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PH-026 白亜紀探索の準備をしよう


「メガラニアの祖先かしら? 肉食トカゲの一種だろうけど……」

 レブナン博士は冷静だな。俺とエリーは冷や汗ものだぞ。

「屋根の機関砲では近すぎるわ。後数m離れてくれればいいんだけど」

 レミ姉さんの方も、上手く照準が合わないみたいだな。となると、俺の出番って事になるんじゃないか?


 シート脇の銃ホルダーから。散弾銃を取り出した。

「お兄ちゃん。ちょっと待って!」

 エリーが席を離れると、車内の保管庫走っていく。たまに振動があるから、相変わららずオオトカゲがヤグートを狙ってるんだろう。


「これを使ってみて!」

 数個の銃弾を渡してくれた。黒い薬莢だな。通常のスラッグ弾の方が大きく見えるんだけどね。 

「中に炸薬が入ってるの。発射後0.2秒だよ」

数十m先ってことか。巻き込まれることは無さそうだけど……。ありがたく頂いておく。テーブルの反対側の壁に付けられたライフルケースから、予備のショットガンを取り出す。M600と刻印された散弾銃はポンプアクションだ。ヘビーでショートと言う変わった銃だから改造してるな。ストックが無いから取り回しが楽な銃だ。こんな反動の強い銃が撃てるのもナノマシンでの強化のたまものなんだろう。

チューブマガジンに5発詰め込んで後部のエアロックに向かう。


「お兄ちゃん、直ぐ外にトカゲがいるからエリーの合図で出て頂戴!」

「ああ、分かった。ロックだけ外して直ぐに飛び出せる状態で待ってるぞ!」


 このまま後ろに下がっても、オオトカゲが付いて来そうだ。やはり、こいつにはここで寿命を迎えて貰おう。

 カシャリとスライドを動かして初弾を装填した。セーフティは外しているから後はトリガーを引くだけだ。バレル長40cm、グリップは俺の持つマグナム拳銃と同じタイプだ。これを腰に下げても良いんじゃないか? 

 扉のロックハンドルを回して解除する。あとはハンドルを操作するだけで外に飛び出せるぞ。


「お兄ちゃん、準備して。前に動いてる……今よ!」

 エリーの合図で扉を開けて外に飛び出した。

 直ぐにヤグートⅡの車体の下に潜り込む。地上高が60cm程あるから都合が良い。この高さなら奴は潜り込めまい。


 車体前方に奴の体が見える。太い両足の間に腹が垂れているぞ。メタボだな。

 垂れ下がった腹に向かってスラッグ弾を撃ちこんだ。銃声の直ぐ後に腹が弾けとぶ。

 

 グオォォ! と叫び声を上げてヤグートⅡの下を覗こうとしてるが、口先は入っても頭が邪魔をしているぞ。頭がかなり大きく口先がワニのように飛び出しているから、どうしても斜めになってしまうらしい。首が自由に動かないのが気の毒になる。


 ドン!……ドン! と2発を口先に撃ちこんだがかなり皮が固いらしく、皮の表面で炸裂したようだ。肉がえぐれてはいるが、腹程ではない。

 更に2発発射すると後ろに後ずさり始めた。

 弾丸をチューブマガジンに装填していると、ドコォォン! と大きな音がした。たぶん25mm機関砲を撃ったんだろう。音が長く続いたから内蔵した炸薬の炸裂が続いて起こったんだろう。

 

 キャタピラの間からオオトカゲの去ったほうを覗いてみると、小山のようになって倒れていた。やはり、大型の銃弾は威力が段違いだ。もう少し威力がないと白亜期には行けないんじゃないか?


「お兄ちゃん。終わったよ。レミ姉さんがエアロックで体を洗浄しなさいって!」

「了解だ。車体の下に潜ってたからな。変な虫でも運ぶと厄介だ」


 車体から這いだして、エアロック室に入る。銃や装備を専用の容器に入れて密閉すると、戦闘服のままでシャワーを浴びた。薬剤が混じっているのか少し消毒臭いぞ。

 やがてシャワーが真水に変わり、1分もすると今度は温風に変わる。

 5分程、エアロックで体の洗浄を受けた後で、エアロックの車内側の扉を開けて皆のところに戻った。


「ご苦労さま。ヤグートⅡの後退はエリー達に任せないさい」

 博士のねぎらいの言葉に軽く頭を下げる。前部席の2人が俺に手を伸ばしてきたので、軽くハイタッチをした。

 コーヒーを飲みながら、バックで森を出るヤグートⅡの動きを見守る。周囲の確認はエリーの横でレミ姉さんが行っているようだ。


「森を出たところで一旦停止するわ。食料が残っているから、もう1日、飛行船で周囲を調査したいんだけど……」

「かまいませんよ。この森林の全体像や周囲に広がっている小さな森の分布も気にはなります。広範囲な調査で次の標本採取も容易になるでしょう」


「助かるわ」と嬉しそうに呟いてるけど、次の来るのは俺達じゃないんだよな。たぶん母船を派遣するんじゃないか?

 母船を使った長期的調査を行う上で、周辺の地形図や植生それに生物の分布等は是非とも事前に調べておく必要があるだろう。場合によっては飛行船を母船に積むことも視野に入れた方が良いんじゃないか?


 俺達は、結局2日程滞在期間を伸ばして、時空間ゲートをくぐる事になった。

 中々、博士が粘るんだよな。まあ、滅多に来ない場所だから気持ちは分からなくもないんだけどね。

 

 時空間ゲートを出て、ヤグートⅡの洗浄が入念に行われた後で俺達は車外に出ることになった。簡単な事後ミーティングをリンダさん達と行えば俺達はひとまず解放される。

 レブナン博士とは会議室を出たところで別れたけど、通路を俺達とは逆の方向に走って行った。たぶん標本の分類に立ち会うんだろう。博士が忙しくなるのはこれからのようだ。

 

 共用区に立ち寄って食事を済ませると、今日はお開きだ。エリ―達は隣の部屋に入っていく。今夜は久しぶりに1人で寝られる。

 戦闘服を脱いでシャワーを浴びると、そのままベッドに倒れ込んだ。


 ゆさゆさと体を揺すられて目が覚める。目を開けると、二パっと微笑むエリーが目の前にいた。

「お兄ちゃん、もう10時過ぎだよ。起きて次の準備をしなくちゃ」

「ああ、起きるから、そこの服を取ってくれないか」

 エリーが綺麗に畳まれた戦闘服を渡してくれた。下着を着て戦闘服を身に着けベッドから抜け出ると、レミ姉さんがソファーで仮想スクリーンを眺めていた。


「ようやく起きたわね。どうやら、レブナン博士は徹夜のようよ。かなり面白い標本を私達は集めたらしいわ」

 それなら、ボーナスも期待できそうだ。やはり銃の強化は必要だな。これはエリーに頼んでおこう。

 3人で共用区に出掛けて、食事をすると売店でお菓子と飲み物を買い込む。ついでに切れかけたタバコを20個程買い占めた。

 俺の部屋に戻ると、次の行き先に付いて話し合う。


「やはり、白亜紀って事ね。確かに両者の比較をしたいのは理解できるわ。博士もたぶん賛成してくれるでしょう」

 レミ姉さんがそう言って、端末でレブナン博士と連絡を取り始めた。

 エリーは俺の要求をカタログを睨みながら吟味している。たぶん対戦車ライフル辺りだろうけど、あれって重そうだからな。操作がしやすいものを選んでくれと言ってあるからその辺りが問題なんだろう。

 俺は、白亜紀後期の生物をリスト化して眺めている。どれも凶暴そうだぞ。恐竜の最終形態みたいなやつばかりだからな。

 もしも、恐竜の大量絶滅が起こらなかったらどうなったんだろう?

 恐竜の種類はジュラ紀辺りで最大になって、白亜紀で淘汰が進んでいるように思える。となれば、食物連鎖の頂点に立つのはいったいどの種類なんだろうな。


「レブナン博士は次の調査に参加出来ないと言ってるわ。前回と今回の標本の調査でてんてこ舞いだという話よ。荷物はそのままでいいと言ってるから、また一緒に出掛けるつもりはあるみたいね」

「食料は、一月分で良いんでしょう。でも博士がいないと飛行船を動かせる人がいないわ」

「飛行船は一旦下ろして少し改造するようよ。終わり次第、母艦に積むと言ってるわ。無人機は私が操縦できるし、位置は特定してあるから調査に問題はないと思う」

 エリーの心配を姉さんが答えてくれた。俺も少し気になっていたところだ。

 

「不足した物が無かったか再度見直した方が良いな。俺は銃の強化だけで良い。ヤグートⅡの床下はちょっとしたトーチカだな。安心して大型生物に対峙できる。服が汚れるから替えはいくつか必要だぞ」

「着替えを、もう1セット持っていきましょう。それと、シャワー室で着替えが出来るから私服を持って行っても良いわよ。戦闘服を何時も着てると窮屈でしょう」


 俺はそんな事は無いと思うけど、エリーが喜んでるところを見ると、やはり窮屈なのかも知れないな。まあ、着替えはエリーに任せておこう。

 2人の話を耳にしながら恐竜の姿を眺める。そうだ、やはりカメラも必要だろうな。ブリッジの上からなら望遠で良い画像が撮れるんじゃないか?

 問題は増える荷物の置き場所だな。前部操縦席の後ろならトランクを左右に1個ずつ増やせそうだ。薄いトランクなら、後部席のテーブルの反対側にある銃ケースの下に置けそうだな。後は……。


 そんな感じで俺達の束の間の休息が費やされる。

 ヤグートⅡの点検整備が1週間ほど続いたから、エリーのカタログショッピングの品もどうやら届いたようだ。

 エリーの選んだ銃は50口径のライフル銃だった。ボルトアクションの狙撃銃と言う感じだがスコープは付いていない。至近距離で使えって事だろうが、重いから、外の保管庫にライフルケースごと入っている。弾丸は5発のクリップを6個用意してくれたそうだ。まあ、あるだけ安心ってやつかな。ショットガンの炸裂弾もたくさん買い込んでくれたらしいから、そっちを多用すれば良いだろう。

 戦闘服の替えと私服はシューズ込みでトランク1つに詰め込んだらしい。となると、もう1つのトランクは全て銃弾じゃないだろうな? 

「これはお揃いよ」と言って、レミ姉さんがキャップとサングラスを渡してくれた。多機能サングラスではないらしい。


「これで準備が整ったわ。いよいよ明日に出掛けるけど、忘れ物は無いわね」

「だいじょうぶです。水のカートリッジも余分に積んでありますし、装備だって予備を持ちましたからね」

「エリーはこれも持っていくんだ!」


 そいう言って取り出したのはMP-6じゃないか。威力不足は数で補うつもりだな。

「ラプトル類には良いかもね。では、明日起こしに来るわ」

姉さんはエリーと部屋を出て行った。2個のトランクが残っているけど、これは明日持っていくんだろう。

 どれ、俺も早めに寝よう。1人少ないから明日は色々とやることがありそうだ。



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