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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第4章 消えぬ想い
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第7話

騒ぎを聞きつけた警備兵達が爆発音の中心地──つまりはジスクとエマイユが居る正門前へと終結していく。

そしてあっという間に数十人の警備兵が2人を取り囲んだ。


「おいおいおい…マジかよ、こりゃ…。こんなん、聞いてねーっての」


辺りをぐるりと見渡しながら、冗談混じりにジスクがそうぼやく。


「それにしても、予想以上の警備の厳しさね。まさに千客万来、といった所かしら?」


皮肉が言える程、エマイユも余裕たっぷりだ。

それともただの虚勢なのか──眉一つ動かさず冷淡な表情を浮かべる彼女からはどちらが真実かは読み取れなかったが。


「…で、これからどーするよ?」


ジスクの問いに、エマイユはふふ、と不敵な笑みを浮かべると、


「ここで捕まる訳にもいかないし…。だったら、やるしかないでしょう?」


そう答えると同時に、彼女の手のひらから無数のエネルギーの矢が放たれる。

凄まじい爆音と共にそれは一直線に向かっていき、最後は地面に激突し砂埃を巻き起こしながら辺りを破壊していった。

この光景を目の当たりにして、流石の警備兵も黙ってはいられない。


「なっ…! 何しやがる貴様らっ! 屋敷に侵入するだけでなく、危害まで加えるとは…! どんな手荒な事をしてもかまわん! そこの不届き者を捕らえよ!」


警備兵の中でも、リーダー格の人物が威勢良くそう吐き捨てる。

それを皮切りに、警備兵達が一斉に襲いかかってきた。


「何つーか…最近、こんな事してばっかだよな」


と毒づきながらも、ジスクの手にはしっかり剣が握られている。

此処まで来て当然引き下がるという選択は存在しない。


「よっしゃ! 行くぜ!!」


そんなジスクの内心を示唆するかのように彼の雄たけびが辺りに力強く響き渡った。



◆◇◆



一方、所変わって此方はリアムとメイズである。


辺りを静寂と暗闇が支配する中、耳を澄ませば遠くから何かがぶつかり合うような、そして大勢の人達が争うような喧騒が鼓膜を刺激する。

恐らくは陽動舞台がきっちりと仕事を熟してくれているのだろう。


メイズは遠くから聞こえてくる音に耳を傾けながら、


「お、アタシの予想以上の騒ぎっぷりだねぇ。ちゃんと作戦通りにやってくれてるみたいだね」


「多分、兄さんは何っにも考えないでやってると思うよ…」


満足そうなメイズに対し、リアムは浮かない顔。

まだ忍び込む前だというのに、リアムはこのテンションの低さである。


「ま、おかげで警備はこっちには見向きもしてないみたいだし…。意外と楽に侵入出来そうだねぇ」


「う~ん…兄さんと別行動で、ある意味良かったかも…」


向こうの様子が安易に想像できるのか、げんなりとした表情を浮かべつつぽつりとそう呟くリアム。

確かに、ジスクと一緒に陽動に回っていたら間違いなく彼に振り回される挙句、警備兵達に追いかけ回される羽目になっていただろう。

それに比べれば、此方の方がいくぶんかマシである。


…流石に、女装はキツイものがあるが。


「それじゃ、そろそろお邪魔させてもらおうかね」


メイズはそう言うと、懐からフック付ロープを取り出し、それを塀に引っ掻けると早速塀をよじ登り始めた。

まずはメイズが登り終えた所で下にいるリアムへアイコンタクトを送れば、コクリと頷いてから彼女に続いた。


中に侵入した所で、改めて屋敷をぐるりと見渡してみる。

此処まで豪華絢爛にする必要があるのかどうか首を捻りたくなる程飾り立てた巨大な屋敷が聳え立っていた。


──はたして、無事にいくものかどうか…


不安に感じるリアムに対し、メイズは不敵な笑みを浮かべている。


「待ってろよ~、あのタヌキオヤジ…! アタシを怒らせるとどうなるか、たっぷり思い知らせてやろうじゃないか…!」


ふつふつと湧き上がる怒りを強く握りしめた拳に押し込める。

そんなメイズの様子を眺めながら、


(う~ん、ここまでやると、この屋敷の主人が気の毒に思えてくるかも…)


とか何とか心の中で呟くのはリアムだ。


そうこうしているうちに、メイズは人気のなさそうな窓から屋敷内に入り込もうとしていた。

慌てて、リアムも彼女の後についていった。


こうして、あくまでこっそりと、屋敷内に侵入したのである。


「何か…ここまで静かだと、気味が悪いね…」


辺りを見渡しながら、リアムが呟く。

廊下は必要最低限の明かりしかなく、かなり薄気味悪い。

しかも、ジスク達のおかげで警備兵達はほとんどおらず、耳が痛くなりそうな程の静寂が辺りを支配するばかり。


「それじゃ、ジスク達が陽動してる間に、とっととこっちの用事も済ませようかね」


独り言のようにそんな言葉を残すメイズの双眸には、静かな闘志の炎が宿っていた。

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