7-〈11〉
オーエン、キング、アエーシュマは、繁華街に入り込んだ警察やマスコミを救うべく、走り込む。
銃弾が効かないパリカー達に、警官達は戸惑いながら、盾に身を寄せ応戦するが、何の歯止めにもならなかった。
パリカー達は、捕縛された人間軍団を奪還せんと、パトカーに向かって行く。
「我々では駄目なのか?」
そこへ、オーエン達は駆けつけた。
「聖なる火よ!!」
オーエンの火柱がパリカーを一掃し、逃げてきた女悪魔をキングの八連撃が襲った。
「警官の人達は逃げな!悪魔共は、逮捕できゃしねぇからよ!!」
警官達は、街のヒーローであるマーズマンとMr.ダイヤモンドに敵対はしなかった。
「我々も出来ることなら退避している。しかし、ここしばらくの一家心中事件……その犯人達も、今人々を襲っているのだ!」
「……僕達が、彼らを止めます!」
「一家心中事件には、マーズマンやMr.ダイヤモンド、君らも目撃情報がある。我々は、君たちを信じたいが……犯人を殺し回ったのは、君らでは、あるまいな?」
キングとオーエンは目を合わせ、真剣に答えた。
「僕らは殺してません。けれど、助けられなかった責任があります。」
「俺らにゃ、仲間の暴走を食い止められなかった責任がある。そして、各家庭に悪魔が取り憑く前に、助けられなかった責任も、あらぁな。」
「それでも、進まなければ守れない。たくさんの失われた命を背負いながら、次の人達を助けに行かなければ、なりませんから。」
警官達は頷いた。
「……退避する。悪魔が去ったら、犯人達は取り押さえて引き渡して欲しい。君たちの、幸運を祈る!」
警官と入れ替わりに、覚悟の決まったレポーターとカメラマンが来た。
「撮影してました!我々は戦場カメラマンです、この惨劇を人々に知らせる使命がある!!」
使命はわかるが、オーエンもキングも時間が無い。
アエーシュマが告げた。
「わたしがパリカー共の時間を稼ぐ!君たちは、やるべき事をしてから、来なさいッ!!」
アエーシュマは素早く繁華街のパリカー達を投げ飛ばし始めた。
「いま、撮影してる?」
「はい。映像も、音声も録ってます。マーズマンとMr.ダイヤモンドから、一言いただいても?悪魔への自衛対策などを。」
オーエンは、今までの無力感、キットの心。バステトの助言が、胸に溢れかえった。
自然と涙が溢れ出し、カメラの向こうへと呼びかけた。
「僕達は、これ以上死なせたくない。ですが、悪魔が人間の理性を奪うこと。悪の解放に、人の力では、抗えません。苦境にある人達、虐待やいじめの被害に晒される人達こそが狙われ、その運命に抗う為に、加害者を殺害してしまう……僕に言える事は、これしかない。余りにも粗末な話かもしれないけれど……希望を。強く希望を抱えて、自身の悪に立ち向かってください。僕も仲間達も、助けに行きます。僕みたいな不出来なヒーローでも、希望に出来るなら、それでもいい。人には、悪を解放されても、善だって残るのだから……希望を信じ、待っていてください。必ず、助けに行く!」
その頃、ただつけっぱなしだったテレビに、多くの人がマーズマンに振り返り、集まっていた。
各家庭の、事件未遂の人すら、涙混じりのマーズマンを観ていた。彼の、苦悩の言葉を聴いていた。
持っていた凶器を捨てて、涙した。
自分が一人ではなかった、と、気づいたのだ。
マーズマンが、いた。
それは、些細な希望だが、追い詰められたその人を、思いとどまらせるには、充分な希望だったのだ。
カメラマンもレポーターも、目頭を熱くしながら、撮影を続けた。
「生放送です。誰かは助かったかも。マーズマン、感謝を。Mr.ダイヤモンドも、一言いただけますか?」
「……概ね、マーズマンが言ったがな。待てそうもない奴、また、狙われそうな環境にある奴は、現状の被害環境から逃げろ!律儀に尽くす必要なんざねぇ!裁判所だって警察だってあんだ。いいか?アンタ達は手を汚す必要なんざ微塵もねぇんだ。胸糞野郎は法で裁いてムショに送って終わり。ただ、職場が無くなると困るのは事実だ……」
ジルマッマがマスクを付けて入って来た。
「私の職場とか、結構いじめ被害から逃げて来た同僚いるわよ?仕事はちょっとハードワークになるけど、人手が足りないとこは狙い目だわ。職場のいじめは上司が裁かれたって同僚は残るんだし、今から求人情報見るのがおすすめだと、ダイヤモンドマッマは思うわけ。」
飛びかかってきた人間軍団を、ジルマッマはナックルダスターの拳で殴り飛ばしながら、去って行った。
「……まぁ、概ね、お袋の言った通りだ。待つだけが対処法じゃねェってこったな!自分の身を守れよ、以上だ!!」
「ありがとうございました、マーズマン、Mr.ダイヤモンド、ダイヤモンドマッマさん!」
「あなた方も、もう避難してください!使命はわかるけど、これ以上無茶してあなた方に何かあれば、この先、使命は果たせないはずです!繁華街は、街は、僕らが守りますから!!」
戦場カメラマン達は頷いた。
「はい!皆、引き返せ!!現場の中継は以上です!!」
彼らが逃げていく退路を、オーエン達は守った。
やがてハリソンやアーラシュ、コリン、アエーシュマと合流した。
「おい!無事か!?」
「悪魔が特殊な技でカマイタチしてきたけど、生きてるよ!キングの天使様が、硬質化してくれたからだろうな!」
「人間軍団は粗方気絶済だぜ!今はキングのマッマと残党狩りよぉ!!」
「親父が自粛してても、お袋は来ちまったみてぇだな……」
コリンとハリソンは真っ青になり、俯いた。
代わりに、アーラシュが狙撃しながら、告げた。
「ワイアット。ローレンスさんは、あくまで弱者の味方になれる優しい人だ。発砲した警官がいてな……ローレンスさんは、悪を解放された人を庇って負傷し、今アールマティ様が全力で治癒に力を回している。」
キングは真っ青になった。
この現場にローレンスパッパの優しさは、命取りになりかねない。
「大丈夫だ。ローレンスさんは元は看護師で、弾丸は自分で取り除いて傷口を縫った。遠隔治療中のアールマティ様は必死過ぎて喋らないかもしれないが、命は取り留めたよ。ワイアットが駆けつけてやれば、回復力も上がるだろう。人は、自然治癒力に感情も影響するからな。」
「すまねぇカマンガー兄貴……この場を任せるぜ!!」
オーエンがパリカー達に聖なる火柱を飛ばしていると、パリカー達も回避を覚えはじめ、なかなか一気には殲滅出来ない。
そこへ、誰か飛んで来て、パリカー達各自の影を投げナイフで固定した。
彼はオーエンの隣に着地して、ハイタッチした。
「よ。苦戦か?オーエン。」
なんと悪神アーリマンこと、イライジャだ。
「イライジャ!来てくれたんだね!ていうか、今何したの?悪魔達が動かなくなったけど。」
「悪神だろ?オレ。何にもしなくっても、悪の投票でパワーアップしてて、適当に影の国からパリカー共をナイフで固定したみてぇな感じよ。聖なる火なら今じゃね?」
「すごいや!ありがとう!喰らえ、ジャスティスゴッドフレイーム!!!」
「ネーミングすげぇ安直な!」
イライジャが笑っているうちに、聖なる火柱は広範囲に広がり、パリカー殲滅を成し遂げた。
「イライジャ、すごい強い!強過ぎてチートだよ!毎回いたらたくさんの人が助かるのに……」
「まー、でもオレ、迷わず悪人殺すから、来たら来たで困るんだろ?ま、今日オレが来たのは、そーゆうんじゃねぇけど。」
「?どうしたの?キットが何かあった?キット、アーリマンの君には心開いてたと思うんだけど。」
イライジャは反省気味に背中をかいて、腕の刃物が身体に刺さって、飛び上がった。
「いやな、それが、いてぇーッ!!何でこんなとこにブレードつけたんだよオレは!!」
「……キットの為に、来たんだね?」
イライジャは素直に語り出した。
「ま、そゆこと。あいつとは最初はバスケで遊んでたんだけどよ。途中で、すげぇ能力に気づいて、試しにアミナをけしかけたら、あいつアミナを乗り越えてよ。その力を見込んだオレが、ある個人的な頼み事をした。キットは影の国に入ったんだが、頼み事の達成後にその場で消えちまって。怪我は一切してねェし、命の気配はあんだけどよ。オレは預かったんだから、探すくらいはしねーと、てワケ。」
「イライジャ……二度とアミナちゃんけしかけないでね?ともかく、キットには何らかの力があって、頼み事の達成後に自主的に帰っちゃったってことかい?今までどこ探してたの?」
「影の国から得た知る範囲は探したぜ。心の闇は見えるからな。キットの昔の保育園から、フライドチキン店やら、教会やら、キットの記憶の残り香を散々見て回って来たぜ?」
イライジャにはわからず、ヘトヘトになるまで街中を回ったようだが、それは、善悪があるオーエンにはわかることだ。
「キットが苦労かけてごめん。キット、辛い思い出の場所は行かないし、きっと僕んちにいる。ラジーの傍に、いると思うよ。」
イライジャはため息をついた。
「マジ?最初からオーエンに聞きに来れば良かったぜ。」
オーエンは、粗方片づいた繁華街を見て、イライジャを連れて皆と合流した。
「負傷者はいる?」
キングが返した。
「親父が負傷したが、もう天使様のおかげで肩を貸せば歩けるぜ。」
そして激昂するアールマティが出た。
「なんてヒヤヒヤさせるのですか!!貴方は、ワイアットの大事なパッパなのですよ!?二度と無茶はなさらないでくださいまし!!」
「ははは、すまないね、足でまといになっちゃって。」
ジルマッマも激おこだ。
「本当よ!天使様、もっと叱って!敵を庇って命が危うくなる馬鹿がどこに?いたわね、ここに!貴方、優しさで自滅してばかりじゃないの!少しは懲りなさいよ!」
「そうだね、ジル。ジルもワイアットも背負いつつ、弱者を守れるような立ち回りをしなくちゃあね。」
オーエンはローレンスパッパの血の跡を見て怯んだ。
「本当に、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だとも!」
アールマティが告げた。
「この人に関しては、周りに心配をかけない為に強がりで歩いている面も、ありますよ。ですが大丈夫ですオーエン。わたくしとワイアットとジルマッマが、必ず病院に運びますから。」
僕じゃなくてこの人が善神なんじゃないか、という徹底ぶりの善のローレンスパッパである。
「了解。ローレンスさんは任せるよ。……アエーシュマさんは、どうしますか?日中は悪魔は影から出たら苦しむのでは……?」
「それは人間と共生しない、霊体のパリカー達のみよ!わたしはしばし身を隠そう!そもそもが、そちらのアンリ・マユ様に逆らって悪神群を統括していたわたしにも責任があるのだッ!!しばらくの共闘路線を貫くつもりでいる!!」
イライジャは面白そうにアエーシュマをつついた。
「ちょ!なんのお戯れか、アンリ・マユ様!?」
「おめェも観てたぜ。変わり者の悪魔だなー。善悪がハッキリしたヤツなんざ、なかなか悪神群にゃいねーぜ?」
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