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God Buddy  作者: 燎 空綺羅
第五話 金剛八連撃
27/70

5-〈14〉

 一方、キングも到着し、大勢の人間部隊を殴り飛ばしながら前進していた。

「フン!オラ!邪魔だ!!どきな!!」

 強く逞しく、喧嘩慣れしたキングには、人間部隊など敵では無いし、殺すようなミスも無かった。

 アーラシュはビルの上から狙撃しているが、カリオストロやゴーレム達の援護に回った。

 キングには、助けはいらなそうだ。

「タフな奴だよ、ワイアット。乱闘騒ぎをものともせずに、前進するとはな。」

 キングは人間部隊を乗り越えて進んだ先に、オペラ歌手ばりに歌っている、シルクハットにタキシードの紳士、悪神群アエーシュマを発見した。

「あいつは……?」

 アールマティが告げた。

(悪神群、悪魔アエーシュマです。怒りと欲望の権能を持ちます。この、歌声には……彼の力が宿っている。人間部隊を高揚させ、統率しているのは、おそらくはアエーシュマでしょう。)

「了解だ天使様。俺がアイツをぶっ倒すぜ。おい!そこの野郎!!歌うのを辞めて構えな!今から、てめぇをボコボコにすっからよ。」

 アエーシュマは振り向いて、オペラを辞め、一礼してから、ステッキを構えた。

「なんとなんと!わたしの統率やジャヒーの脅威を越えて、このわたしまで辿り着くとは!敵ながら敬意を表するッ!!さぁ、君から始めなさい!その力を見せてくれたまえ!!」

 キングが構え、アールマティが告げた。

(わたくしが貴方の防御を。貴方は攻撃を。よろしいですね?)

「おう、了解した!!行くぜ、自慢の拳を喰らいやがれ!!」

 キングの喧嘩慣れした拳が繰り出され、アエーシュマはステッキで防いだが、八連コンボの最中に、キングの怪力からステッキは壊れた。

「どうする?獲物が無くても、喧嘩出来るか?」

 アエーシュマはステッキを捨てて、歓喜した。

「素晴らしい……あぁ、地獄がわたしを相応しい相手に導いてくださった!君の名をなんと?」

「キングでいいぜ。名乗りに意味はねぇしな。」

「キング君。わたしは初めて本気を出せる、君にならば!」

 アエーシュマは構えた。

 何らかの、格闘技の構えだ。

「何だ……?」

 気迫を感じる。キングの本能が、敵の手強さを告げていた。

「わたしの本領は武術でね。これぞ東洋の神秘、バリツであるッ!!」

 キングは微笑した。

「なるほどな。だから俺が相応しいと。そっちも格闘家なら、本気で行くぜ。」

「来なさい。我らの戦いにおいて、手加減などは侮辱とみなすッ!!全力には全力で応じようッ!!」

「あぁ!喰らいな!俺の必殺の!!八連コンボだーーーッ!!」

 アエーシュマのバリツ対キングの八連コンボだ!!

 しかし、アエーシュマの腕が繰り出す滑らかな受け流しで、八連コンボは威力が激減してしまう。その上、防がれては急所に当てる事が出来ない。

「ただモンじゃねぇな?」

「柔よく剛を制す。バリツは柔、君のコンボは剛の技だ。絶対的相性で、柔は有利なのだよ、キング君。そしてッ!!」

 アエーシュマは俊敏にキングを掴み、巴投げを放った。

 キングは投げ飛ばされ、石畳に尻もちをつく。

「わたしの射程範囲に入れば!わたしのバリツはいつでも君を投げ飛ばすだろうッ!!」

 キングは考えた。

 どうなってんだ?

 剛は受け流され、射程範囲に入れば投げられる。

 どう戦う?

 ふと、キングは痛みが無い事に気づいた。

(大丈夫ですか、ワイアット?)

(痛くねぇ。こいつは、天使様の力なのか?)

(わたくしが貴方の着地地点とダメージ部位を予測スキャンし、一時的に貴方を硬くしたのです。ですがそれも、常に間に合うかは分からない。アエーシュマはわたくしの予測を越えて、遥かに速いのですから。)

 キングはふと、わかった。

 アエーシュマの攻略法が。

 しかし、成功させるには、キングはボロボロになってでも、アエーシュマを消耗させなければならない。

(ありがとうよ、天使様。俺は勝つぜ。その為に、ちょっと無茶をすっからよ。天使様は力を温存して待っててくれ。)

(ですが!わたくしの守り無しに、あの投げ技を受けては……!!)

(信じてくれ、天使様。俺はタフなんだぜ?)

 アエーシュマは尋ねた。

「これからだと言うのに。まさか、戦意を喪失してしまったのかね?」

 キングは立ち上がった。

「考えてたんだよ。対抗策をな……へへっ、アンタは強ぇーからよ。俺もアンタみてぇな男と戦えて、嬉しいぜ。」

「素晴らしい。対戦相手への礼儀作法はバリツでも習うものだ。対抗策は、見つかったかね?」

 キングはアエーシュマに立ち向かって行く。

「まぁな。まずはアンタに弱ってもらう、消耗戦だ!どちらが最後まで立っているか、耐久性を試そうぜ!!」

 キングの打撃は柔らかに受け流されて、再びアエーシュマはキングを掴むと、背負い投げをキメた。

 キングはノーガードの身体を石畳に打ちつけ、激痛が走る。

 だが、立ち上がる。

「まだまだァ!!」

 挑む、投げ技、激痛。

 馬鹿の一つ覚えのように、キングは繰り返す。

 その先にしか勝機は無い。

(ワイアット……!なんて、酷い怪我を……!)

「まだ俺ァ死んじゃいねぇぞ……まだ、まだだ……!!」

 何度でも立ち上がり、何度でも挑みにかかる。

「さすがに、これは無策では無いかね?君には切り札のアールマティがいるだろう。何故こんな真似を繰り返す?君の消耗は激しいが、わたしを消耗させるにはどれだけの労力が必要か、わかっているのか?わたしは悪神群、これまでの暗示による殺人が悪の投票となり、わたし自体もパワーアップしているのだよ。アールマティを使い、本気を出したまえ。でなければ、わたしは君を殺してしまうだろう。この戦いを誉れに思い、君を認めているからこそ、続行の意思があるのだぞ。簡単に死なれては、失望せざるを得ない。」

 キングは暗示にかかった人が落としていたナイフを拾い、スニーカーを脱いで、自分の踵のある石畳にナイフを突き刺した。

「!?」

「俺はこのナイフの向こうへは、一歩たりともひかねえぜ。徐々にだが、受け身を覚えてきた。しくじったら、このナイフが俺の踵に刺さるだけだ。意地でもひかねえし、何がなんでも受け身をとるぜ。アンタだって人間の身体に入ってんだ。ならば、()る。とことんまで、()ってやるぜ。」

「そこまでの覚悟!ならばわたしも応えよう。君がこの先わたしに殺されてしまっても、もう失望することは無い。わたしは君というタフな男を忘れずに、君の戦死に敬意を表するッ!!」

 キングとアエーシュマは、どこかで解りあっていた。

 死闘でしかわからぬ、絆。

 キングは、強がりで笑って、しかし怯む事無く、立ち向かって行った。

「まだ!死んじゃあ、いねぇんだよぉッ!!」


 一方、ジャヒーVSオーエンは。

 オーエンは全く歯が立たず、パワーアップしたジャヒーの鞭の餌食になり、肉を割かれては、血塗れのまま、再生し、立ち向かう。

「アンタってドMなの?戦いとしちゃ、全く手応えは無いけれど、プレイとしては悪くないわね。」

 ジャヒーの挑発には乗らず、オーエンは真剣に勝ち筋を探した。

 そして、どんなに無限の激痛がループしても。

 立ち向かうことを、辞めない。

「僕がアンタに立ち向かうことには、意義がある。」

「あら。意義なんてあった訳?あたしに傷一つつけられない、ミカエルのお嬢ちゃん以下の癖に?意義って何なの?教えて貰いたいものね。このただのプレイに、何が?」

 オーエンは真摯な眼差しで告げた。

「アンタが僕と対戦している限り、市民には犠牲が広がらない。それが意義であり、僕の原動力だ。」

 凛々しく、颯爽とした善の心。

 ジャヒーはそれを不快に感じ、激しくオーエンを鞭打って痛めつけた。

「冗談じゃない!アンタとは、プレイにも値しないわ!!善意の自己犠牲ですって!?あぁ、愚かでなんておぞましいのかしら!!殺してやるわ。骨まで消滅させれば、如何(いか)に善神でも再生出来るかしら?」

 ジャヒーは鞭でオーエンを縛りつけ、地獄の雷撃を流し込んだ。

「ああああああああぁぁぁ!!」

 激痛に、オーエンは叫ぶ。

 身体が焼けただれる。

 痛々しく、(むご)い光景だ。

 それでも、鞭が離れて倒れても。

 オーエンは立ち上がり、挑むのだ。

 一歩、一歩が、重たくとも。

 身体を引きずりながら。

 痛みが、どんなに苦しくとも。

 この肩には、皆んなの命がかかっていたから。

 取りまいて見ていた市民達が、息を飲んだ。

「まだ、戦ってる」

「あんなになってまで、戦っている……」

「あの夜に、俺を助けてくれた人だ」

「わたしもあの人に助けられたわ……」

 1人の女性が、彼の名を叫んだ。

「マーズマンよ!わたしを助けてくれた、アフラ・マーズマンだわ!!」

「皆を助けるために、あんなに延々と切り裂かれ、血塗れになって、焼けただれながら……それでも、戦っている……!!」

 1人の青年が、叫んだ。

「頑張れーッ!!マーズマン!!頑張れーッ!!」

 青年は、大衆を先導した。

「皆、何をボヤボヤしている!マーズマンは、俺達を守る為に、あんなにズタボロになって、倒れても、何度でも、立ち上がっているんだぞッ!!」

 大衆の心に、火がついた。

「そうだ」

「俺達を守っているんだ、あの人は」

 それぞれが、オーエンを応援し、叫んだ。

「頑張れーッ!!」

「負けるな、マーズマン!!アンタは生きるべき人だよ!!」

「「「マーズマン!!マーズマン!!マーズマン!!」」」

 オーエンは、遠のく意識の中で、市民達の声援を聴いた。

 身体を引きずり、這いずっても、立ち上がる。

「……負けない。背負う命はたくさんあって、正直、重圧で潰れてしまいそうだけど……僕が守れる人達は、この手が届く限り……命を燃やして、僕は、守ってみせるんだ!!」

 その時。

 市民の命を背負う、その決意が、オーエンに眠る善神の力の一部を、解放させた。

 オーエンは、聖なる火に包まれた。

 自身は焼けることは無く、邪悪を祓う光の炎。

「その力は……!!……来るなッ!!近寄るんじゃあないッ!!!」

 聖なる火を恐れたジャヒーは、オーエンを激しく鞭打ったが、鞭は聖なる火によって焼き払われてしまった。

 拝火教、ゾロアスター教における聖なる火は、最高神アフラ=マズダの象徴であり、なんびとたりとも穢すことは出来ない。

 オーエンは、聖なる火をまとって最後の力で走って行き、ジャヒーに一撃喰らわせた。

 ジャヒーは燃え盛る聖なる火に焼かれて、苦しみもがいて、悲鳴を上げた。

「ああああああああぁぁぁ!!熱い!!痛いぃぃぃい!!!」

 市民は歓声を上げた。

「やったぁ、マーズマン!!」

「すごいぞ!!逆転だ!!」

「「「マーズマン!マーズマン!マーズマン!」」」

 オーエンは、倒れ込み、そこで意識を失った。

「マーズマンが……」

 オーエンは、限界を超えていた。

 ジャヒーは、聖なる火が消え去って、命拾いし、死の危険の反動から、笑い出した。

「嘘。あたし、生きてる?アッハッハッハッハッ!なんて幸運よ!でも……」

 ジャヒーは自身の顔を触った。

「美しいあたしの顔を焼いたわね……アンタには、トドメを刺さなくっちゃあならないわ……」

 オーエンは白昼夢にいるみたいに、眠っていたが声は聴こえていた。

(動かなくっちゃあ……市民が、殺されてしまう前に……)

 しかし、動くことは出来なかった。

 指先ひとつ動かない。

 身動(みじろ)ぎすら叶わない。

 誰かが、オーエンの肩に触れた。

 その手を、オーエンはよく知っていた。

「よく持ち堪えたな。休めよ、オーエン。」

 オーエンには、その声が誰なのか、はっきりと理解出来た。

 市民が騒いだ。

「マーズマンが、倒れた……」

「大丈夫なの……?生きているの?」

「誰かが、マーズマンを助けてる。」

「貴方は誰!?マーズマンの、味方なの!?」

 オーエンを庇いでた軽量アーマーの青年は、やんちゃそうに、ニッと笑った。

「俺は悪の頭領、アーリマン!マーズマンの、ダチ公だ!!」

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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