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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第4章 消えぬ想い
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第5話

「要するに…忍び込む方は、あくまで穏便に、慎重に。逆に、陽動する方はより目立つように、けれど捕まらないようにする訳ね。確かに、これなら何とかなるかもしれないわね…」


初めは突拍子もないと驚きを隠せなかったエマイユであるが、思いの外熟考されている少女の案に純粋に感心しているようだ。


「そりゃそうさ。失敗は出来ないし何が何でも取り返したいからね。じゃ、アンタ達も、これでいいかい?」


少女はジスクとリアムの方に視線を移すと、意見を求めるようにそう問いかける。

すると、2人は顔を見合わせてから力強く頷いて見せる。。

どうやら、2人も彼女の意見に賛同しているらしい。


その様子を見ると、満足そうににかっと満面の笑みを浮かべる少女。


「よし、それじゃ、具体的な話に入ろうか。まずは、どう二手に別れるかだけど…」


「あ、オレは陽動する方をやりてーんだけど。何か、そっちの方が楽しそうだしよ」


「楽しいって…。そういう問題じゃないでしょ。兄さんは相変わらずだなぁ」


まるで遊びにでも行くようなジスクの台詞に、リアムは力なくツッコミを入れる。


「じゃ、それで頼むよ。あと、アタシは忍び込む方に回らせてもらうよ。取り返すモノの実物を見たことあるのはアタシしかいないしね」


少女の言葉に、一同は異議なし、といった感じで頷いた。

彼女自身の手で取り戻すのが妥当であろう。


「じゃあ、ボクとエマイユさんはどうしようか? 別に、どっちでもいいよね?」


と、リアムがエマイユに話しかけた時だった。

彼の言葉を遮るように、少女が口を挟んできたのだ。


「あ、悪いんだけどさ、アンタ、アタシと一緒に忍び込む方に回ってくれないかい?」


「…え? まぁ、構わないけど…」


少女の提案を断る理由も無かったので、いささか腑に落ちない面はあったものの、引き受ける事にしたらしいリアム。


「それでは、私はジスクと一緒に陽動をすればいいのね?」


「ああ、アンタは陽動の方頼んだよ。じゃ、これで文句は無いね? あ、そういやぁ、自己紹介してなかったね。アタシはメイズ=サジストさ。ま、一つよろしく頼むよ」


少女──メイズにつられるように、3人も名前さえ名乗っていなかった事に今更気づき慌てて自己紹介をした。

自己紹介が終わった所で、メイズが話を切り出した。


「あ、そうそう。リアム、アンタには変装してほしいんだよ。やっぱ、潜入といえば変装だし、その方がバレる心配も少ないだろ?」


「まぁ…確かにそうだけど…」


何か嫌な予感がする。

リアムの第六感が目敏く何かを感じ取ったものの、確かにメイズの言う事も一理あるので曖昧な返事をしておいた。


すると、メイズは意味深な笑みを浮かべ、


「じゃ、早速で悪いんだけど、衣装、試しに着てみてくれないかい?」


「………へ?」



◆◇◆



──どうやらリアムの第六感は正常に働いていたらしい。

しかも、最悪の形で。

まさに、この世の悪夢とはこの事を言うのだろう。


「~っっ!! 何なのさコレ!? これじゃ、変装じゃなくて仮装だよっ!」


リアムも悲痛の叫びが空しく部屋中に響き渡る。

だが、それも無理はないであろう。

何故なら、メイズが用意した衣装──それはメイド服だったのである。

むしろ、仮装というより女装である。

黒を基調としたロングスカートのクラシカルなメイド服ではあるものの、白いエプロンやスカートにはふんだんにフリルがあしらわれリアムが動く度にふわふわと舞うスカートが何とも可愛らしい。


世界中の不幸を背負ったような顔のリアムに対し、大爆笑中なのはジスクである。


「ぶっ…あははは! 何だよそのカッコは!? いくら何でもありえねーだろっ」


腹がよじれんばかりの勢いで、ゲラゲラと腹を抱えて笑い転げ今にも笑い死にしそうになっている。

そんな様子を見て、リアムの表情はさらに暗くなる。

もはや死にそうな顔のリアムを見て、エマイユが話しかけてきた。


「そんなに心配しなくても大丈夫よ。とっても似合っているもの」


「あ、やっぱアンタもそう思ってた? まさか、ここまで似合うとは思わなかったよ」


「…2人共、それ全然励ましになってないしむしろ面白がってるでしょ…?」


全然フォローになっていないエマイユの台詞に、明らかに面白がってるとしか思えないメイズの発言。

遂に我慢の限界に達したリアムが、メイズにくってかかった。


「メイド服着るんなら、ボクじゃなくてエマイユさんでもいいじゃない!」


すると、彼女はチッチッ、人差し指を立てると、


「変装ってのは、正体がばれにくい方がいい訳さ。性別を偽った方が素姓が割れにくいだろ?」


「そ、そんなぁ…。だからってこんな格好恥ずかしいって…!」


最早泣きそうなか細いリアムの悲痛の声が余計悲愴感を誘う。

やっぱり安請け合いするんじゃなかった、とリアムが心の中で呟くものの後の祭りであった。


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