表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/103

PH-041 レブナン博士との通信


「おもしろい考えだ。確かに役立つだろうな」

「でも、バンターの言う通り、連絡手段がないぞ!」

「それについては当てがある。砦に1パーティを常駐させても良いと思う。そして、作るなら冬の最中だな。森の木々の葉が落ちて見通しも良くなるし、ラブートは南に移動している。獣はいるがラブートよりは遥かにマシだ」


 ターフの下でお茶を飲んでいると、狩りの帰りであろうゴランさん達に声を掛けると、ゴランさんとネコ族のオルベイさんがターフの下にやってきた。残りの2人はギルドに向かうのだろう。

 お茶を飲みながら、途中に砦を作ったら? と提案してみたのだが……。


「3パーティが避難できれば十分でしょう。そこで暮らすわけではありませんから小さく作れます。ですが、常駐させるとなると、色々必要になってきますよ」

「村のギルド長の判断だな。俺から伝えておこう。冬場は依頼が少ないし、低レベルのハンターには危険な狩りだ。そいつらに作らせればレベルの高いパーティを周辺監視に付ければ安心できる」


 ゴランさんも、どうにかせねばと思っていたらしい。オルベイさんはストーブの焚き木で火を点けたパイプを咥えながらおもしろそうに俺を見ていた。

 

「ゴランの相談相手ができたな。俺も連絡手段があれば賛成だ。レイやリズナも、犠牲者を見て嘆いていたからな。賛成すると思うぞ。カレンやトネリも賛成するはずだ」


 俺とエリーは顔を見合わせた。高レベルのハンターの基本合意をもって、ギルド長と調整するってことなんだろうか。提案した事は記録に残るだろうし、そんな提案を無下に却下して犠牲者を出し続けるなら、ギルド長としての資質を問われかねない。結末がどうなるか楽しみだな。


 ゴランさん達と手を振って別れると車内に入る。

 レミ姉さんは、時空間ビーコンを使って通信を送ろうと頑張っている。苦労しながら部分的に通信を送ることができたようで、その返事をヤグートⅡの電脳を使って解析中だ。


「博士が必死になって頑張ってるみたい。後一か月位で試験的な時空間ゲートを作り出せるかもしれないと言ってるわ」

 かなり長い通信だから、現在はそれだけ解析できたということだろう。だけど、ここも中々良いところだと思うな。

 ハンター仲間は親切だし、いろんな種族が入り乱れてるし、それに何といっても、恐竜がいるんだからな。

 そんな話を楽しそうにしている俺達も、帰れるかもしれないという希望が見えてきたからに違いない。


・・・ ◇ ・・・


 いつものように、村の南に薬草を採取に出掛ける。

 今日の依頼品はラムザスという薬草だ。これは地下茎を採取するとのことだ。報酬は重さで決まるらしい。1G(ガル=約2kg)で110Cという事だが、それ以上取れたら標準価格の1G、100Cと言う比率で買い取ってくれるとのことだ。

 村の南は俺達以外に4つのパーティが薬草を採っている。どのパーティも必ず1人は見張りに立っているし、距離は300m程だから何かあれば集団で対処できるだろう。レベルの低いハンターはこうやって身を守るんだろうな。


 1500時を回って、そろそろ帰ろうとしていた時、森の方から数人のハンターが走ってきた。双眼鏡で眺めると、逃げているのは竜人族と犬族のハンター達だな。その後ろにいるのは、人族のハンター達だ。

 距離はおよそ3km程ある。いったい何から逃げ出しているんだろう?

 

 周りのハンターも気が付いたみたいで、逃げるか助けるかの判断に迷っているみたいだ。

「お兄ちゃん、小さなラプトルだよ!」

 エリーの言葉に再度逃げて来るハンターの後ろを眺める。双眼鏡の視野に入ったのは、確かにラプトルの姿はしているのだが、かなり小さいぞ。

「モノニクスよ。雑食という事だけど、小動物を漁ることも出来るわ。数が多そうだけど、何とか対処できると思うわ」


 レミ姉さんの判断に従おう。

 周囲のハンターに手を振って、こちらに集まるように指示する。東から走って来るハンターには、槍の先にタオルを巻き付け、大きく振ることで知らせた。直ぐに気が付いたようで懸命にこちらに走って来る。

 槍を地面に突き刺して、エリーの持つ魔法の袋から、ショットガン、MP-6、AK60を取り出して、モノニクスの集団を待つことにした。


「俺達で防げるのか?」

「弓が2つあるぞ!」

「長剣と槍だ!」

 集まったハンターが口々に叫ぶ。

 俺達3人を中心に三角形の陣を構えて待つ。スライドを操作して初弾を装填すると、ハンター達は300m程の距離まで駆けてきていた。その後方100m程に体高1.2m程のラプトルモドキが迫っている。

 距離が100m程になった時、レミ姉さんが銃弾を放つ。短い間隔で3発放たれると、2匹が転倒した。そこに群れが襲い掛かる。

 共食いするって事か? だが、時間が稼げる。

 俺達の陣に飛び込んできたハンターは、荒い息を吐きながら、水筒の水をゴクゴクと飲んでいる。


「すまん。俺達も銃がある。直ぐに食らい尽くして向かってくるぞ!」

「俺達の後ろで援護してください」


 7人が駆け込み終えたころに、草原からラプトルモドキが首を上げた。距離は150m程だ。エリーのMP-6に期待したいところだな。頭がどんどん増えてくるぞ。

 数十に膨らんだラプトルモドキが一斉に俺達に襲い掛かった。

 

 次々とレミ姉さんがラプトルモドキを倒していく。100mを切るとエリーがMP-6を乱射し、30m程に近づいた奴はダブルオーバッグの散弾で倒す。更に接近した奴は他のハンターが持つ単発銃や矢で倒された。満身創痍で俺達に襲い掛かるラプトルモドキは槍や長剣で倒されていく。

 数分で終わった戦いだが、俺達の周りには数重の小さなラプトルが倒れていた。


「終わったな。これで全部か?」

 ショットガンに新たな弾丸を装填しながら、逃げてきたハンターに質問した。

「ああ、数匹なら何とかなるが、あの数だ。助かったよ」

「討伐証は蹴爪だったよな。集めようぜ。山分けでも薬草の報酬より上だぞ!」


 そう言ってハンター達が蹴爪を剣で折り取っている。皆無事で良かった。数人が軽い怪我をしているが薬草の球根をすり潰して包帯を巻いている。効くのかな? 怪我に効くとは聞いているけど、精製しないとダメなんじゃないのか。


 村に戻ってギルドで報酬を分ける。ラプトルモドキの報酬は1匹50Cらしい。倒した数は46匹で参加人数19人で分けると1人121Cになる。半端は村に寄付で良い。それに薬草の報酬が220C。俺達3人で581Cだから、10日分以上の食費代になるな。このまま行けば冬はヤグートⅡの中で暮らしても問題ないんじゃないか?


 夕食を終えてギルドに寄り、明日の依頼を受けようとしていると、奥のテーブルからゴランさんが手を振っている。明日の依頼は姉さん達に任せて、俺一人でゴランさんのテーブルに向かった。姉さん達は直ぐにヤグートⅡに帰るそうだ。やはり時空間通信の方が気になっているのだろう。


「何か?」

「まあ座れ。デ・ラブートの群れを狩ったそうだな?」

「周囲に他のハンターもいましたし、数には数で対処しました。それに俺達の銃は連発が効きますから。銃弾は多くはありませんが、惜しむつもりはありません」


「あの場所で薬草採取をしていて助かったようなものだ。これから秋になる。ハンターが増えるからもう少し東で薬草採取をしてくれるとありがたい」

「それなら、柵を作ってもよろしいですか? 小さいやつでしたが怪我をしたハンターもいます。柵があれば守るにも都合が良いです」


 砦を直ぐに作るのは難しいだろう。だが柵なら作るのが簡単だ。コの字型に杭を並べるだけでも効果があるだろう。


「使えそうだな。村と森の中間付近で良いだろう。トネリにやらせるか?」

「あいつは真面目な奴だ。薬草採取をしているハンターを纏めて容易に作るだろう」


「その先に砦が出来れば心強いわ。砦の付属品として作らせるのも良いと思うけど?」

「そうだな。バンターの策を取り入れるか」


 そんな話で、柵作りが行われることになった。

 やはり、あの小さなラプトルに襲われた事例は度々あるって事だろう。筆頭ハンターも大変だな。俺達も出来る限りは強力してやろう。


 ヤグートⅡに戻ると、エリー達が真剣にデータ解析をしている。

 エリーに状況を聞いてみると、時空間ゲートを試験的に開けるまでになったらしい。


「それで、レブナン博士が色々と注文を出してるの。映像記録と周辺のサンプルを欲しがってるんだけど、その調整をレミ姉さんがやってるよ。エリーは、今までの記録を整理してたんだけど、お兄ちゃんは何が一番欲しい?」


 最後が理解できなかったが、良く聞いてみると相互に中型のシリンダーを交換するらしい。という事は、試験的に作る時空間ゲートの大きさは直径30cm位って事だな。確かに相互に物を送れれば、時空間ゲートの健全性を確認できそうだ。となると、銃弾をケチらなくても良いんじゃないかな?

 

「俺は、コーヒーと砂糖、それにショットガンの弾丸だな」

「OK、リストに入れとくね」

 果たして上手く届くか微妙なところだが、それが試験だからな。当たり障りのないものでも十分な気がするな。

 

「そうだ。あの辞典のスキャン資料も送っておいた方が良いぞ。レブナン博士のやる気が出るかも知れないからな」

 ウンウンとエリーが頷いている。エリーのリストを見ると、キャンディーにケーキ、それにサッカーボールやグローブまであるぞ。あの中型シリンダーにそんなに入らないと思うけどなあ。


「どうやら、意思が通じ合えたわ。明日の夜、2300時に前席の中央に時空間ゲートを開くそうよ」

 となると、薬草採取が忙しそうだぞ。

「意外と急ですね。薬草採取が間に合いませんよ」

「集められるだけで良いわ。明日の試験はあくまでも時空間ゲートの相互通行よ。ダメ元でやることになるわ」


 レブナン博士の推測結果を裏付ける実験って事だな。せっかくだからって事なんだろう。ならばそれ程気にすることはないかな。とはいっても、向こうだって期待してるに違いない。明日は頑張って薬草を採取してやるか。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ