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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第2章 思い出の影
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第5話

普通ならば感動の再会…というシチュエーションのはずであるが、何やら張り詰めた空気が流れているように感じられる。

その原因は…アスティにあるようだ。


だが、ジスクはそんなことに気付きもせずに思いがけぬ再会に心躍らせているようであった。


「久しぶりだなぁ。確か5年ぶりだっけか? あれ以来会ってなかったからなぁ。元気でやってたか?」


嬉しそうに話しかけるジスクに対し、アスティは相変わらず怒気のこもった視線で一瞥する。


「よくもぬけぬけと…! 貴様らのせいで私がどんな思いをしたか…知らないとは言わせぬぞッ!」


吐き捨てるような彼の言葉はジスクを容赦なく打ちのめしてゆき、ジスクと言えばまるで心が抉り取られたような感覚に襲われる。


そして、忘れかけていた──…否、決して忘れてはいけないあの時の記憶を手繰り寄せた。


──そうだ…あの時、オレは……。


ジスクの脳裏を過るのは、数年前のあの記憶。瞼の裏に今でも鮮やかに蘇る。

俯いてしまったジスクを尻目に、アスティはなおも続ける。


「貴様が共犯者だったとはな…。フン、丁度いい…あの日の報いを受けろッ!!」


アスティはそう叫ぶなり、手にしている武器──柄の両端に刃のついている、ナギナタのようなものを、ジスク目掛けて突き立てた。


しかし、ナギナタはジスクに突き刺さる事は無かった。

ジスクが、咄嗟に手にしている剣で受け止めたからである。

しかし、受け止めた時の衝撃はすさまじく、ジスクは数メートル吹き飛ばされてしまう。

彼は体勢を整えると、決意を秘めた力強い双眸をアスティに投げかけた。


「確かに…許されるなんて思っちゃいねぇ。でも…それでも…オレはここで死ぬ訳にはいかねーんだッ!」


今度はジスクが大きく振りかぶって剣を振り下ろす。だが、その一撃は空を斬っただけであった。

それもその筈、アスティが咄嗟に横にステップを踏みあっさりと回避したからだ。まるで風のような身のこなしである。


「やっぱ、一筋縄じゃいかねーか」


「当たり前だ。そもそも、私に一度たりとも勝った事が無いではないか」


ジスクの言葉に、フフン、とアスティは嘲る様に鼻で笑ってみせる。

どうやらそれが気に触ったらしく、ムッと眉をしかめて不機嫌そうにむくれるのはジスクだ。


「失礼な!一回は勝っただろ、一回は! …まぁ、1勝27敗だけど」


「たかが一回、偉そうに主張する事でもあるまい。…私にとっては、そんな事さえどうでもいい。貴様を今此処で始末出来さえすればな」


…どうやら、論点が少しばかりズレてきているようだ。

ジスクは気を取り直し、またしてもアスティに斬りかかる。


──ギィン!!


金属のぶつかりあう耳障りな音だけが響き渡る。

アスティが、ジスクの剣を受け止めたからだ。

しかし、アスティが刃で受け止めるであろう事は想定済みであったのか、ジスクは動揺する事無くさらに剣を握る手に力を込める。


「うおりゃあああぁぁっっ!!」


ほとんど気合いだけで剣を薙ぎ払えば、そのままの勢いでアスティを吹き飛ばした。

吹き飛ばされたアスティは、すぐに立ち上がって体勢を立て直す。どうやら、あまりダメージは受けていないようだ。


「相変わらずの馬鹿力だな…。だが、戦いは力だけではないという事を教えてやる!」


不敵な笑みと共に、そう言い切るアスティ。

彼はゆっくりと、呼吸を整えた。そして、神経を研ぎ澄ます。

体の中に流れる生命エネルギーを感じ取っているかのようだ。


そして、カッと目を見開いた、その時だった。


「……ッ!?」


ほんの刹那の出来事に、ジスクはなす術も無かった。


──風の刃…鎌鼬が、彼の全身を切り裂いたのだ。


痛みと衝撃とで、ジスクはよろめいた。

その隙を、アスティが見逃すはずもなく。


アスティの手にしているナギナタを、ジスクに向かって突き立てる。

まるで雷撃のような速さで一直線に突き抜けるナギナタは、ジスクの身体をやすやすと切り裂いていった。

見れば、ジスクの脇腹には抉り取られたような深い傷が残されていた。傷口からはとめどなく赤い滴が零れ落ちる。


「うぐ……かはっ」


ジスクは小さな呻き声をあげると、堪え切れずその場に膝をついた。咥内に鉛の味が広がり、それが何とも気持ち悪い。

アスティの怒濤の連撃に、流石のジスクも耐え切れなかったようだ。


全身に傷を負っているが、特に傷のひどい部分…脇腹を押さえた。

真紅の血はとめどなく溢れ出て、傷口を押さえたぐらいでは止まりそうもない。

早急に手当てをしなければ、命にもかかわる問題だ。

ジスクはだるそうに溜め息をつくと、


「今のは…練術、か?」


ジスクの問いに、アスティは淡々とした口調で返す。


「ああ。…私の練術は、生命エネルギーを鎌鼬に変化させるものだ」

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