぞ。

 

「このぐらいで良いかしら?」

「中心の座標を伝えればどちら側に出現してもだいじょうぶだと思うな」

「一緒に何人か来るんでしょ。明日は手伝って貰えるね」


 それはどうかな? ラボの連中だけだったら、あまり期待はできないぞ。


「それで、時空間ゲートの開く時間は?」

「1500時を予定してるわ。夕食を届けてくれるらしいわよ」


 そんな事を言うからエリーの目が輝いてるぞ。問題は何を持ってきてくれるか分からないということだ。そう言えばレブナン博士って何でも食べてたよな。傾向が分かれば少しは気も楽なんだけどね。


 横幅6m長さ25m程の空き地が出来たところで雪かきを止めてヤグートⅡに戻る。外は寒いけれど、時空間ゲート出現まで2時間を切っている。ゆっくりと車内で待つとしよう。


 出現10分前に車外に出て、お出迎えだ。

 座標の確認を何度も行っていたレミ姉さんが最後に車外に出てきた。

 エリーがバングルの時計を見ながらカウントダウンをして、ゼロと大きく叫んだ時、直径5m程の時空間ゲートが雪かきの終えた空き地の中央に出現する。

 銀色の鏡面から浮き出てきた物は、ヤグートⅡより二回りも大きな紡錘型の調査機だった。


「キャタピラじゃないわ!」

「片側4輪の8輪車ですね。高さはヤグートⅡ並ですがブリッジはありませんね」

「牽引台車を引いてるよ!」


 調査機は雪の中に突っ込むようにして牽引台車を引き摺り出している。

 台車後部が時空間ゲートから3m程離れた時、時空間ゲートが次第に小さくなって消えていった。やはり維持時間は5分が限度らしい。


 バタンと調査機の側面扉が開いてレブナン博士が外に飛び出してきた。

「しばらくね。元気だった?」

 俺達3人を順番にハグしてくれたんだけど、やたら嬉しそうだぞ。ゆっくりと調査機から下りてきた男女はきょろきょろしながら辺りを眺めている。


「さあさあ、テントを張るわよ。でないと凍える人達が出ないとも限らないわ」

 調査機に乗ってきたのはレブナン博士とその仲間3人にプラントハンター4人組の8人だ。俺達と合わせて11人になるな。

 台車から小さなロータリー雪かき車を取り出すと、早速雪かきを始めた。

 10m四方位の雪かきを終えたところで、エアー式テントを張る。入り口はエアロック構造になっているから、中は暖かだろう。調査機から電源ケーブルをテントに引いて、中の暖房を行うようだな。そんな作業を調査機のライトを点けながら続けると、2000時ごろには、テントの中で食事ができるまでになった。

 

 レブナン博士が持ってきてくれた夕食はハンバーグのお弁当だ。久しぶりに白いパンも食べられる。

 食後は村で購入したワインを皆で楽しむ。

 明日は、ヤグートⅡを向こうに送って、今日やってきた調査機と同型の調査機が送られてくる手筈だ。


「先遣隊として8人が来たわ。明日は防衛隊10人が来るはずよ。明後日は整備員にオペレーターが来ることになっているわ」

 現在が11人で明日が10人、明後日には8人がやって来るらしい。総勢29人って事だな。

「収容施設が足りないと思うんですが?」

「その辺は考えてるわよ。一度こちらに送って用が済めば戻すから、テントは後、3つ作ることになりそうね。大型テントを作ってその中で作業をするわ。冬が終わるころには立派な砦が出来るわよ」

 明日はヤグートⅡの私物を取り出さなければならない。再会の宴は早々に切り上げて眠りについた。


 次の日。台車から小型のシャベルカーが出てきた。新たなプラントハンターのリーダーであるアルビンさんがシャベルカーを動かして雪をどんどん横に移動していく。エリーは雪かき車を動かしているようだ。

新たなエアーテントを作ると、レミ姉さんと俺で、ヤグートⅡの私物をどんどん移動する。アルビンさんの仲間たちは、ヤグートⅡから使える部品を撤去して別なテントに移動していた。


 レブナン博士は、ヤグートⅡの電脳を取り外して、簡易な電脳と交換している。誰も乗らずにリモコンで操作して時空間ゲートを潜らせるつもりのようだ。

 今日も1500時に時空間ゲートを開き、新たな仲間がやって来る。ヤグートⅡは今夜遅くにも向こうに戻すつもりのようだ。

 それまでにエアーテントを張る場所を作らなくてはならない。雪かき用のスコップを持って頑張ってる姿が窓越しに見えた。


 この地に来て3日目。とりあえずの砦の要員が全て揃った。これから大工事になるんだが、資材は時空間ゲートで運ぶらしい。砦の柵はこちらの森で伐採することになるのだが、そのための重機もオペレーター込みで時空間ゲートを越えてきた。今では直径8m近くまでゲートを広げられるのだが、維持時間は10分に至らない。安全を取って6分で移動出来るだけだから、トラクターで引いた牽引台車2台分が一度に運べる資材となる。その夜にトラクターや台車を向こうの世界に送るから、1日2回の時空間ゲート操作が必要となる。その操作は、オペレーターとレブナン博士達が一括して引き受けてくれるから、俺達は砦造りだけを考えればよい。

 

 時空間ゲートによる資材の搬入空間を考えながら砦の縄張りを行って、施設を作り始める。

 大型のテントを作ってその中でコンクリーとの土台作りを始めた。南北方向に50mだから結構大変だ。速乾性のコンクリートらしいが、乾燥機を使っても乾くのに3日は掛かる。

 コンクリートが乾いたら、調査機2機を並べてその横に台車を並べる。入子式になった箱型構造の台車の壁を引き出して台車の空間を2倍にする。この台車の片方がラボでもう片方がレブナン博士達の宿舎になる。

最初の図面では横に4台並べた格好だったが少し変更したようだな。他の要員の宿舎も台車を使って作り上げると、軽量金属性の壁と屋根を乗せる。その周囲を丸太で壁を作れば横長の大きな倉庫に見えなくもない。俺達の中枢だからな。不用意に見せるわけにもいかないだろう。


 40m程がそんな空間に使われ残りの10mを利用して2階建てのログハウスを組み上げた。2回の窓が調査機を入れた細長い倉庫の屋根の高さだ。何かあればここから倉庫の屋根に上って恐竜達の迎撃も出来そうだぞ。

 ログハウスの1階に薪ストーブを設置して集会場にする。2階は警備兵達の区画になるそうだ。周囲1kmの監視をここで可能にするという事だ。

 調査機の納まる建屋とは調理場を隔てている。集会場は食堂としても機能するのだ。


 北面に奥行8m横幅50mの横長の倉庫兼車庫をログハウス風に作る。倉庫の一角は時空間ゲートの操作室となる5m四方の軽金属で作られた箱部屋が置かれているが、外から見た限りでは板を張った小部屋にしか見えない。

車庫には、高機動車3台とスノーモービル3台、小型の牽引台車とソリが置かれた。

 最後に横長の平屋建てのログハウスを2つ作る。訪ねてきたハンター達を泊める部屋だ。

 2か月も経つと、砦を囲む柵もだいぶ出来てきた。少しずつ工事用の機材をゲートを通して向こうに送り返し始めた。


「だいぶ出来てきたわね。後、一か月も経たずに出来上がるわよ」

「これで恐竜が防げるかどうかが心配です。50口径対戦車ライフルが2丁に、12.5mm機関銃が2丁。これで防げるんでしょうか?」

「あら、警備兵達はグレネードランチャー付のAK60を装備してるわよ。それに私達だってAK60を持ってるんだから、この時代なら十分だと思ってるんだけど」


 外観的に目立たなければ何でも良いって感じで持ってきたのか? となると、他にもいろいろ持って来たんだろうな。

 

「井戸は掘れたけど、浄水設備を通して飲んでね。電気は必要な場所には配線したはずだけど、この世界の人達が見る場所は分からないようにしてあるわ」

「たまに村にも行けるんでしょう?」

「それは問題ない。俺達はこの世界のハンターでもあるからな。稼がないと食料だって買えないぞ」


「そうね。なるべく向こうからの支援を受けないようにしないと、この砦の秘密がバレる恐れがあるわ」

 中々大変だな。とは言っても、新たなハンター達に呪文の話もしないといけない。呪文は1つ銀貨5枚だからかなり稼がないといけないぞ。

 

 最盛期には50人を越えた作業員も少しずつ減って、今日は最後の作業員を乗せたトラクターと牽引台車が時空間ゲートに消えていくのを皆で見送った。

 いよいよ俺達だけで、砦の運用をしなければならない。


「一応だけど、この砦の指揮は私になるわ。今夜2000時に各リーダーは集会所に集合して頂戴。当面の作業を分担するわ」

 直ぐに仕事を始めるのか? 少しは休みたかったけどな。

 それに、まだ冬の最中だし、植物は採取出来ないんじゃないかな。


 皆ぶつぶつ言いながらそれぞれの宿舎に戻っていく。俺達も新しいヤグートⅢに戻ったのだが、前と比べて今度のヤグートⅢは水中活動を重視していないようだ。仕様書では水中20mは保障すると書かれているが、基本は荒地や砂漠を考えているようだ。

 前席は3つのシートが置かれている。操縦は前と同じって事だろう。レミ姉さんも今度は前に座れるようだ。隔壁を隔てて、居住区がある。横に3mはあるからテーブルも大型だ。テーブルを挟んでベンチシートが2つあるが、そのシートで昼寝が出来るぞ。左側に70cm程の通路が後方に続いており、居住区の次にあるのがベッドだ。天井部分に高さ1.5m程の空間を使って横2.4mのベッドが付いている。奥行きが2.5mはあるから、十分に足をのばせるぞ。ベッドの下は倉庫が並んでいる。その奥がシンクとシャワールーム、それにエアロックとなっていた。


「大きいよね。エリーなら、このベンチシートで寝られるよ」

「重要なシステムは全て前にあるのね。でもここでも端末が使えるわよ。ベッドも3人なら十分な広さだわ」


 早速、レミ姉さんがコーヒーを入れてくれたけど、ちょっと大きさに戸惑うな。まあ、慣れてくれば、これでも狭いと思うんだろうな。

 


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