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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第3章 神隠し事件に遭遇!?
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第10話

ベンチのかたわらにいる女の子がもう1人の子の肩を揺さぶりながら、何やら必死に声をかけているようだ。


「あれ? あの子って…」


どうやらジスクにとっては見覚えのある姿らしい。

それもその筈。ベンチに座っている女の子は、ラナだったのである。


ジスク達がベンチの方へ向かえば、彼らの存在に気づいたらしい佇んでいる女の子が驚きと訝しさが入り混じった表情を浮かべながら警戒心を露わにする。


「お…お兄ちゃん達、だぁれ?」


少女の警戒心をいち早く察知したらしいエマイユは、まずはそれを解いて貰おうと口元には笑みを湛え努めて友好的に振舞ってみせた。


「私達は、ラナちゃんのお友達なの。ところで…何か叫んでいたけど、どうかしたのかしら?」


エマイユの物腰柔らかな態度に、女の子は警戒を解いたようで恐る恐る上目遣いでエマイユを見上げる。

少女の眼差しに気づいたエマイユがにっこりと微笑んでみせれば、少女は打って変わってパッと人懐こい笑みを浮かべてみせた。


「うん、あのね、ラナちゃんと一緒に遊ぼうって行ったのに、ラナちゃんてばさっきからずっと寝ちゃってて、わたしと遊んでくれないの」


「寝てる…?」


その言葉に眉をひそめるエマイユ。

そして、おもむろにラナの方に視線をずらした。


確かに、ラナの頭は不規則にこっくりこっくり上下している様子。

失礼とは思いつつも顔を覗きこんでみれば、予想通り気持ち良さそうな顔で寝息を立てていた。


「あ~あ。遊んでる最中に寝るなんざ、器用な奴だな」


ジスクが、ラナの顔を覗き込みながら苦笑交じりにそう呟く。

友人が目の前に居るにも関わらずぐっすりと眠りこんでしまうなど、確かに不自然さは拭えない。


すると、やいやい外野が騒がしくなってきたからか、ラナがゆっくりと気だるげに瞼を押し上げた。

相当眠いのか、彼女はしきりに目をこすりながら、


「ん~…あ、あれ? ラナ、寝ちゃってたの?」


まだ彼女は寝ぼけているようで、ぼんやりとした顔をぶら下げながらゆるゆると辺りを見回している。

すると、エマイユがそんな彼女に声をかけた。


「さっきまでずっと寝ていたのよ。どうやら、疲れているみたいね。早くおうちに帰った方がいいわよ」


だが、ラナは納得していないようで、むぅ…と可愛らしく頬を膨らませむくれてみせた。


「むぅ~…でも、おうちを出る時は眠くなかったんだよ?」


口を尖らせるラナを見て、今度はジスクが口を挟んだ。


「そんなら、遊び疲れて寝ちまったんじゃねーの?」


だが、ラナは首を横に振って否定の意を表した。


「違うもん! 今までそんなこと、一度も無かったもん!」


食って掛かるラナを横目で見やりながら、エマイユは神妙な表情を浮かべる。

彼女は、何か思い当たる節があるらしい。

口を手で押さえながら、何やら考え込んでいるようだ。


──これに似た状況、つい最近、どこかで無かったかしら…?

何か、重要な事を見落としているような…

そう、何か……


そこまで考えを巡らせて、彼女はハッと顔を上げ何か閃いた様子。

すかさず畳み掛けるようにラナに疑問を投げかける。


「ねぇ、ラナちゃん。おうちを出た時、何か変わった事は無かったかしら? 何か、いつもとは違うことをしたとか」


「えーっと、えーっと…。何したっけ……あ」


すると、ラナは大人の真似事をするように腕を組んで暫くあれこれ考え込んでいたが、何か思い出した事があるらしく目を見開いた。


だが威勢がいいのはそこまでで、急に地面と睨めっこをするように俯いてしまうなり固く口を閉ざしてしまった。

何か、言いにくい事でもあるのだろうか。


エマイユは、そんな彼女の気持ちを汲み取ったのか穏やかな微笑みを浮かべつつ優しくラナの頭を撫でてやった。


「大丈夫よ。誰にも言わないし、怒らないから。ね? 言ってみて?」


エマイユに促されて、ラナはおずおずと視線を上げた。

相変わらず言いにくそうにしつつ、ぽつりぽつりとか細い声で言葉を紡ぐ。


「あ…あのね…つまみ食い、しちゃったの」


「つまみ食い?」


ぼそっと小声で呟いた為聞き取りづらかったが、確実にエマイユの耳には届いたらしい。

鸚鵡返しをするエマイユを尻目に、ラナは尚も続ける。


「うん。台所にあった木の実、食べちゃった…」


「木の実? それは間違いないわね?」


鬼気迫るようなエマイユの迫力に気圧されながらも、ラナはこくこくと頷いて見せた。


──やっぱり…。

私の考えは、間違ってはいなかったようね。

これで、一つにつながった──…!


漸く脳裏で組み立てていたジグソーパズルが完成したようで、そう心の中で呟くエマイユの表情はどことなく晴れやか且つ自信に満ちていて。

恐らく犯人が誰なのか、確信を得たようだ。


「やられたわ…。どうやら、まんまと相手の罠に引っ掛かってしまったようね…」


と、些か自嘲気味に呟いた。

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