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PH-032 銃がある!


 動体検知センサーを見ていると、村の中にも動きが出てきた。朝早くから畑に出掛ける農夫やハンターが北と南の門の方向に動いている。門近くの動きが活発になったからそろそろ門を開くんだろうな。

 

 北の門が開かれ、数人のハンターが門を出て歩き出した時、ラプトルがハンターめがけて走り出した。気が付いたハンターが急いで門に入ろうとしている。

 エリーが仮想スクリーンを更に1つ追加した。この画像は高い木の上に停めてある小型無人機からのようだ。

 北門の裏側の様子が見て取れる。

 ドラのようなものを叩く者や、柵に付けられた足場によじ登って弓を取る者さえ現れた。その中の1人を見て驚いた。何と、銃を持っているのだ。拡大すると、どうやら初期のパーカッション式の銃のようだ。すでに火薬が使われていたって事だな。

 今まで、一度も銃声を聞いていないから、あまり使われないのかも知れないな。


「驚いたな……」

「火薬が使われていたようね。でも、鉄は無いのよ。青銅性だと思うけど、長く使えるのかしら?」

「少なくとも弓よりは強力でしょう。かなり肉厚のバレルを使ってるんでしょうね」

 もしくは、何かで強化しているはずだ。弓を持つハンターの隣に場所取りしたから、威力は直ぐに分かるだろう。

 ギルドのカウンターの2人が俺達の銃を見て何も言わなかったのは、銃を使う者がいることを知っていたに違いない。レベルが最初から高かったこともそれ程驚いてはいなかった。似たような依頼をこなしていたことが分かったのか、それとも俺達の身体能力を計ったかは分からないけど、似たような例が過去にあるとしたら後者になるな。


 外にいたハンターが全て村に入った時、北門の扉が閉じられた。

 数十mの距離までラプトルが迫っていたから、かなり際どいところだったに違いない。そんな、ラプトルに向かって矢が放たれる。矢はラプトルの手前の地面に刺さったが、向こうはあまり気にしないようだ。速度を落としてゆっくと門に近付いてきた。


 30m程の距離で放たれた矢はラプトルに当たったがあまり深く刺さらず、腕の一振りで簡単に地に落ちた。

「どんなヤジリを使ってるんだろうな?」

「普通のヤジリでしょう? 種類なんてあるの」


 エリーの言葉に、ヤジリの種類を簡単に説明してあげる。少なくとも、狩猟用、戦闘用の2種類はあるはずだ。


「という事は、狩猟用のヤジリを使ったんでしょうね。獣はヨロイを着てないわ。でも、ラプトルの皮膚はヨロイ並みだったわけね」

「鎧竜という恐竜もいたんじゃないですか? まあ、そこまでは丈夫じゃないでしょうけど、獣の毛皮よりは固いって事だと思います」


 柵の一角に煙が上がった。と同時に、門に近付いていたラプトルの1頭が転倒している。銃を使ったようだ。急いで柵から下りて、銃口を突いている姿が見える。


「バレルを掃除してるの?」

「掃除じゃなくて、次の弾を撃つ準備をしてるんだ。銃口から火薬を詰めて、棒で突いて固めた後で弾を入れて、再び突く。最後にバレルの根元近くにある火皿に火薬を射れれば、いつでも撃つことができる」


 面倒な作業だが、柵があるから銃が2丁もあればラプトル数頭なら何とかなるんじゃないか。


「お兄ちゃん。あの弓も変わってるよ!」

エリーの指さしたさきにはクロスボウを構えるハンターがいた。

 銃があるくらいだからな。確かに通常の弓よりは威力がある。発射間隔は銃より遅いかも知れないが、銃に負けないくらいの威力はあるだろう。

 俺の考えを肯定するかのように、1頭のラプトルがボルトを撃ちこまれて昏倒したようだ。


「あれはクロスボウと言う弓の一種だ。普通の弓よりはるかに強力だ。だけど、発射間隔は弓から比べてはるかに長いし、射程があまりないんだ。だけど50m程度で使うなら銃よりも威力が期待できるかもしれない」

「そんな話はハンター仲間だって知らないわよ。それも事故の影響かしら?」


 レミ姉さんは首を傾げている。だが、俺は当たり前のようにエリーに説明してたよな。確かに不思議な話ではあるんだが……。


 2頭の仲間を倒されたラプトルは、少しずつ後ろに下がっていく。

 柵を守る連中はいつの間にか10人を遥かに超えている。そんな連中にもホッとした雰囲気が流れ始めたのがここからでも分かるな。どうやら、恐竜の夜襲は終わったらしい。


 エリーがお茶を入れてくれた。コーヒーが少なくなったのかな? それともお茶も大量に仕入れたんだろうか?

 俺達も、村が無事な事に少しホッとしていることも確かだ。お茶を味わいながら、さっきの状況を再度確認し合う。


「やはり、村のハンターは連携して事に当たったとみるべきだ」

「私達の事を、小型のダイナスを狩れる腕だと言っていたわ。あの場にいないことが問題にならないかしら?」

「でも、何も言ってなかったよ。明日確認しても良いと思うけど?」


 確かに、俺達のレベルを言っただけだ。それに俺達が村の外で寝泊まりしていることは話した気がする。まあ、義を見てせざるは……なんて言葉があるくらいだから、援助はしても良いけど、タイミングが難しいな。

 合図でもしてくれれば良いんだけどね。俺達にどこまでできるかは分からないけど、人数が必要な時なら参加しても良いんじゃないかな。


「連絡手段が無いと言うのも問題ね。ここに私達がいるんだから、必要な時には石でも投げてくれれば分かると思うわ」

「そうですね。一番簡単ですし、それぐらいでヤグートⅡが壊れることも無いでしょう」


 レブナン博士が恐竜が踏んでも大丈夫だと言ってたぐらいだからな。握り拳位の石をブリッジに投げて貰えばその衝撃解析して警報を出せるだろう。


「村の北門が開いたら、ギルドに行って状況を確認してみましょう。その時に、連絡手段を話しておけば問題ないと思います」


 北門には数人の見張りが残っているだけだ。南門には農民が背負いカゴを門の近くに並べて座り込んでいる。まだ外出許可は下りていないようだ。

 ギルドの中を覗いてみると、数人のハンターがテーブルの上に地図を広げて考え込んでいる。

 彼らが、この場を仕切っているようだな。人間族ではなく、トカゲ顔の竜人族。ネコ族それにイノシシのような牙をもった獣族の連中だ。

 やはり、高いレベルとなると人間族では無理が出るってことなんだろうか?

 

 しばらく見ていると、1人のハンターが彼らに何かを報告している。途端に議論が始まり、テーブルの地図を指さしながら頷いているぞ。

 やがて、意見がまとまったのか、カウンターに1人が向かった。

 そんな事があって、10分もしない内に、南北の門が開く。北の門からは数人のハンターが足早に北に向かった。たぶん、ラプトルの足取りを確認しに向かったのだろう。


「北門が開いたわ。どうする、直ぐに向かうの?」

「そうですね。早めに行きましょう。一応、武装はしていきましょう。かなり気が立っているはずでから」


 いずれ俺達の装備が分かるはずだ。ここは戦闘服姿で臨んでみるか。装備ベルトを着け、背中にベネリを背負う。戦闘帽を被って、お揃いのサングラス姿はどう見ても特殊部隊の隊員だよな。

 ギルドに一旦顔を出して、その後は球根採取という事で、ナップザックを小さく畳んで腰のバッグの上にストラップで止めておく。

 水筒の水を補給しようとして、水のボトルが残り少ないことに気が付いた。小さなボトルを1つ、エリーに持って貰い、空の水筒を持参することにした。井戸を借りて補給しよう。


 ヤグートⅡから下りて、レミ姉さんがエアロックの扉をロックする。

 柵沿いに歩けば直ぐに北門にたどり着く。

 俺達を見て、ハンターや門番が目を見開いた。まあ、無理はない。戦闘服姿は体の線が出てしまうからな。この村でこんな恰好をしている者は見掛けなかったからね。


「おまえら、無事だったか……。だが、とんでもねえ格好だな」

 心配して、呆れているようだ。

 前有の男達も頷いてるし、女性のハンター達はぽかんと口を開けている。

「様子を見てどうしようかと悩んでいたところです。ハンターなり立てですからね」

「なるべく村の中にいた方が良いんだが、あの荷車の大きさじゃ、入れるわけにもいかんしな。心配していたんだが、まあ、何事も無く済んだようだ。しばらくは遠出しない方が良いぞ」


 村人ではなくても心配してくれたのは、ありがたい話だ。3人で礼を言うと、ギルドに向かう。

 俺達の姿を見たご婦人が口に手を当て、男達が口笛を吹いて姉さん達に見入っている。やはり不味かったかな……。

 俺の前を歩く2人はそんな周囲にはお構いなしだ。どんどん先に歩いて行くと、ギルドの扉を開けた。

 俺達の姿に人間族のレイドナさんはびっくりして目を見開いたままだ。ネコ族のミゼルさんは「うにゃ!」って声まで上げてたぞ。その声で奥のテーブルの4人が俺達をジッと眺めている。


「今朝の騒ぎを聞きたかったんですが……」

「ラブートにゃ。小型のダイナスがやって来たにゃ。ダイナスが村に来た時は、村在住のレベル10以上のハンターはギルドに集合にゃ。そう言えば、初めに説明しなかったにゃ……。ところで、その恰好は東の流行なのかにゃ? この村ではそれはちょっとにゃ」

「その上に何かを羽織れば良いと思います。かなり活動的ですから、素早く動くための服装は分るんですが……」


 ポンチョでも羽織れば良いか。姉さんは洋裁が得意だったから簡単なワンピースでも良いんじゃないかな。俺にはコートのように作って貰えば助かるな。


「レベル10なのか?」

 奥のテーブルから俺達に声が掛けられた。

「一昨日、ハンター登録を行いました。頂いたカードはレベル12です」

「話がある。来てくれないか」


 竜人族の男が俺を見て言った。

 たぶんハンターとしての基本事項を教えてくれるのだろう。

 俺達は4人のテーブルに向かうと、隣のテーブルから椅子を運んで座った。


「何でしょう?」

「レベル12を最初から着けられるのは、あまり聞かぬ話だ。少し話がしたいのだが」

「ラプトルが近場にいるとなると厄介です。今日は採取をせずにいようと決めましたから、大丈夫ですよ」


 4人のハンターは村の筆頭ハンター達らしい。話をすると色々なことが分かってきた。

 気になっていた銃の事も、「これか?」と言いながら俺達に見せてくれた。俺のベネリを見せると4人が唸っている。鉄を知らないから、異質な金属と見ているようだけど、使い方が分からないようで直ぐに戻してくれた。


「薬草を採取すると言っても、それに専念すれば確かに獣やダイナスと戦わねばならないだろうな。単なる薬草狩りの連中とは違うようだ。この村の星持ちは俺達4人以外に1パーティ5人の9人だけだ。今朝は、宿中のハンターを集めたのだが、お前達はどこにいたのだ?」

「北門の東にある堀の近くに乗り物を停めています。俺達3人なら寝泊まりできますから、そこにいました」


 村の外と聞いて彼らが驚いている。頑丈だから今朝位のダイナスは防げると言って納得させたが、やはり問題は連絡手段になった。


「俺達も考えたんですが、柵から槍2本分位の距離に停めてますから、柵から石を投げて合図して貰えば、俺達にも分かります。荷車から出られなくとも、声は買わせるはずです」

「確かにそうだな。それで行くか……。それで、話は変わるが、その恰好は少し考えてくれ。若いハンターもいるんだからな。動きやすさを追求したんだろうが、お前達の故郷では構わぬが、この王国でその恰好は問題がありそうだ。言い訳するにも何か羽織っていたほうが良いな」


 郷に行けば郷に従えって言葉もあるぐらいだからな。羽織る位は何とかなるだろう。レイドナさんも同じような事を言ってたしね。



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