6-〈17〉
繁華街に行くと、既に繁華街は市民が避難していて、死体も幾らか倒れていた。
「アールマティ。ジャヒーは何処に?」
キングがアールマティと代わり、告げた。
「……オフィス街です!ワイアット、マッマとパッパが応戦しています!早く助けなければ!!」
キングは焦り、マッマとパッパを想った。
「無茶しやがって……!行くぞてめぇら!オフィス街だ!!」
オフィス街では、援護射撃するアーラシュや、カリオストロにエジプト・メイソン・リー、ミカエル率いる六人のゴーレム達、ナックルダスターをつけたジルマッマと、二丁バットのローレンスパッパが応戦していた。
ジャヒーの相手はミカエルが対応し、ジャヒーは軽くあしらいながら、楽しんでいるようにも見えた。
「さぁ、お次のは何のショーかしら?」
「余裕ぶっこいてんのは隙がある証拠よ!」
ミカエルは今まで見せなかった遠距離魔術雷撃を発動。
「運命は汝の為に糸を紡ぎだす、三重に縛られた女神よ、解き放たれよ!此処に来たれ、怒り狂い、彼の者に雷石の雷電を襲え!!」
ミカエルの放つヘカテ使役で強化した宝石魔術を、パワーアップしているジャヒーは鞭で叩き伏せながら、連続する鞭の技をミカエルに繰り出した。
「あら、手が滑ったわ。死なないでね、手品師のお嬢ちゃん?」
「サタン!守護を!ベルフェゴール、炎で攪乱して!!」
「はいはい」
「喰らえ!わたしのデュンケルハイト・フレイム・ブレースッ!!」
ミカエルはサタンの守護を身体に貼り付け、ベルフェゴールの炎の中で退避し、居場所を隠す。
ジャヒーが笑いながら告げた。
「アッハッハッハッハッ!芸達者なお嬢ちゃんね。けれど、逃げてばかりじゃ、お仲間は死ぬわよ?」
ミカエルはハッと息を飲み、彼女の中の魔力感知センサーを拡大した。
人間には、誰しも微量ながら固有の魔力が存在する。
仲間が弱っている。
ジルマッマだ。
確かに殴りは人一倍強いけれど、体力が尽きかけている。
アーラシュの援護はエジプト・メイソン・リーで手一杯だし、エジプト・メイソン・リーは怪我人を担架で運び出す最中だ。
ジルマッマのカバー要員がいない。
「ジルマッマ!!下がって!!」
ミカエルの声が聞こえないのか、人間軍団と応戦中のジルマッマは、はぁはぁと息を切らしながら暗示人間を殴り飛ばす。
「危ない、ジル!!」
弱ったジルマッマを狙った暗示人間の一撃は、ローレンスパッパがバットで叩き飛ばした。
「何やってるんだ、早く下がって体力回復を!君が弱っているのが敵にもわかっている、狙われているんだぞ!」
ジルマッマは汗のかきすぎで、意識が朦朧として、ローレンスパッパの話がわからない。わからないが、心配していることだけは、わかった。
「貴方……わたし、ワイアットを……」
「わかった!僕が代わりに戦う、ワイアットを守るから!さぁ、君は安全地帯へ!」
ローレンスパッパはジルマッマを背負って戦場から離れようとした。
しかし、狙いはジルマッマに集中し、暗示人間軍団は二人を囲んだ。
「くっ……!!」
「情報は更新されている。弱った奴から、殺せェ!!」
暗示人間軍団がナイフを振り上げた。
そこに、凄まじいスピードの車が続々とやってきた。
中でも、トワイライト・イエローのシボレーエルカミーノは、素晴らしいドリフトで、ジルマッマとローレンスパッパを狙う一味を跳ね飛ばす。
暗示人間達は騒いだ。
「何だよ、こいつら!?」
中からは、続々と走り屋達が降りてきて、ビール瓶やブルパップライフルを持ち、手足を狙って応戦した。
ジルマッマに代わり、ローレンスパッパが尋ねた。
「助かったよ、感謝を。貴方達は……?」
セオドアはアサルトライフルを背負い、名乗った。
「俺はセオドア・オリンズだ。俺たち、走り屋のヴィンテージ・ドミニオンズが加勢するぜ。悪神群とは、因縁があるんでな。」
オーエン達が駆けつけた。
「セオドアさん!!」
「来たか。あの嬢ちゃん一人で悪神群を抑えてるぜ。加勢してやりな。」
キングやハリソン、コリンが瞬きした。
「誰だ?」
「ドナ=ジョーのお兄さんだ。僕行ってくる!」
そこに、オフィス街を中心に火柱が上がり、暗示人間達がバタバタと倒れていく。
無傷だ。
暗示だけが塵となって消えていく。
「聖なる火……?」
跳躍してきたアシャ・ワヒシュタが着地した。
「アフラ=マズダ様!善神群アシャ・ワヒシュタ、助太刀に参上仕った!!悪神群ジャヒーの討伐に、加勢させていただきます!!」
オーエンは頷いた。
「頼む。君がいたら千人力だ。行こう!」
暗示人間軍団をキング達に任せ、オーエンとアシャはミカエルの加勢に加わった。
「オーエン!アシャ!ジルマッマは?」
「セオドアさんが助けてくれたみたいだ。ミカエル、今までよく持ち堪えたね。僕らが加勢する!」
ジャヒーは聖なる火を恐れず、鞭をしならせた。
「待っていたわ。アフラ=マズダ……アンタが弱っち過ぎて、手を抜き過ぎたわね。あたしの美しい顔を焼いたことを、後悔させてやるわ。」
ジャヒーは鞭で床を叩きつけ、影の国のゲートを開いた。
ゲートからは、想像を絶する地獄の猛獣達が現れ、唸りを上げた。
ミカエルとオーエンが意表をつかれて、絶句する。
「……今まで本気出してなかった?マジで?」
ジャヒーは愛しげに地獄の猛獣達を撫で、猛獣達もまたジャヒーに良く懐いていた。
「あたしの可愛い仔犬達……さぁ、愛が欲しいなら、あたしを守って闘いなさい!!アタケッ!!」
地獄の猛獣達はオーエン達に襲いかかる。
ミカエルは慌てて守護結界用の皮に書いた逆三角形の魔法陣を敷いて、詠唱した。
「アブラナタナルバ!アスキ・カタスキ・アアッシアン・エンダシアーン・エン・アモルゴーイ!あぁ、間に合わないッ!!サタン!!」
サタンの全力の広範囲守護が発動。
「悪いけど長く持たないよ!天使一体で広範囲守護はあまりに弱いからね!」
守護は地獄の猛獣達の突進でついに破壊された。
「ミカエル、下がって!!」
オーエンがミカエルを庇って、地獄の猛獣を一体羽交い締めにする。
「聖なる火……出ない!?」
アシャがオーエンの羽交い締めにした猛獣の喉元を、剣で斬り裂いた。
「ご無事ですか!?」
「ありがとう、大丈夫だ!」
アシャは地獄の猛獣達を次々と斬り伏せて、動けなくなった所に火柱を上げた。
「断罪ッ!!」
オーエンが思わず口にする。
「ジャヒーの奥の手が、アシャ・ワヒシュタには全く効いていない!圧倒的だ!」
ジャヒーは名を聞いて怯んだ。
「アシャ・ワヒシュタですって!?善神群最強の、聖なる火のアシャ・ワヒシュタ!!未熟なアフラ=マズダどころじゃあないわね。お前を先に殺すわ!」
ジャヒーが地を鞭打つと、無限かと錯覚するゲートが開き、地獄の猛獣が次々と飛び出した。
アシャしか戦力になっていない。
オフィス街のビルから、市民達が不安げに見ている。
「マーズマンが、圧されている……!」
「マーズマンを応援しよう!俺たちでも、力になれるはずだ!!」
「あの時、マーズマンが火の力に目覚めたように……!!」
市民達は窓から声援を送った。
「負けるな!マーズマン!!」
「頑張れー!!マーズマン!!」
「火の力を、取り戻すんだよ!!」
「「マーズマン!マーズマン!マーズマン!」」
オーエンは市民の声援が届いて、使命感を取り戻し、自身の両頬を叩いた。
「しっかりしろ!怯むな!僕の肩には、市民の命がかかっているんだぞ……!!」
オーエンは地獄の猛獣に殴りかかる。
「うぉぉぉぉぉお!!!」
拳に聖なる火が宿り、地獄の猛獣は首が燃え盛り、苦しみ出した。
「あれ?聖なる火?」
「やったぁぁぁ!!」
「「「マーズマン!!マーズマン!!マーズマン!!」」」
オーエンは二匹目を仕留め、覚悟に瞳を燃やしていた。
「アシャ!僕もいける!!」
アシャはオーエンの背負うたくさんの命の責任と、聖なる火の発現の関係性に気づき、呟いた。
「生まれ変わっても、貴方様はやはり善神様だ」
「アシャ!叩き込むぞッ!!」
「御意ッ!!現れる限り、断罪するまでッ!!」
オーエンの聖なる火が拳を叩き込み、アシャの剣戟が閃いては地獄の猛獣が倒れてゆく。
ジャヒーが床を鞭打った。
「見事、だけど残念賞ね。さぁ、ショーの続きはこれからよ!追加増援、行きなさい!!」
影の国のゲートから、地獄の猛獣達は湧き出した。
「断罪ッ!!」
アシャの火柱が地獄の猛獣達を焼き尽くした。
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