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God Buddy  作者: 燎 空綺羅
第七話「hope」
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7-〈12〉

 キングがからかうイライジャをしっしと払い除け、ジルマッマに尋ねた。

「おい、お袋。また、飯作る手間が増えるかもしれねぇが、いいか?」

「今更だわ、ワイアット。いいのよ。カマンガー君やコリンだって、もう家族みたいなものなんだし。」

 キングはアエーシュマに手を差し伸べた。

「アエーシュマさん。俺ん家を隠れ蓑にしな。力を借りたのは俺だしよ、うちには対人戦の戦力も揃ってて、どの道悪魔共の目の(かたき)だろうよ。パリカーに狙われたら目も当てられねぇ。いざと言う時にアンタがいたら、心強ぇんでな。」

 アエーシュマは考えてから、キングの手を取り、握手した。

「お母君殿の厄介にはなってしまうが……キング君の家族と仲間達の守護であるならば、提案を受け入れよう!ちなみにわたしはアンリ・マユ様から影の国の閉め出しを食らった訳では無いので、対パリカーなら常に監視が出来るッ!!寝床も必要は無し!守備ならば任せたまえよ!!」

 コリンがチラチラ見ている。

「アエーシュマさんさぁ。オペラ歌ってたよな?あれイタリア語?」

「む?君は、コリン君とやらか。あぁ、わたしのオペラはイタリア語やフランス語に精通しているが……」

 コリンが目を輝かせた。

「俺コリン!学校で選んだ副言語がイタリア語なんだけど、俺めちゃめちゃ頭悪くて留年もやむ無しってセンコーがさ!アエーシュマさん、イタリア語教えてくんねえかな?バカでもわかるイタリア語講座で!」

 アーラシュが笑った。

「俺もイタリア語は精通してなくてな。」

 アエーシュマは仁王立ちだ。

「よろしいッ!!わたしが引き受けよう!!君の退屈しのぎのゲイビ鑑賞より、学習は余程健全だッ!!」

「やったぁー!!」

 オーエンが苦笑しながら尋ねた。

「ちなみに、何でイタリア語にしたの、コリン?あんまり芸術趣味は無かったよね?」

「俺将来はイタリアに行って、美味いパスタを食べながら、夢のイタリアンマフィアになってよ、地元の治安を守りてーのよ!」

 なんと、イタリアンマフィア志望だ。

「犯罪は程々にねー。」

「ヤクはアレルギーだっつって、ヤク班には入るなよ?あと、人殺すなよ?」

「わかってるわかってる。だいたい、マフィアんなったら規律正しくするし、誰かの怨みは買わないよ。マフィアの制裁ターゲットは家族からだろ?ゴッドファーザーで観た。俺だってジルマッマを狙われたくないしさ。」

「ありがとうコリン。でも、信頼に値しない悪党であれば、そこそこぶん殴っていいわ。わたしの身はわたしが守るから。」

「ジル!」

「お袋!」

 コリンが笑った。

「俺はジルマッマを狙わせたりしねぇし、きっと俺を受け止めてくれるドンは心ある人だよ。でも、マジでジルマッマは戦う度に強くなってる。やっぱキングの拳の遺伝子って、ジルマッマなんだなぁ。」

 オーエンはふと気づいて、キングに告げた。

「悪いけど、ローレンスさんを病院に送ってから、ハリソンを自宅で寝かせてあげて貰えるかい?あまりのハードワークで、疲れてベンチに座ったまま寝ちゃってる。」

「むにゃむにゃ……ぐう……」

「任せな。ハリソンが大人数を担当したからな……送るぐらいなんてことはねぇぜ。」

 オーエンは、皆の状態の確認が済むと、告げた。

「僕は……バステト達を、助けに行く。今更だけど。イライジャも、来てくれ。」

「いいがよ。俺を黒騎士と敵対させんなよ?お前の望まない結果になっからよ。」

「もちろんだよ。でも、本当に今更だから……助けに行く、とは言っても、黒騎士はもう立ち去った頃合で……」

 イライジャはオーエンの意図を汲んだ。

「バステトのメンタルを、助けに行きてぇと。OK、付き合うぜ!お前よりかは、オレのがムードメーカーではあるしよ。」

「ありがとう、イライジャ。」

「はっ。今更なんだ?行こうぜオーエン!バステト救助の次にキットの居場所確認、たぶん、他にも手伝いがいるだろ?」

 オーエンは、他の手伝いってなんだ、と、記憶を探った。

「……あぁ!エジプト・メイソン・リーに任せっきりのコインロッカーだ!!」

「そゆこと。わかってると思うが、カルト女はカリオストロの奴にかかりきりになるな?バステトは自力での暮らしが待ってる、つまり必要な荷物運びはオレら。」


 ミカエルは先に集まっていた警察にアメジスト(アメシストス)のペンデュラムで催眠術をかけて回り、ヴィンテージ・ドミニオンズの愛車の中に案内された。

「彼らが事故った車は、爆発待ち状態だったから、わたしの愛車に移動させたわ。血は気になるけど、人命優先だし。シートは取り替えが効くから。」

 ミカエルはハワード先生の応急処置から始めた。

「案内ありがとう。サタン、止血……ううん。止血が効いてるから生きてるんだわ。誰が?」

「俺だ。ラジエル様にお祈りってヤツだな……この人を追い詰めた奴等は、妹の被害者でも、あるしな。」

「ナイスよセオドアさん!この人に刺さったガラスの欠片を取り払って……肺の穴を一時封鎖して……美しさと癒しの女神よ、このエメラルド(スマラグドス)を通じて治癒を施したまえ。彼の者の肺の穴を塞ぎ、自然治癒力を高め給え……よし、病院送りにはなるけど、致命傷は無し、自然治癒は俄然いける!」

 ハワード先生は治癒されながら、ぎっくり腰の痛みで意識を取り戻した。

「うっ……痛みが……」

「どこが痛む?ある程度なら、対応するわよ。」

 ハワード先生は、ミカエルのような生徒並に幼い少女を見て、躊躇った。

「気にしないで欲しい。ぎっくり腰だ。……わたし達は、助かったのかね?医療の心得があるならば、バールサモ君を診て欲しい。彼が刺されて、わたし達は人様の車に逃げたのだ……。」

 ミカエルは瞬きし、すぐ理解した。

「あいつを助けたのは、貴方だったのね?バールサモ君てことは、オーエンがお世話になってる、歴史のハワード先生、よね?ありがとう、あいつを回収してくれて。」

「君は……?回収、とは?バールサモ君は、救助が間に合わなかったのかね?」

「貴方が命懸けで守ったのに、ごめん。バールサモは死んで、あたしはそれで遺体の回収に来たのよ。」

 ハワード先生は額を抑え、苦悩した。

 己を、責めた。

「わたしの責任だ。わたしが今朝のテイラーの誘いに応じていれば、わたしは救急車両まで行かず、バールサモ君が人目の無い駐車場まで現れる事も、無かったのだ。わたしは理想を選び過ぎた。教員としての自己犠牲へのエゴから、わざわざ苦手な運動で負傷し、自己満足の偽善から、バールサモ君を死なせてしまった……。」

 ミカエルは、ハワード先生を励ますように、なるべく笑顔で、その手を握りしめた。

「大丈夫よ、ハワード先生。あたしが死なせないわ。貴方のそういう責任感ある人格面を、オーエンは慕ってるんでしょうね。任せてよ、あたしはこれでもすごい魔術師で、錬金術師なの。貴方はオーエンの秘密を守れてるから、話しても大丈夫だと思う。バールサモの正体はカリオストロ伯爵、かつてルイ16世を魅了し、貧しい民にメシアと愛され……マリー・アントワネットに嫌われて冤罪でフランスから追い出されて、ヴァチカンで詐欺師呼ばわりされて亡くなった、オリジナルのバックアップよ。バールサモは元々、生と死を繰り返しながら、記憶を繋げてきた存在なの。今日の出来事は知らないかもしれないけど、貴方との信頼関係も、バックアップが取れているはずだわ。エジプト・メイソン・リーがやってきた仕事を、あたしが継いで見せる。明後日の夕方までには、バールサモに元気な顔を見させに行かせるから。」

 ハワード先生はミカエルの胸中をさとってか、自虐を抑えた。

「……ありがとう。気遣わせてすまない。君の腕前を信じよう。わたしも、誰にも話はもらさないが、バールサモ君に革命直前の話を聞くのが楽しみに思えてきた。」

「ふふ。聞き分けの良い先生ね、あたしの心情もお見通しだし。貴方は安心して、病院の治療を受けてきて。ヴィンテージ・ドミニオンズ!ハワード先生を病院へ、入院手続きまで付き添える人はいる?」

「あたしは朝早いけど、仕事は電車だから。愛車は貸すわよ。」

「俺、明日シフト休み。ハワード先生に付き合うわ。」

 ロリーがジェイソンに愛車のキーを投げた。

「タイヤの滑りは最高にカスタムしてある。でもドリフトで遊び過ぎて壊すんじゃないわよ?こいつヴィンテージ過ぎて修理費馬鹿になんないから。」

「なはは。肝に据えて、ハワード先生とちょっとドリフトデートしてくるわ!」

 ミカエルは今度はカリオストロの遺体の乗った車へ。

「あり?あんまり臭くないわね。これだけ遅れたら結構死臭がするものなんだけどさぁ。」

 セオドアさんが説明した。

「ラジエル様と、カリオストロの天使達が、死後に時間……あぁ?時間凍結?を、遺体に施したらしいぜ。異教徒であれ、神の愛が及ぶ人間なんだと。」

「へぇー。そんなの出来たなんて知らなかったわー。なに?貧しい人々助けてきたから?特別待遇よね、これ。」

「それより、カリオストロを運ぶんだろう?俺達はエジプト・メイソン・リーの拠点を知らねぇし、悪神群が攻め込んでやがるんだろ。どうする?」

「なるほど。細かい扱いはまだ知らないのね?サタン!ナビ送って!」

 サタンが車両にナビを送信し、MAPが明らかになった。

「天使様は、ナビ機能が?ますますカルチャーショックだな。機械じみてるっつうか……一応、信仰ある側なんでね。」

「ほー。もしかしたら、ラジエルは貴方は信仰を優先したのかもね。天使は情報共有思念体だから、言っちゃえば実体を持たないAI群みたいなもんよ。貴方達、カリオストロを乗せた車、2ドアだけど、運べる?あたしバイカーだから速いカスタムの車は自信無いのよ。傷つけちゃいそうでさ。」

 エリックが運転席についた。

「OK、運ぶだけなら出勤前に済むしな。ただ、悪神群は?」

 サタンが告げた。

「悪神群は立ち去ったよ。向こうも痛手は被ったが、任務は遂行されたんだ。」

 セオドアが復唱した。

「任務が、遂行された?」

 サタンが苦渋の声色で、告げた。

「ミズーリに来たエジプト・メイソン・リーは、カリオストロを残し、全滅した。」

 場が凍りついた。

 神に祈り出すメンバーもいた。

 セオドアさんも、沈黙の中で十字をきり、告げた。

「走り屋の俺達に出来るせめてもの追悼は、生き残りのカリオストロを運ぶことだ。てめぇら!来たいやつは来な!俺は嬢ちゃんを運ぶぜ!」

「「おう!!」」

 ミカエルは慌ててバイクを指さした。

「ちょっと待って!荷台にあたしのバイク乗るかな?あんなんだけど長年の付き合いなのよ。」

「相棒は大事だ。おい、力自慢は手を貸せ!!」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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