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God Buddy  作者: 燎 空綺羅
第七話「hope」
58/70

7-〈5〉

 バステトは歩きながらタピオカドリンクを飲み終わり、目をつけていたらしき、メンズのブランド店に走って行った。

「来い、アフラ=マズダよ!あの服は良いぞ!!」

 オーエンがついて行くが、とても自分が入れる感じでは無い。

 シックで……オシャレだ。こんなのは、モデルさんしか着れないだろう。

「僕はいいよ、こういうの……バステトちゃんの服を見に行こう?」

「黙って従うが良い。さぁ、来い!」

 バステトに引きづられて、半ば強制的にオーエンは入店。

「いらっしゃいませ。」

「店員よ。あの紫のリボンタイシャツに、あそこの黒レザーのベスト、袴のようなヒラヒラのついた黒いパンツを頼む!サイズはこやつに合わせよ!!ベルトは、ううむ、これが良い!!」

 バステトに首根っこを掴まれ、オーエンは差し出された。

「ふぇぇぇ……」

 店員、オーエンを見てビビっと来たのか、ガッツポーズ。

「お目が高い!!我がブランドなら彼をモデルのように美しくコーデ出来ます!いいえ、そもそも、元が良いですからね……髪もセットしましょう!!」

 あれよあれよという間に、オーエンはモデルのイケメンばりに変身した。

 髪はオールバックに整えられ、片耳にロングイヤリングをしている。

 鏡を見て一番驚いているのはオーエンだ。

「だ、誰……!?」

 バステトはお支払いを済ませ、満足げだ。

「言ったであろう?そなたは原石、磨けば光る!!ふ……(わらわ)の目に狂いは無しよ!!!」

 店員さんが仲間を引き連れて来た。

「お客様、一枚写真を撮ってよろしいですか?その着こなしとお客様の映えは、当ブランドのサイトの着こなし例に載せたいので。」

「え?は、はい。」

 オーエンはモデルのように一枚、撮影。

「ありがとうございましたー!」

 店を出て歩き出すと、道行く人が皆オーエンを振り返り見る。

「なんだか、見られてない?」

「ふ。見られておるぞ。」

「……かっこよくなれたのはいいけど、これは恥ずかしいよ……。」

「クフフ。皆が皆、(わらわ)の彼氏に夢中だ!良い!大変気分が良いぞ!!」

 バステトはレディースの可愛い服のお店に駆け込んだ。

「ゆくぞ、アフラ=マズダよ!此度こそは、(わらわ)の番である!!」

 オーエンはついて行くが、バステトはもはやお洋服に夢中だ。

「これと!これもよいな!!これも!!」

 一体、何着買うのやら。

 だけど、バステトの選ぶものはどれもセンスが良いのは、オーエンだってわかる。

 大人っぽい席に着ていく、ミントグリーンの細身のロングドレスだとか。

 私服はおそらく、とても愛らしい、襟やパフスリーブの……。

 オーエンも見てみた。

 なんだか、彼女が好きそうなのが、目立たない場所にあるではないか。

 ピンクで、白いリボンタイには、リボンで作られた黒い薔薇。ひざ丈のワンピースは、中にパニエが入っており、スカートの裾の黒いフリルがフリフリだ。

「バステトちゃん?これ、どうかな?」

 バステトは大歓喜し、急接近してきた。

「なんと健気なヤツめ、選んでくれておったのかー!!(わらわ)の為にこれを?嬉しいぞアフラ=マズダ!!(わらわ)は今日はこれを着るとしよう!!」

 店員さんがコーデをおすすめした。

「こちらのスカートはだいぶ膨らみますので、下にドロワーズは如何でしょう?」

「うむ!アフラ=マズダが選んでくれおったのが、黒とピンクが基調なのよな。黒のドロワーズとする!」

「合わせて、レースタイツかニーハイソックスは如何ですか?」

「ううむ。難しいが、エレガントなデザインを露出で損なう訳にもいくまいよ。合わせるものは、黒いレースタイツとする。靴はピンクを!このドレスに近いピンクが良いぞ!!」

「お待ちを。確か、この商品に合わせた靴があったはず。在庫確認して来ます。アリー!お客様をお着替えさせて差し上げて!」

「はい。試着室へご案内致します。」

 オーエンはセンスが無い方だが、割と人が好むものは、わかるのかもしれない。

 やがて、在庫を取りに行った店員さんが、靴の箱を持って来て、中身をオーエンに見せた。

「このシリーズは去年の新作の復刻ですのよ。」

 ドレスと同じ、先が丸いピンクの、ヒール3cmくらいのハイヒールで、足首に留め具と、足の甲に白いリボンと、リボンの真ん中にリボンで作られた黒い薔薇が。靴自体はてかったりはせず、ワンピースと同じベロア素材だ。

「すごいや……。」

「きっと喜ばれますわ。こちらは歩きやすい低いヒールで、彼氏さんとのデートにも困りません。」

 店員が靴を持って行くと、やがてバステトはドレスアップして出て来た。

 自信家のバステトなりに、好きな色が似合うかどうかは別問題らしく、なんだかギクシャクと、緊張している。

「な……なかなかのプレッシャーよな……服は()いが……(わらわ)に似合っては、おるのか……?(わらわ)はあくまで強そうな美人であって……好きな色を着てみたところで、()いかどうかは……わからぬものよ……」

 不安げなバステトは、まさに百面相というか。

 意外な表情もするのだ、と、オーエンは微笑んだ。

「そうかな?バステトちゃんは、可愛いと思うけど。確かに強そうな美人だけど、表情がコロコロしてて、元気な感じだよ。」

 バステトは顔を明るくした。

「まことか!??」

「うーん。我が道を行く!て感じだけど、憎めない可愛さがあると思う。ピンクだって、似合うよ。」

 バステトは足掻いた。

「くぁ〜ッ!!おのれおのれェ!!この、天然タラシめ〜ッ!!!」

 店員さんは微笑ましく見てる。

「良い彼氏さんをお持ちで。美形の方なのにこんなに素直な方は稀。お客様もまた、自信をお持ちください。似合わない色など存在しない、ぐらいには!」

「うむ!(わらわ)はどんどん愛いくなってみせようぞ!!良き店員にも恵まれたしな!さぁ、次は髪だな……会計を頼む!」

 お会計をすると、次から次へ、ドレスや靴の箱が山積みだ。

「バステトちゃん……荷物は僕が持つけど、この量だよ?お買い物は、続行可能なのかい?」

 オーエンが積み重なった箱を抱えながら、バステトが案内した。

「案ずるな!この貸し出しロッカー複数に詰めておけばよい!後から部下に回収させてくれようぞ!」

 バステトは無計画では無いようだ。

「どうやら君は、猫の時に、街を知り尽くしてるみたいだ。」

「人間ではMr.ダイヤモンドの縄張りらしいがな。猫では(わらわ)の縄張りよ。さぁ、髪を仕上げたいが……」

 今度は美容室だ。

 バステトはこの時の為に、オーエンにもらった花束の花を半分リュックにさしていたのだ。

 髪を編んでもらい、花をさす。最初につけていたダリアも、短めに切ってもらい、耳元にさしなおしてもらった。

 仕上がると、バステトはオーエンの前で一回転して見せた。

「どうだ?アフラ=マズダよ。花は最高の髪飾りであろう?」

 オーエンは苦笑しながら、拍手した。

 ここまで、バステトの一途な思いは伝わってくる。健気で可愛いところもある。

 だが、オーエンには答えてあげることは、許されない。

 愛する人、今度こそ守らなければならない人。ドナ=ジョーがいる。

 でも、自分はミカエルにも気持ちがあって。

 確かにバステトは可愛いけれど、ここでバステトにいい顔をするのは、彼女を傷つける末路しか見えなかった。

「どうした?浮かない顔をしているな、アフラ=マズダよ?」

「……僕は、愛する人を、ドナ=ジョーを背負っている。だから、君がどんなに好いてくれていても、僕には……迂闊に君を傷つけたくはないから……」

 バステトは告げた。

「よせ。」

「だけど」

「今は。今だけは、(わらわ)のことだけを考えていても良かろう?デートのマナーぞ、アフラ=マズダよ。この(わらわ)とて、神であり定められた配偶者がある身。自由な恋は、このような時だけぞ。」

 確か。

 ラーから生まれたバステトは、配偶者もラーだ。

 定められたから、こそ。

「……そうだね。」

 バステトはにっと笑った。

「解ればよい。そろそろ昼時であろう?(わらわ)には、ずっと行きたい店があったのよな。アフラ=マズダよ。(わらわ)にランチをおごれ。それで今のはチャラにしてやろう。」

「……えっ?」

 バステトが天高く指を掲げた。

(わらわ)の憧れのランチ!それは、アメリカの国民食、ハンバーガーであるッ!!!」

 ハンバーガー?

 そんなに安い国民食でいいのか。

 オーエンはふいに察した。

「もしかして、バステトちゃんは渡米してからずっと、アメリカのハンバーガーを食べた事が無い?」

「猫だったのでな。しかし、エジプトから此処へ来るという計画の頃から、夢見ていたぞ。世界で一番ハンバーガーが大きく、肉厚で、ピクルス乗せ放題だと聞いた。アメリカにいるならば、(わらわ)も食べたいではないか!!」

 オーエンは、神であるバステトの庶民的な夢に、なんだか微笑ましくなってしまって、笑いながら告げた。

「ふふ。おごるし、なんなら僕のお小遣いでもおかわり出来るよ。」

 バステトはオーエンに連れられて、念願のハンバーガー屋へ。

「何になさいますか?」

「僕はハンバーガー。バステトちゃんは?」

 バステトはいきなりクールに応答。

「チーズ・バーガー」

 何かのモノマネで、店員が伝わったのか、クスクスと笑った。

「いきなり発音良く?」

「アイアンマンだ。一度言ってみたかったのだ。」

 二人は出来たてのハンバーガーをのせた皿を持ち、パンを開いてピクルスを山盛り乗せて、空いている席に着いた。

「エジプトにも、ギザにフライドチキン店はあるよね?えーと、スフィンクスとピラミッドがある、ギザ。ナポレオンが、あのスフィンクスを破損させたって?」

「ギザのフライドチキン店もバーガーは豊富だが、アメリカのハンバーガーとは全然違うぞ。それから、スフィンクスというと……ギザだから、ホル・エム・アケトか?というか、ナポレオンは学識ある男で、アレクサンドロスに憧れ、自らもまた、エジプトを愛しておったぞ。ホル・エム・アケトの破損はあやつのせいでは無い、ただの噂よ。」

 オーエンは脳内で、ホル・エム・アケト=大スフィンクス、と繋がった。

 バステトとオーエンで共通の認識は、ギザの有名スフィンクスだけだが。

 バステトはチーズバーガーにかぶりつく。

「うまーい!!!肉汁が溢れピクルスの酸味が味を引き締める!そしてチーズと専用のケチャップがたまらぬな!!」

 オーエンもつられてハンバーガーをかじった。

「モグモグ。ちなみにバステトちゃん、ホル・エム・アケトはなんて意味?たぶん、大スフィンクスのことだよね?」

「あむあむ。うむ!大スフィンクスとも呼ばれるな。ホル・エム・アケトは古代エジプト語で、地平線のホルスだ。オシリスの子、ペル・アアのホルス神よ。」

「ホルス神て意味なんだ!ペル・アアは……ファラオ?」

「うむ、ペル・アアは、ファラオと呼ばれる王達だ。まぁ、ホル・エム・アケトなどデカすぎよう。騎乗出来るとしたら、ラムセスのせがれくらいよ。」

「え?騎乗!?大スフィンクスが動くの!?ラムセスのせがれって、あのラムセス2世のことかい!?」

 バステトは瞬きし、ハンバーガーをモグモグ食べながら、答えた。

「あむあむ……こんなに喜ばれるとは。本当に何も知らぬ、まっさらな状態だな、アフラ=マズダよ。生まれ変わったのだから無理も無いか……昼飯をしながら、ある程度の知識は教えてやろう。神々の違いや、英雄の魂のことを。はぐはぐ。」

「よろしく頼むよ!」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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