第13話
「…よし!」
突然、ジスクが何かを思い付いたように不意に声を上げる。
そして、パン!と両手を叩いてみせた。
2人はその音に驚いたのかぎょっと目を見開きながらジスクへと視線を移した。
すると、ジスクはにかっと笑うとあっけらかんとした態度でこう言い放った。
「昔のコト、ぐだぐだ言うのはこれでヤメ! 何時までも、終わっちまったコト話しててもしょーがねーしな。過去は過去として置いといて、とりあえずこれからどーすっか考えようぜ」
確かに、彼の言う事は尤もである。
2人もこの意見には賛成らしく、頷く事で同意の意志を示してみせた。
リアムはう~ん、と考え込みながら困り果てたように眉をハの字にしている。
「でも、実際の所、どうすればいいんだろう…? きっと、軍人達はずっと追いかけてくるだろうし…。目的もなく逃げてても、キリがないよ」
すると、ジスクがエマイユの方に目を向けた。
「なぁ、エマイユ。何か手掛かりとか、行くアテとかねーのか?」
ジスクの問いに、エマイユは何か思い当たる節があるらしく一呼吸置いてからゆっくりと口を開いた。
「そうね…無い訳じゃ無いけれど」
しかし彼女の中でも確たるものではないようで、その返答は何とも歯切れの悪いもので。
「ど、どういうこと? そのアテって何なの?」
歯切れの悪い口振りながらも、全く何の手がかりも当てもなく模索するより少しでも何かあった方がマシとリアムが食いつき気味に問いかけると、エマイユは静かにこう答えた。
「私達一族の間では、代々言い伝えられている事があるの。何か、大変な事が起こったら…もしも、クリスタルの封印が解けてしまったら…とある場所へ行け、と」
「とある場所…? それって何処なの?」
続きを促すように真剣な眼差しでエマイユを見やりながらさらに畳み掛けるリアム。
ジスクもまた、エマイユの話に関心を示しているようで、2人共彼女の言葉を固唾を飲んで見守っていた。
そんな2人の眼差しに気づいてさりげなく一瞥しつつ、エマイユは小さい溜息と共に口を開いた。
「私の住む村の近くに、遺跡があるの。そこに行けば、何かがあると…そう言われているのよ。普段は、誰も足を踏み入れないような所だけどね」
「へぇ~、成程ね。で、具体的には何があるの?」
あまりに曖昧なエマイユの言葉に、リアムは首を傾げつつさらに続きを促す。
しかし、彼女の返答はリアムの疑問を解消するものではなかった。
「いえ…具体的な事は、何も分からないのよ。何せ、今まで中に入った人は誰もいないから…」
「そっか…」
リアムは気のない相槌を打つと、何やら考え込み始めたらしく口を噤んでしまった。
一方、ジスクの反応と言えばリアムとは全く逆方向のもので。
「よっしゃ! んじゃ、そこに行こうぜ! はい決定!」
満面の笑顔と共に、きちんと考えた上での結論か些か疑いたくなるほどの速さで即答するジスク。
流石にこれにはリアムもツッコミを入れざるを得ない。
「結論早っ! もうちょっと考えてからでいいんじゃ…」
「いーんだよ。どーせ、他に行くアテなんかねーんだしな。考えてもどーにもならないことに、いちいち神経使うだけ無駄だろ」
「むぅ…まぁ、そうだけどさ…」
確かに、ジスクの言うことにも一理ある。
リアムは、頷くしかなかった。…まだ、不満は残っていたようだが。