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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第4章 消えぬ想い
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第16話

「大変だとは思うけど、妹さん見つかるといいね」


自信に満ち溢れたメイズにわざわざ水を差すような事を言うのも無粋だろうと思ったのか、リアムは無難にそう返すだけに留めたようだ。


「……あ、そうだ。ちょっと頼みたい事があるんだけどさ……」


メイズにしては珍しく、その切り口は何処となく歯切れが悪い。

エマイユとジスクはそれに気づいたものの、特に気に留める様子は無かったようだがリアムだけは違っていた。

第六感、とでもいうべきか、何となく嫌な予感を察知したリアムの表情は自然と渋いものへと変貌してゆく。

そして、リアムの嫌な予感がばっちり的中する羽目になってしまった。


「アンタ達……冒険者なんだろ? だったらさ、アタシも同行させてくれないかい? あ、もちろん、足手まといにはならないようにするよ。これでもアタシ、射撃の腕には自信あるんだからさ」


と、まるで反撃させないかのように、間髪いれずに捲し立てるメイズ。

一方の3人は、どうしたものかと険しい表情を浮かべるばかり。

特にエマイユの顔つきは神妙なもので。


確かにメイズの言いたい事はよく分かるし、彼女の邪魔をしようとは思わない。

こちらに事情が無ければ、二つ返事で了承している所だ。

──あくまで事情が無ければ、であるが。


3人はエターナルをめぐり、フォルス帝国軍と対立しまっているのだ。

もし、メイズをパーティに加えてしまえば、無関係な彼女を帝国軍とのゴタゴタに巻き込んでしまう事にもなりかねない。

最悪、彼女にまで危害が及んでしまう。


それだけは、どうしても避けなければならない。

彼女には申し訳ないが、ここは丁重に断ろうと口を開きかけた時だった。


メイズがさらに、縋るような瞳で懇願してきたのである。


「こんな事頼むなんて、常識外れもいいトコだって事も分かってる。でもアンタ達ぐらいしか頼める奴なんていないんだよ……! もちろん、アンタ達の旅の邪魔はしないし、妹探しを無理に手伝ってもらうつもりも無い。アタシが旅に慣れるまでの間だけでもいいから、頼むよ……!」


あまりの切迫した雰囲気に、3人は断りの言葉をぐっと飲み込んでしまった。

あっさり彼女の決意を切り捨てるのも憚られるからだ。

だからと言って、安易に了承する訳にはいかない。

3人は、メイズに聞こえないように声をひそめながら密談を開始する。


「ねぇ、どうするの? 何か、断りにくいよね」


「じゃあいっその事、メイズの頼みを引き受けてみっか?」


軽いノリで、そう提案するジスク。

だが、エマイユは何度も首を横に振れば断固反対の姿勢を取った。


「そんな簡単に言わないで頂戴! 私達が置かれている状況、分かっているでしょう!? これ以上、誰も巻き込むつもりは無いわ」


エマイユはそう叫ぶと、そのまま目を伏せてしまう。


そんな様子を見て、ジスク達も釣られるように気まずそうに視線を地面へと落とす。

──彼女の気持ちは、痛い程分かるから。


だが、リアムは何とかならないものかと、考えを巡らせた。


「でも……いくら軍人だからって、四六時中ボクらの事追いかけ回してる訳でもないし……。軍人達が来る前までなら、同行してもいいんじゃない?」


リアムの提案に、ふむふむ、とジスクも納得しているようだった。

だが、相変わらずエマイユは否定的である。


「そんなの無理だわ。巻き込まれてからでは遅いのよ?」


「大丈夫だって。何とかなるだろ。現に、オレ達だって捕まらずにいるんだし、メイズだってずっと同行する訳でもねーんだからさ」


にかっと笑いながらの、ジスクのこの台詞。

楽天的なのか、それともそれなりに自信を持っているのか……どちらが真意なのかは読み取れなかったが。


「そ、そうだけれど……。でも、たまたま運が良かっただけかもしれないじゃない」


「でも軍人達を退けられたってのも紛れもねー事実だろ? 悪運の強さには自信あるしさ、へーきへーき何とかなるって」


「あのねぇ……。全く、貴方の能天気さが羨ましくなるわ」


「へへっ、すげーだろ」


「別に褒めてはいないのだけれどね」


へらりと笑い飛ばすジスクに、徐々に反論する気力さえ削がれてしまったらしい。

わざとらしくは肺の奥に溜まった重苦しい息を吐き出せば、エマイユの表情には諦めの色が浮かんでいた。


そんなエマイユの表情を見るなり自分の意見を汲んでくれたのだと判断したのだろう、今度はメイズへと向き直る。

そしていつになく真剣な面持ちでこう問いかけたのだ。


「オレ達にも色々事情があってな。もしかしたら、アンタも巻き込んじまうかもしれねぇ。……それでも、いいのか?」


だが、メイズの答えは明確であった。


「あったりまえだよ! そっちにも事情があるってのは、分かってるつもりさ」


それを聞いて、ジスクとリアムは思わず顔を見合わせた。

エマイユの方も、断るだけ無駄だと思ったのか、諦めたように溜め息をついた。


ジスクは満面の笑みを浮かべ、こう締めくくった。


「じゃ、これからはオレ達の仲間って事で、よろしくな!」


…と。

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