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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第3章 神隠し事件に遭遇!?
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第8話

所変わって、こちらはジスクとエマイユ。

いつの間にか時は流れ、高々と揚がった太陽は街中に柔らかな日差しを送り届ける。

時刻は、正午ぐらいだろうか。


そんな中、街中を疾走する二つの影があった。


「やっぱこっちにもいねーか…」


額の汗を拭いながら、そうぼやくのはジスク。

ジスクがふと視線をずらした先には、同じく浮かない表情をしたエマイユの姿があった。


「こっちも駄目。…いないわ」


俯き加減にそう呟くエマイユは、心なしがっくり項垂れているようにも見えて。


「そっか…。にしても、これだけ虱潰しに探してもいねーなんてな」


エマイユの言葉に落胆しつつ、途方に暮れた様子で深々と溜息を零すジスク。


あれから二人は、何時まで経っても戻ってこないリアムを探して街中だけでなく近くの森にまで出向いて探しに行ったのである。

しかし、リアムの姿は全く見当たらず、万策尽きて困り果てている状況なのだ。


「ったく、どーなってやがる…? どこ行ったんだよ? あいつ」


焦りや不安、苛立ちを自分の中で持て余しているのか、それを吐き出すかのようにブツブツと何やらぼやくジスクに対し、エマイユは神妙な顔つきのまま何やら思案を巡らせている。

暫くそのままで固く口を噤んでいたエマイユであったが、何か彼女の脳裏に閃いたらしくハッと顔を上げた。


「まさか…神隠し…?」


「…え?」


エマイユの言葉に、驚いた様子で瞠目するジスク。

まさか、といった表情で恐る恐るエマイユへと視線をずらせば、


「ど…どういうことだよ?」


「ほら、宿屋の主人が言っていたじゃない。最近…この街で児童が行方不明になる事件が多発している、って」


エマイユが何を言いたいのか、ジスクも漸く呑み込めたらしくハッと表情を一変させる。


「まさか、あいつも…神隠しに遭った、って事か?」


「…確証は無いから、断定は出来ないのだけれどね」


エマイユは、視線を下に落としながらそう返した。

あくまで仮説に過ぎず、確証など何もありはしない為その口振りは歯切れの悪いもので。

ジスクも小さく唸りながらあれこれ思案を巡らせつつ、


「でもまさか、本当に神隠しなんざあるとはな…。しかもそれにリアムが巻き込まれたって…エマイユの言う事も分かるけど信じらんねーよ」


信じたい気持ちと信じられない気持ちがせめぎ合い、纏まらない思考のままで頭を掻くジスク。


確かに、夕べジスクはふざけてリアムに『神隠しに遭わないように気をつけろ』と言っていた。

しかし、あくまでそれは冗談に過ぎずこうして現実のものとしてジスクの目の前に横たわるとは予想だにしていない事だった。

それにいくら冗談で言ったとはいえ、何とも後味の悪いものである。


「私だって、自分で言うのも何だけれど信じられないわよ。それは兎も角、神隠しが一体どういう事件なのか、詳しい事は知らないのよね」


「そーだよなぁ…。んじゃ、まず情報収集でもするか」


ジスクの言葉に、エマイユも賛同の意を示すべく頷いて見せた。


「そうね…何か手掛かりが見つかるかもしれないし」



◆◇◆



「ま、集められんのはこのぐらいだな」


手にしたメモ帳に目をやりながら、独り言のようにそう呟くのはジスクだ。

あれから暫く、2人は情報収集のために街中を駆けずり回ったのである。

そして、街の人から『神隠し』についての情報を集めたのだった。


エマイユもまた、メモ帳に目をやりながら、淡々とした口調で語り始めた。


「まず…事件は一年近く前から発生したようね。被害者はいずれも男女問わず子供ばかり。人数は数十人に及んでいるようね。突然姿を消してしまい、迷子になった訳でも近くの森で遭難した訳でも無い。子供がいなくなった瞬間を見た人はいないから、さらわれたのかどうかも分からないらしいわ。依然、いなくなった子達は消息不明のまま…ですって」


エマイユは一気にそこまで言い切ると、ふぅ、と溜め息をついた。

一方、ジスクもまた溜め息をつくとさりげなくエマイユをチラリと一瞥しつつこう切り出した。


「これってさぁ…今回のと、かなり似てるよな」


「そう、ね…。間違いなく、彼も同じ事件に巻き込まれたんでしょうね」


出来ればそうであって欲しくなかった…そんな2人の藁にも縋るような願いはあっさりと粉微塵に砕け散ってしまった。

2人の間を包み込む空気は鈍りのように重苦しいもので。


しかも、さらに始末に負えないのは神隠しに遭ったのは分かったものの、どうやって探し出せば良いのか、救出すれば良いのか…全く解決の糸口が見つからない事。

つまりは今の時点ではどうにもならない、という事なのだ。

手掛かりも無く、完全に手詰まり状態といっても過言ではない。

2人はリアムの無事を願いつつ、どうすべきか手を拱くしかなかった。

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