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PH-039 時空間ビーコンの返信?

 朝が訪れると、北門の先に巨体が2つ横たわっている。近くに2頭のダチョウよりも大きな鳥も倒れていた。

 ギルドにやってきたハンター達を集めてトネリさんが作業を分担していく。俺達3人はそれを見ているだけだった。やはり手馴れているな。村の筆頭候補としてこれ位はできないとダメなんだろうな。

 ぞろぞろとハンターが出て行ったところで、トネリさんが俺達のところにやってきた。


「まったく驚かされる。あの音はしばらく忘れんだろうな。しかもデントスの頭が貫通してる。ジラノスさえもあれなら1発だろう。ずっと村にいてくれればありがたい話だ」


 そう言って、パイプを取り出すと、長い話を始めた。

 あのデントスと呼ばれる恐竜もタニアと呼ばれる鳥も食べられるらしい。革もヨロイ用として高値が付くという事だ。

 朝早くに王都に知らせを出したという事で、夕刻には商人が大挙してやって来るらしい。その売り上げは昨夜トネリさんが集めたハンターに平等に分けられるという事だ。


「普通なら、怪我人多数と言うところだろう。それが起きていただけで大金が入るんだから少しは働かせないとな……」

 売れない部分は穴を掘って埋めるそうだ。解体と穴掘りでハンターを動員したらしい。

「ゴラン殿やカレン殿は驚くだろうな。俺だってまだ信じられないぐらいだ」


「村には恩恵があるんですか?」

「一応1割が還付される。それはギルドに任せれば良い。後は俺達でやっておく、宿に帰って一眠りしておいた方が良いぞ。夜には南門の広場で競りが始まる。その頃にここに戻ってくれば十分だ」


 トネリさんの言葉に甘えて、俺達はヤグートⅡに戻るとシャワーを浴びて横になる。目覚まし代わりの警報を6時間後に設定すれば夕暮れ時には起きられるはずだ。

 

 けたたましい警報音で目が覚めた。

 急いで私服に着替えたが、時計を見ると設定した時間まで20分も間があるぞ。

 レミ姉さんが設定を確認しようとして仮想スクリーンを開くと、やはり設定前20分のようだ。

 原因を調べていたレミ姉さんの顔が突然固まった。ヤグートⅡのトラブルでも起きたのだろうか?


「時空間ビーコンに返信信号が入ったみたいよ。かなり不安定だけどね。こちらからのビーコン発信間隔を短くして、1回の信号持続時間を長くするわ。ひょっとして、帰れるかも知れないわ」


 ちょっとした朗報だな。だけど不安定な状態ではとても時空間ゲートを開けないだろう。帰るにしてもしばらくは掛かるようだ。

 レミ姉さんが時空間ビーコンの発信プログラムを変更している間に村に出掛ける準備をしておく。対戦車ライフルの銃弾を1発持っていくか。これを撃ちこんだと言えば納得してくれるだろうしね。

 念のために拳銃だけは持って行く。エリー達はオートマチックのようだ。マガジン交換が楽だし、何といっても357マグナムリボルバーよりは軽いってのがあるんだろうな。でもマガジンの位置がトリガーガードの前にあるんだよな。かなり変わってる形だぞ。


「これを1つ飲んでおいて。肝機能向上のナノマシンよ。アルコール分解が早まるわ。でも飲み過ぎないでね」

 出掛けにレミ姉さんに渡されたナノマシンカプセルを1個飲んでおく。前回飲んだナノマシンだって体にあるんだけどね。このまま飲み続けると体全体がナノマシン化されそうだぞ。


 そんなバカげた思いに微笑みながら、外に出て2人が下りて来るのを待った。

 だいぶ暑くなってきたけど夕暮れが近づくと涼しい風が吹く。山沿いだからだろうか。

 夏が過ごし良いという事は冬が厳しそうだな。一応ヤグートⅡにはエアコンが付いてるけど、どれぐらいまで使えるかは取説を呼んでおく必要があるな。村のログハウスには皆立派な煙突が付いているから、大きな暖炉があるのだろう。ギルドの暖炉も大きかったな。


「行こう、お兄ちゃん!」

 どうやら準備が終わったみたいだ。

 3人揃って村のギルドに向かって歩き出した。


 ギルドに入るなり、奥で手を振る人物がいた。ゴランさんとカレンさん達だ。どうやら捜索が終わって帰って来たらしい。

 3つの机を並べて俺達の席まで作ってある。開いた席に座ると、カレンさんが俺達にカップを配ってくれた。真鍮製の小さなカップにゴランさんがスキットルから酒を注いでくれた。


「先ずは飲んでほしい。良くぞ俺達のいない村を守ってくれた。トネリからあらましの話は聞いたが、にわかには信じられなかったのも事実だ。で、本当はどうやって倒したのだ?」

 4頭とも解体したから分からなかったんだろうな。銃弾1発で倒したとは、見た者以外では信じられないだろうな。


「これが、4頭を倒した銃弾です。俺達はこのような弾丸を使います。この先端が弾丸で、火薬はこの真鍮の部分に入っています。この弾丸を素早い機械仕掛けで行う事で俺達の銃は連発ができます」

「この先端が弾丸なのか? この中全部に火薬を詰めたら銃が爆発するぞ!」

「銃を作っている金属がそもそも異なります。遥かに強く粘りがあります。これ位で爆発することはありません。捨てても良いという、ナイフを持っていますか?」


 俺の言葉に、カレンさんが短剣を引き抜いてテーブルに置いた。

「だいぶ磨り減った。明日にも鍛冶屋に下取りさせようと思っていた短剣だ」

 やはり青銅製だ。さすがに良く研がれているな。

 俺は腰に下げたサバイバルナイフを抜くと、サバイバルナイフでカレンさんの短剣を削り始めた。

 その光景を6人が目を見開いて見ている。

「これ位、強度が違うんです。この国にきてこの金属が使われていないのに俺達が驚いたぐらいです。これはカレンさんに進呈します」

 カレンさんは差し出されたサバイバルナイフをしげしげと見つめている。まさかそれ程強度が異なるとは思っていなかったようだ。ジーンズのベルトを外してサバイバルナイフのケースを外してそれも差し出した。

 

「理想の金属のようだが……」

「そうでもありません。青銅の短剣は錆びにくいですが、そのナイフは錆びやすいんです。使った後は良く拭き取ってください。ケースに砥石が付いてるのもそれが理由です」


「砥石を持ち歩くとはおもしろいナイフだな。だが話を戻せば、これを撃ちこんだという事だな。この大きさの弾丸を打ち出せば鎧竜も倒せるな。俺達がいないときにどうやって倒したのかが分からなかったがこれで納得した。どこに行く当てもないなら、この村で暮らしてくれ。お前達がいるなら安心して俺達は出掛けられる」

「基本が薬草採取ですから村の近くにいたいですね」


 そんな俺の言葉に、ゴランさんが頷くと俺のカップに酒を注ぎ足してくれた。

「だいぶこの男をかってるな」

「ああ、良い面だ。竜人族でないのが残念だ」

 イノシシ顔の男にゴランさんが呟いた。


「おお! ここにいたのか。売り上げが纏まったぞ。前部で銀貨248枚、1割を差し引いて均等割りだから、1人1250Cになる。半端は村に寄付したぞ」

 銀貨が37枚と穴の開いていない銅貨が5枚レミ姉さんが受け取ったようだ。これで呪文が手に入るんじゃないか。ちょっと嬉しくなるな。


「上手くやったな。だが、これで終わりではない。こいつらの手を借りずとも倒せるように精進しろよ」

「もちろんだ。これを使って銃を揃える者もいるだろう。次は俺達で倒せるようにするさ」

 トネリさんの話では村に10丁以上の銃が揃いそうだ。そうなれば少しは安心できるかもしれないな。

 

「これは相談なのだが、お前達の馬車を北門の西側に置けないか? 北門にダイナスが来た時には丁度良い足場になりそうだ。屋根にある柱と見張り台はそのままにしておいても数人は乗せられそうだ」

「良いんですか? 出来れば板を張っておきたいんですが、丸くなってますから滑り落ちそうです」

「明日は採取をせずに馬車を移動させるがいい。午後に大工を向かわせる。村の為だ。今回の収入で村から大工への手間賃は十分に出せるだろう。それは俺が手配しておく」


 準備をしますと言って早々にギルドを出る。

 これで、夕暮れを迎えても門が閉まるのを心配せずに済むな。水汲みが面倒だが、それぐらいは我慢できる。

 お弁当を温めてハーブティーで頂きながら準備を考えた。

 

「屋根を塞ぐとなれば無人機の発着が面倒だわ。1機を中に入れておくことになりそうね」

「屋根の上でバタバタ動かれると眠れないよ。使うときだけ屋根に乗せられないかな?」

「普段は柵の方に立てておいて、使うときに倒して使えば良いだろう。それ位の腕はあるんじゃないかな。そうすれば無人機の発着は今のまま行えると思うな」


 北門に入ってぎりぎりの距離で西向きに移動すれば出入り口のエアロックが広場の方向に向くはずだ。シートを使ったターフもそれなら今と同様に使えるし、買い込んだストーブも使えるぞ。門番も自由にお茶位は飲めるだろう。

 となると、雑木も少し集めなくちゃならないな。外にある保管庫から手斧を取り出しておこう。雑木を運ぶ背負いカゴは雑貨屋にあったはずだ。


「呪文もこれで使えそうね。1つ銀貨5枚と言っていたから、2つ持てるわ。何を買うかよく考えて頂戴」

 と言っても。【クリル】は必携だよな。それ以外と言うと【ブースト】になりそうだ。

 エリーは【ボム】を買うと言ってるし。レミ姉さんは【バリル】を買い込むようだぞ。

 一応全種類を3人で持てるって事だな。これでこの世界での楽しみが少し増えた気がするな。

 

 そんな話を終えると、レミ姉さんとエリーが時空間ビーコンの返信信号を解析し始めた。俺には何をしているのかさっぱりだから、外で一服を楽しむことにする。

 この世界に来て一か月以上が過ぎた感じだがタバコは1箱分も減っていない。残り数本のこの箱で数日持つんじゃないかな?

 仮想スクリーンを開いて周囲の状況を確認する。昨夜はすっかり姿を消していた小動物が動き回ってるな。

 普段は穏やかな辺境の村だという事が良く分かるぞ。


 車内に戻ると、2人が真剣な目で仮想スクリーンを眺めている。

「何かあったの?」

「届いているビーコンのアンサーバック信号なんだけど、どうやらモールス信号が入っているみたいなの。断片だからまだ文面までは分からないけど、数日間の信号を合成すれば何とか分かりそうよ」

 たぶんレブナン博士辺りの発案なんだろうな。

 こちらと何とか連絡を取りたがっているようだ。もちろん俺達だって、連絡を望んでいることは確かなんだけど、だんだん希望が出てきたってことかな。

 


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