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PH-018 4人パーティ?

 共用区画で軽く食事を取った後、俺の部屋に3人が集まった。

 とりあえずは、カンブリア期の採取は成功なんだろう。だが、課題は色々と残っている。


「もう少し、ヤグートⅡが大きいと良いな。後ろに1m伸びれば、シャワー室の他にエアロックを作れるよ」

「中生代を考えると、武器が貧弱ですね。水中と陸上で使えるものが欲しくなります」

「私は、活動期間かな。5日では少ないわ。最低でも10日は動けないと、私達の調査には不足だと思うの」

 そんな要望を、レミ姉さんが端末を使って纏めている。果たしてどれが採用されるかは微妙だが、全部対応すると新たに調査機を作り直すことになりそうだ。それは無理じゃないかな。


 3日程過ぎたところで、詳しい調査結果が出てきた。新種と沼の水の分析でラボは大忙しらしい。俺達専属のラボを作る動きさえあるようだ。


「かなり査定が上がってるわ。私達の要望はかなり聞いてくれるみたい。ヤグートⅡの改造に一ヶ月は必要と言ってるから、その間はトレーニングになるわ。ヤグートⅡが引き渡されたら、習熟を兼ねて保養所に出掛けましょう」


「ヤッター!」と、エリーは喜んでるけど、トレーニングって何をするんだろう? 俺はそっちの方が気になるぞ。

 レミ姉さんが渡してくれたトレーニングの予定表を見ると、マンツーマンで専門の教官が教えてくれるらしい。その上ナノマシンの投与が隔日で行われる。この施設に来てから3日連続でナノマシンを投与されて以来のことだが、体の中のナノマシン残量が減ったのだろうか? それなら、2、3回の投与で十分だと思うが……。


「気が付いた? ナノマシン投与は私達がかなり自由に各時代を動くためらしいわ。無機ナノマシンと有機ナノマシンを混合して投与することで、更に身体機能と代謝それに免疫を活性化すると聞いているわ」

 

 スーパーな体を作るって事か? それでも限度があるから前より少しマシな体に慣れる程度なんだろう。それでも、その体を上手く使えるようにと、マンツーマン指導があるって事だな。


 そんな事で、次の日から俺達のトレーニングが始まった。

 午前中3時間、1時間の休憩を挟んで午後は4時間。肉体トレーニングが中心だからかなりハードではある。

 近くの岩山で、岩登りや山道のランニング。対人戦闘訓練は、長剣、片手剣、杖に体術。射撃訓練では357マグナムリボルバーの片手射撃までもが入っていた。

 確かに、このトレーニングは身体能力が向上しないと、途中で体が持たないな。

 部屋に帰得ると、ベッドにふらつきながら倒れるような感じだ。果たして、一か月持つんだろうか? そんな事を考えながら深い眠りにつく日々が続く。


 ある程度訓練に体が馴染んできた時、俺達のトレーニングが終了した。

 どうやら、ヤグートⅡの改造が済んだらしい。

 再び、俺の部屋に3人が集まって、改造後のヤグートⅡの仕様を確認する。

 ジュースやコーヒーを手にして、レミ姉さんが開いた仮想スクリーンに俺達は注目した。


「大きさは、一回り大きくなっているけど、車高は変わらないわね。全長は……」


 全長は1.5m程長くなっていた。後部にエアロックが付けられ、簡易除染用の3方向シャワーまで付いている。

 操縦席の後ろにあった分析装置は、対面式のテーブルの中に組み込まれている。テーブルは上下するらしく、下降させると両側のベンチシートと高さが同じになって、ベッドにもなるようだ。天井にもベッドが固定されている。下げると下にあるベッドと2段ベッドのような関係になるようだ。

 天井にあった、ハッチは横の通路の上に移動している。タラップは、通常は通路の天井に固定されている。

 シンクも少し大きくなっているから、エリー達の料理の腕が見られるだろう。隣の収納庫はかなり大きなものだ。食料以外にもいろいろと入りそうだな。

 シャワールームは、エアロックの隣にある。かなり大型のキャンピングカーに見えるな。


「動力はマイクロ核融合炉で、出力2千KVA。予備バッテリーは50KVh。燃料補給は必要なさそうね。アイドリング状態なら100年以上可動しそうよ。無人機は2基天井に収容しているわ……」


 武装は、25mm機関砲1門。弾薬は200発とのことだが、戦争に行くわけじゃないから、十分だろう。

 速度は前と同じらしい。携行できるシリンダーは30個となっている。長期的に活動する場合に備えて、小型のシリンダーが10個入った車外収納庫も付いている。


「ほとんど要求が通ってる!」

「ああ、それだけ期待されてる、って事だな」


 俺の言葉にレミ姉さんが頷く。ギルドにとって、これ位の改造費用は十分ペイ出来ると踏んだのだろう。

 それにしても、核融合炉とはな。どれだけ科学が進んでいるんだろう? 時空間ゲートの科学から比べれば容易い技術なのかもしれないけどね。

 

「明日は買い物よ。この南の島に行くんだから」

 そう言って、スクリーンを切り替えると、ヤシの茂る砂浜が綺麗な島の画像に切り替わった。

 泳げるって事か? それなら色々揃えないといけないな。

「給与は、ボーナス込みで振り込まれてるから、カタログで色々と選びましょう」

 エリーが嬉しそうな表情で、レミ姉さんの隣に移動する。


「お兄ちゃんは欲しいものがある?」

「タバコとビールが欲しいな。後は、保養に来ている男性と同じような衣服を買ってくれれば良いよ」

 買い物はエリー達に任せよう。色々見てると頭が痛くなりそうだ。

 コーヒーを飲みながら、カタログショッピングに励むエリー達を見てるだけで十分だ。

                  ・

                  ・

                  ・

 

 すっかり別な乗り物に見えるヤグートⅡに、俺達が乗り込んだのは2日後のことだった。

 操縦席にエリーが座り、隣の席には俺が座るのは今までと同じなんだが、後部のテーブル席には、レミ姉さんと何故かしらレブナン博士が座っている。その姿も俺達と同じ戦闘服姿だ。どうやら、新たな俺達の仲間らしいのだが、どちらかと言うと押し掛けて来ってところだな。

 呆気に取られた俺達に『今日から、私も一緒よ!』って大きな胸を張っていたからな。

 とりあえず、博士なんだから俺達よりは色々と知っているだろう。博士の大きな手荷物をヤグートⅡの保管庫にしまい込んで出掛けることにした。


「目的地は航路図に入力してあるから、ナビの指示に従って運転すれば良いわ。施設から一旦北西に向かって運河に向かい、運河を南に下がると海に出るわ。海上を丸1日進めば目的地よ」


 どうやら、3日は掛かりそうだな。俺達の休養と一緒に、ヤグートⅡの試験も兼ねているようだ。

「出発するよ!」

 エリーの言葉と共に、ヤグートⅡが特徴的なキャタピラ音を立てながら、車庫を後にする。


 数台の調査機が整備や改造を受けている。やはり、標準的な調査機をクルーの要望に応じて改造している様だ。

 建屋を出ると、施設の道路に出る。ゆっくり移動しているが、他の車両とすれ違う事もない。車両で外に出るって事が少ないのかも知れないな。

 敷地境界の警備所で一旦停止すると、レミ姉さんが無線機で警備員と話をしている。


「OKが出たわ。エリー、右折して道路を北上してくれない。途中で荒地に出る事になるけど、ナビの指示で動かせば良いわ」

「行くよ!」


 右折して北に向かって伸びる道路を真っ直ぐ進む。スピードも増してきたけど、キャタピラが切れないか心配だな。

 仮想スクリーンを展開して、ナビの情報と速度を表示させる。いつの間にか、時速45kmも出しているぞ。


「クルージング機能が付いてるから楽だよね。ナビを監視してれば良いんだもの」

「いつ、道を横切る奴が出て来るかも分からない。しっかり前を見ててくれよ!」

「だいじょうぶだよ。センサーで前方20mに障害があれば停止するもの」


 20m以内に出たらどうなるんだろう? ひょっとして、いちゃうってことか? 確かに車は急に止まれないし。そんな短距離で車を止めると俺達が前の防弾ガラスにぶつかって、タダでは済まない感じではあるけど……。


「前方の標識を過ぎたところで左折するよ!」

 500m程先の三角の標識は、この先悪路の標識だ。そこを左って事は、荒地を突っ切るつもりだな。

 ストローが付いた半密閉カップからコーヒーを急いで飲み干す。エリーは操縦席のアームレストに着いたカップホルダーにキープしているけど飛び出さないのかな?


「振動は抑えてくれたのかしら?」

「個々の車輪に長ストロークのアブソーバーを組み込んでいるわ。試験では半分以下になってるわよ」


 そんな会話が後ろから聞こえて来る。少しは改善されてるって事だな。

 ヤグートⅡが急角度で左折した。シートベルトが無ければ放り出されたいたぞ。


「左折終了。巡航速度で方向が変えられるのね」

「かなり、過激に扱っても良さそうね。結構危ういこともあるのよ。これなら安心だわ」


 俺としては、曲がる時には速度を落として欲しいぞ。

 荒地に入って、速度を落とすのかと思っていたが、これでは道路と変わりない。それでも、改造のおかげなのかキャタピラの振動が直に伝わる振動がだいぶ軽減している。これ位なら、ちょっと外で一服しても良さそうだ。

 エリーに席を外すと伝えると、後部に向かい、通路の上にあるラダーのロックを解除して、ラダーを登る。天井のハッチを開いて、屋根によじ登る。

 出たところは、30cm程の高さの手すりが1.5m程の四角い区画を作っている。そこは板張りだから、ちょっとした観測場所になるな。カバー用のシートが後ろに丸めてあるのも良い感じだ。

 足を延ばして座ると背中が丸めてあるシートに当たるし、足は手すりを付けるために設けられた柱を踏ん張るようにすれば体が固定される。よほどの事が無ければ投げ出されることも無いだろう。

 タバコを1本取り出して、ジッポーで火を点ける。

 まだまだ荒地を進まなければならないようだ。目印のなるようなものは、所々に誰かが忘れたように置いてある巨岩とわずかな灌木だけだった。

 


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