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God Buddy  作者: 燎 空綺羅
第六話 黎明の騎士
38/70

6-〈8〉

 夜八時にアシャは自宅を出て、パトロールに走って行く。

 結局、夕飯時以外はずっと、鎧を着込んだままだ。汗で錆びぬように、寝る前に手入れをしなくては。

 アシャが三人目の殺人鬼を倒して、聖なる火で暗示を解くと、危険信号が過ぎる。

 背後から急接近する殺人鬼。

 狙いは暗示が解けた三人目だ。

「死ねーーーッ!!!」

 アシャは三人目を庇って、背中から剣を抜き、咄嗟に背後の殺人鬼のナイフを受け止めた。

「知ってるぜ。情報は更新されている!ジャスティス・ナイト、お前は両手剣だッ!!なら、こいつは防げまいッ!!」

 殺人鬼のもう片手のナイフが、アシャの鎧の継ぎ目にある、鎖帷子(くさりかたびら)を貫いた。

「くうっ……!!」

 この男はおそらく、神秘主義者ではない。

 純粋に、格闘慣れしていて、腕力もかなり強い。鎖帷子を片手のナイフで貫く剛力なのだ。

 アシャがナイフを剣で受け止め、片方の手からナイフで腕を刺されているところへ、エジプト・メイソン・リーのメンバーが駆け付けた。

「助太刀致しますッ!!」

 エジプト・メイソン・リーの二人が、殺人鬼を背後からバットで、ボコボコに叩きのめす。

 そこに、過労でふらついたカリオストロが来て、自慢の糸で天使を繰り出した。

「はぁ、はぁ……さぁ、暗示を解いていただきますよ!」

 天使達はクルクルと回り込み、殺人鬼の暗示を解除した。

 アシャは腕を抑え、自分のハンカチで止血した。

「ジャスティス・ナイトですね?貴方は人間ですか?」

 エジプト・メイソン・リーに、アシャは返した。

「答える前に知りたい。あなた方は善意だが、あちらの暗示を解除した男は強い悪意を持っている。貴方達は誰だ?」

「我々はナイルより来たりし神秘。我らの神の同盟の為、アフラ=マズダ様に組みした、エジプト・メイソン・リーです。あちらはロココの時代から記憶を維持するカリオストロ、腹黒いですし悪癖はありますが、根はまともな仲間です。貴方は人間ですか?我々は錬金術師、貴方を治療出来ます。」

 アシャは探知した。嘘はついていない、善人だ。

「俺は善神群アシャ・ワヒシュタ。仲間に自然治癒を高めるアールマティがいる。だから、まだ戦える。」

「ですが、貴方自体は治癒能力を持ってはいない。今日無理をしては、明日から持ちませんよ。我々が治療します。」

「俺は、急ぎアフラ=マズダ様に、会わなくては……!!」

 アシャの焦りに理解を示し、エジプト・メイソン・リーのメンバーは答えた。

「訳がおありなのですね?協力しましょう。」

「……我らの神秘、ラーの目よ!」

 例の毛がない猫が、振り向き、耳を立てた。

「貴方様であれば、アフラ=マズダ様の居場所がおわかりであられる!どうか、そのお力をお貸しくださいますよう!」

 猫はしばし無視し、耳の後ろを脚でかいた。

「ラーの目よ!」

 猫は仕方なさそうに立ち上がり、走り出した。

「ふぅ」

「アシャ・ワヒシュタ殿。アフラ=マズダ様とは、我らのロッジで会えることでしょう。さあ、肩を貸しますから。カリオストロ!貴方も力を貸してくださいよ!」

 カリオストロは疲れ過ぎて病んでいた。

「死に疲れです。ミズーリ州ではもう三人目ですよ?わたくしは生徒たちと遊びたいのに!!だいたい、今はハイスクールも忙しいのですよ。イスラームが終わって中世ヨーロッパ、歴史のハワード先生から信頼を得たわたくしは、テスト作りにプリント作り。あぁ、貴方はさては善神群最強格ですね?ちょっとだけ、解剖させてくださいませんかね?麻酔無しで。わたくしの過労が癒される気が致しまして。」

 エジプト・メイソン・リーが、バットでカリオストロをボコボコに叩きのめした。

「馬鹿を言わずに、行きますよカリオストロ。」

 カリオストロは頭から血を流し、顔は殴られてパンパンに腫れ上がりながらも、なんとか起き上がった。

「どなたか!わたくしにも、肩を貸してはくださいませんか!?」

 エジプト・メイソン・リーはガン無視して置き去りだ。

 そこに、走って来たキングが現れて、既に背負っているハリソンとコリンに加え、カリオストロを抱えあげた。

「また悪癖か、バールサモのセンコーよぉ。仕方ねぇ、運んではやるがな……少しは、運命に抗ったらどうなんだ?」

 カリオストロは感激。

「あぁ!教え子に拾われるとは、なんという幸せでしょう!優しいキング君に免じて、少しは反省しますかね。」


 一方で、オーエン達は順調に救助活動をこなしていた。

「ツナは次の地点に先行してくれ!ポテトは被害者を護衛しながら救急車を!エッグは僕についてきて!」

 オーエンはゴーレム達に指示を出し、被害者に告げた。

「傷が深い。どうか安静にして救急車を待ってください。貴方のことは、ポテトが守ります。」

「ありがとう……マーズマン……ポテトさん……。わたしにはポテトさんがいるわ……マーズマンは、次の人を、助けてあげて……。」

 オーエンは頷いた。

「はい!!行こう、エッグ!!」

「イエッサーオーエン!」

 オーエン達が次の地点に向かうと、ツナが苦戦していた。

 なんと、殺人鬼は二人組。コンビネーションでツナを翻弄していたのだ。

「情報は更新されているッ!」

「コンビネーションにはかなうまいよッ!!」

 オーエンが叫ぶ。

「エッグ!ツナに加勢してくれ!!」

「了解しました、オーエン!」

 ツナとエッグでタッグバトルだ。

 アールマティから思念が届く。

(オーエン!コリンとハリソンが負傷し、ワイアットは二人の治療の為、離脱します!ワイアットの担当していたB地点を頼みますよ!)

「コリンとハリソンが……!?大丈夫なの!?暗示にかかった殺人鬼達は、情報は更新されたと言っていた。僕らの、弱点をついてきているのか……!?」

(そうかもしれません。やや、ハリソンの秘密兵器の刺激が強過ぎて……殺人鬼も命の危機を感じたのでしょう。前の決戦で、コリンが使った下段攻撃を、真似されて……転んだコリンとハリソンが、危うく死ぬところでした。咄嗟にわたくしが二人のダメージ部位を硬くし、ワイアットが戦いに勝ちましたが……暗示軍団は、いいえ。暗示をかける悪神群は、学習しているようですね。)

 ツナとエッグは勝利し、二人組殺人鬼の暗示解除魔術を行使した。

「オーエン。酷く顔色が悪いです。何かありましたか?」

 オーエンは、不安を隠せなかった。ハリソンとコリンは一般人で、強いけれど、普通の人間だ。

「友達が、怪我をした……代わりに、僕がB地点に行かなくちゃ。」

 ツナが、オーエンを制した。

「わたしがB地点に行きます。オーエン、貴方は友達のところへ。」

「だけど、ツナ!君だって裏をかかれたはずだ、悪神群は暗示に学習能力を加えてきてるんだ!」

 そこに、ゴーレムのペンネとシュガーが加わる。

 ツナが言った。

「大丈夫。わたし達は増援要請していました。マスターミカエルの担当地区は、戦いが収まったようですので。」

「オーエン。わたしがツナについて行きます。」

 ペンネが告げた。

「わたしはエッグにつき、このエリアを続行します。」

 シュガーが告げた。

「オーエンは友達のところへ。この場はわたし達に任せてください!」

 オーエンは頷いた。

「ありがとう……!君たちを信用して任せるよ。すぐ戻るから!!」

 走りながら、オーエンは尋ねた。

「アールマティ!キング達は?病院?」

 アールマティから、返事が来ない。

 そういえば、アールマティは自然治癒を高める力がある。今はそっちに力を割いているのかもしれない。

「ミャア」

 オーエンが振り向くと、路地裏から、例のエジプト・メイソン・リーの中でめちゃめちゃ偉い猫が歩いて来た。

「君は、あの時の……めちゃめちゃ地位の高い猫ちゃん。こんなところ、来て大丈夫なのかい?」

 猫は、オーエンのマスクが破けて、ちょっと素顔が見えるのに驚いたのか、耳を立てて硬直し、やがて本人確認なのか、オーエンの匂いを嗅ぎ回った。

「そっか。マスクの中が人間だって、今知ったんだね。ちょっと新手の殺人鬼に車でグリグリ轢かれて、破けちゃって……再生したし、マスクの予備があるからいいけどさ……」

 猫は納得し、オーエンに着いてこいというのか、にゃあ〜ん、と、振り向きざまに鳴いた。何故か若干愛想が良くなった気もするが。

「……ハリソンとコリンがいるかもしれないし、僕じゃここからロッジまでの近道はわからない。頼むよ、猫ちゃん!」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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