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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第3章 神隠し事件に遭遇!?
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第22話

「……ッ!」


エマイユは、一瞬目を見開くもののすぐに苦渋の表情を浮かべる。

確かに、エマイユ達はフォルス軍に狙われている。

正式に言えば、彼らというよりクリスタルが狙われているのだが。


そこから導き出される結論は、今彼らの眼前に居る者達こそフォルス帝国軍人その人であろう。

いつかは鉢合わせてしまう事は覚悟していたが…やはりこうして現実を突きつけられると胸が軋む。


一方、ジスクはしきりに視線をあちこちに彷徨わせ、その動作はどうにも落ち着きない印象を与える。

どうやら、何かを探しているようだ。

しかし、探している何かは見つからなかったようで、無意識のうちに口からぽつりとこんな言葉が零れ落ちる。


「あいつは…いねーか」


彼の言葉には、何処か安堵の気持ちが含まれているようにも聞こえて。

その気持ちを察したのか、リアムがそっとジスクの耳元でこう囁きかける。


「あいつって…アスティの事?」


「……。」


ジスクは何も答えなかったが、その無言が肯定を示しているのは明白で。

一方、ルナハはやたらと仰々しくジスク達を指差すと、無駄に勝ち誇った笑みを浮かべながら、


「そういう訳ッス! 上からは、速やかにクリスタルを回収せよ、と言われているッス! 抵抗するようなら武力行使しても構わないとまで言われてるから覚悟するッスよ!」


と、威勢良くそう啖呵をきるルナハ。

その口調と態度から、本当に命令の意味を理解しているのか首を傾げたくなる所であるが。

そして、男性が後に続く。


「ま、そーゆうこった。…で? そっちはどうする気だ? おとなしくクリスタルを渡してくれりゃあ助かるんだがねェ」


だが、ジスク達がおとなしく要求をのむはずがない。

フン、と鼻で笑い飛ばしながら一歩も引き下がるつもりはないようだ。


「ケッ、誰が渡すかっつーの!」


まるで子供の喧嘩のような口振りだが、その表情には強固な意志を感じさせる。

どうやらクリスタルを渡す気はさらさら無いようだ。

…尤も、ジスクの体内に入ってしまっているのだから渡しようが無いのであるが。


すると、男性が待ってました、と言わんばかりにこう言い放った。

その眼差しには好奇の色が浮かび、口元は愉しげに吊り上る。


「そりゃ、そんな簡単に話が進んでりゃ苦労はしねェよなァ。こっちは体鈍ってんだ。せいぜい楽しませてくれよなァ!」


その声色には話がこじれるであろう事を望んでいるようにも聞こえて。

なかなか好戦的な性格のようである。

そんな態度を見せる男性に対し、ルナハは慌てて彼を制しようとした。


「ちょっ…! クルーディア少尉、何するつもりッスか!?」


「何って…決まってんだろうが。言って聞かなきゃ実力行使、ってな!」


クルーディア少尉と呼ばれた男性──本名はウェイル=クルーディアであるが──彼はそう叫ぶと同時に、背中にあるデスサイズを構えた。


「くそ、やっぱ一筋縄じゃいかねーか…」


──出来れば穏便に事を運びたかった。

だが、そんな悠長な事は言ってられないようだ。

ジスクは唇を噛み締めながら、悔しげにそう呟いた。


「何ごちゃごちゃくっちゃべってんだ! 死にたくなきゃかかってきな!」


彼は、狂気を含んだ瞳をぎらつかせ、いきなりジスクに斬りかかった。



ガギィンッ!!



耳障りな音が響き渡る。

金属が激しくぶつかりあう音だ。


ジスクが咄嗟に鞘から剣を抜き、何とか斬撃を受け止めたのである。

少しでも剣を抜くのが遅かったら、彼の身体は真っ二つになっていただろう。

それ程までに、ウェイルの斬撃は迅速で強力であった。


そんな光景を目の当たりにしたウェイルは、自分の攻撃が受け止められたにも関わらず、何故だか嬉しそうに唇の両端を吊り上げてみせた。


「おっ、やるねェ。やっぱそーこなくちゃ、張り合いがねェってモンだしな」


彼の口振りから、戦いそのものを楽しんでいる様子が窺える。

だが、ジスクにしてみれば呑気に戦っている場合ではなくむしろ戦わずに済むなら済ませたいと考えているようで、ウェイルの口振りに思わず眉をしかめてみせる。


「なっ、何だってんだよこいつ。好戦的にも程があるだろ」


全く持ってついていけない、と言った様子で思わずそうぼやくジスク。


積極的に攻撃を仕掛けるウェイルをよそに、ルナハはどうしたものかと思案を巡らせる。

いつまでも、ウェイル一人に任せておく訳にもいかない。

彼女は後ろにいる軍人達に向かって、


「それじゃあ、自分達もクルーディア少尉の後に続くッスよ!」


彼女にけしかけられ、軍人達も各々の武器を構えた。

そう言う彼女も、担いでいるバズーカに弾を込めている。


「エマイユさんっ! ボク達も応戦を!」


リアムに言われて、エマイユは一つ頷く。


「やっぱり、こうなってしまうのね…。けれど、私も譲る訳にはいかないわ。何があっても…!」


彼女の決意に満ちた呟きは微風に乗って何処かへ吹き飛んでしまい、他の人に聞こえる事は無かった。

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