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左手の薬指。
部屋の明かりをつけた少女が見たものは、
金髪の美少年キューピットと、
彼の持ち物である愛の弓矢だった。
少女はとくに、矢に興味を持った。
神様の持ち物の、とてもとても
美しい矢だったから。
その矢に傷つけられると、
目の前の人に逃げられない恋を
してしまうとも知らずに。
彼が愛の神様だとも知らずに。
少女がそれをそっと持ち上げ、
観察していたとき。
「痛っ…」
その鋭い愛の矢が
少女の左手の薬指に刺さって
小さな傷を作ってしまった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
その夜あたしは、彼に電話をかけた。
「ねえ、薔薇の名前、考えた」
「わあ、どんなの?」
あたしは左手の薬指に巻いた絆創膏を
眺めながら答える。
「キューピット」
最高。そう言いながら、
彼は電話の向こうで笑った。
だから結婚指輪は
左手の薬指なんですって。




