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Eternal Link  作者: 天空朱雀
第3章 神隠し事件に遭遇!?
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第4話

──ついさっき別れたばかりなのに、再会早すぎだろ!?

…と心の中でツッコミを入れつつ。


とりあえずツッコミは胸の奥へと押しやってから、改めてリアムは女の子の方へと向き直った。


「君…ここに住んでるの?」


「うんっ! そうだよ!」


リアムの問いに、女の子は元気良く答えてみせた。

すると、ずっと2人のやりとりを見ていた宿屋の主人が、意外そうな表情を浮かべつつ口を挟んできた。


「おや? お客様、娘と知り合いですかな?」


そう問いかける宿屋の主人の双眸からは、一同に対する猜疑の感情を孕んでいて。

さらに主人の台詞から察するに、彼と女の子はどうやら親子のようだ。


一方、ジスク達と言えばどう答えれば良いのか考えあぐねている様子。

知り合いという程親しくもないし、かといって全く持って初対面と言う訳でもない。

しどろもどろになっていると、代わりに女の子が答えてくれた。


「あのね、このおにいちゃん、わたしの怪我治してくれたんだよ! 魔法使いのおにいちゃんなの!」


だから魔法使いではないのに、最早何を言っても無駄か…とリアムは諦めの感情を抱えつつひっそりと心の中でそう呟く。

若干胃が重くなったような気がするが、気のせいだと思い込む事にしたようだ。


すると、主人は合点が言ったようにふむふむ、と頷いて見せた。


「おぉ、さっきお前が言っていた人か」


次いでリアム達へと視線をずらせば、先程までの猜疑心を露わにしていた表情などどこ吹く風、急にパッと表情を和らげそこには警戒心といったものは微塵も感じられない。


「貴方がラナの怪我を治してくれた方ですか! 本当にありがとうございます!」


顔を輝かせて感謝の意を述べながら、強引にリアムの手を取るなり半ば無理矢理握手をする主人。

リアムはちょっと困ったような顔をしていたが、あえて非難の声は上げずにいたようだ。


ちなみに、ラナというのは女の子のことらしい。

嬉しそうにしていた主人であったが、次の瞬間、少し声のトーンが落ちたような気がした。


「それで……、何やら不思議な力で傷を治した、と聞きましたが…本当なのですかな?」


その問いに、リアムはばつが悪そうな表情を浮かべる

彼にとって治癒能力は別段不思議なものでも何でもないなので、正直返答に困っているようだ。


リアムのそんな気持ちを汲み取ったのか、ずっと黙ってやり取りを聞いていたジスクが口を挟んだ。


「別に、そんなんどーだっていいじゃねーか。危害を加えた訳でもねーし。…それとも、何か問題でもあんのか?」


ジスクにしては珍しくそう切り返す彼の口調は何処となく荒っぽく、そして苛立ちを孕んでいるようにも聞こえて。

いちいち根掘り葉掘り訊いてくる主人に、多少なりとも不信感を覚えているようだ。


主人も、ジスクの内心に気付いたようでこれ以上の追及はジスクの機嫌を損ねてしまう──引いては得策ではないと結論付けたようだ。


「そ、そうですね…失礼しました。それでは部屋までご案内しましょう。…ほら、ラナは部屋に戻ってなさい」


「はーい!」


ラナは行儀良く返事をすると、さっさと奥の部屋に引っ込んでしまった。

少し気まずい空気が流れていたが、エマイユがふと、何かを思い出したようで不意にこう切り出した。


「そういえば…一つ訊いても良いかしら?」


「…? 何か?」


主人は思い当たる節が無いようで、きょとんと首を捻るばかり。


「失礼だけど…この街、随分人気がないように思うのだけど…?」


その言葉を訊いた途端、主人の顔色があからさまに青ざめたものへと変貌する。

俯き加減に答える彼の声色は、先程までとは打って変わって憂いに満ちたものであった。、


「…最近、この街では児童の行方不明事件が多発していまして…。原因も全く分からず、皆外に出たがらないんですよ。ですから、この街では『神隠し』と呼んで警戒しているんです」


主人の言葉は、一同を驚愕の渦に叩き込むには充分すぎるもので。

絶句していた3人であったが、ジスクが何かを思い出したように話を切り出した。


「でもよ、ラナ…だっけ? あの子は1人でうろついてたぞ」


すると、主人はばつの悪そうな顔でポリポリ頭を掻いてみせた。


「ええ、あの子には外に出るな、と言い聞かせてたんですけどね…。なにぶん、落ち着きのない子で…こっそり部屋から抜け出したみたいですね」


「なるほどなぁ…リアム、お前気をつけろよ」


ジスクがけらけら笑いつつからかいながらそう言うと、早速リアムが食ってかかった。


「何でボクなのさ? 子供じゃないんだし、『神隠し』になんか遭わないよっ」


「ホントか~? そう言うヤツほど結構危なかったりするもんだぜ?」


「それを言うなら、兄さんの方がよっぽど危ないんじゃないの?」


頬を膨らませながらご立腹中のリアムを見て、ジスクは相変わらず悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

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